42:せかんど・イン……パクトはない
軽く現実逃避したけど、目の前にいるのはお客さん。
……いや、むしろ帰ってもらえばいいんじゃない?
「すみません。店主がいませんので、やっぱり案内は――」
「あら。先程はいたようですが、どこに行かれたのでしょう?
貴女と店のマスターに大事なお話がありましたのに」
大事な話、ねぇ……。
なんでセリアが単騎特攻してくるのよ。
せめて誰かと一緒とか、好感度上げている姿を見せてくれないと不安で仕方ないのだけど。
一番距離が近いルファスも手玉にとっているようだし。
「そろそろ夜の準備もありますので、お店を一旦閉めます。
また時間を置いて……」
「お話しません? ――魔女について」
いま、何て……?
真っ直ぐに見てくるセリアの目は、冗談を言っているように思えない。
なんなのこのイベント。北の魔女弾劾イベント?
ほー。
魔女の名を出してきたってことは、向こうも隠す気はないわけね。
随分と東の魔女っぽくないけど、そういうことでいいのかしら?
師匠とクーちゃんはこちらへ一任みたいだし、なら問い詰めてやろうじゃないのよ!
いつもなら夜まで居座るお客にも、深刻な問題が発生して……と退室してもらう。
次回に使えるサービス券を渡せば、お願いを渋る人もいない。
これも人徳がなせるワザね。ふふん。
師匠は戻ってこない。
入り口には準備中の札をかけ、これで正真正銘ふたりきり。
得体の知れない人物が相手なので、ここは先制攻撃よ!
「ここは『魔女の家』となっておりますが、それもこのお店の宣伝文句が『魔法にかけられたようにハッピー!』となっております故。ただ名前や噂だけで話されるならば、まずここの料理を召し上がっていただき、本当に『魔法にかけられたようにハッピー!』になれるかをお確かめ――いだっ!!」
「もう一度口に出してみな。二度と言えないようにしてやる」
後ろを振り向けば、鬼のような形相をした師匠がいた。
……なんだ、いつもの顔ね。
「師匠、いつのまに? いえ、この宣伝文句は公式の――」
「目もつぶしてやろうか? いや、むしろこの町から外へ――」
「すみませんでした! あと心を読むのもやめてくださいっ!」
すかさず師匠の前に跪く。
この床も毎朝魔法でちゃちゃっとキレイにしてあるから、汚いなんてことはない。
この謝るまでが一連のノリだけど、セリアのほうは……あ、やっぱり固まってますね。
まあいいや。
「師匠、この方が魔女について話したいといったので、店は準備中の札をかけておきました。
あとはよろし――」
ガシッ!
「アンタも聞くんだよ。
むしろ、アタシよりもアンタが相手するべきだろ」
「あ、頭はやめてください! 髪の毛が、髪の毛がぁ!」
「あの……わたしはどうしたら……」
なんやかんやで、テーブルを挟んで対峙するまで時間がかかりました。
クーちゃんも連れてくるようにということだったので、セリアの隣……は嫌がったのでテーブルの上に。
「さて、早速ですが。あなたは魔女ですか?」
セリアが放った第一声は師匠に向けられている……はず。
なんか私を見てるけど、師匠に対してよね?
ちらっ、ちらっ。
「アンタだよ」
「あ、はい」
まだ半人前にすら成れてないのに、これで魔女なんか名乗った日には師匠に何をされるのやら。
「私、ちょっと魔法の修行しているただのウェイトレスです♪」
…………師匠やクロだけでなく、セリアにまでドン引きされた。
ポーズはつけなかったんだから流してよ!
「まあこの馬鹿は放っておいてだ。
アタシも魔女なんて呼ばれているが、正確には魔女じゃないさね」
「「え?」」
あれだけ魔女がー後継者がー、て言っておいて、魔女じゃない?
嘘だッ!
「じゃあ師匠はなんです? ただのおばさ――」
ヒュッ――ザシュ。
「……おっと。虫がいたようだよ。あいにくと逃しちまったが」
私の真横を、出刃包丁が飛んでいった。
……髪の毛何本かもってかれたよね? というか、どこに隠し持ってた。
師匠は魔女じゃないなら暗殺者に違いない。
それを見なかったフリするセリア、まじ東の魔女。
「は、話を戻しますが、では何者ですか?」
「それは…………小娘が知ることじゃないよ。
それともなんだい? お前さんまでアタシをネクロマンサーだって?」
「いえ。ただ貴方の存在が気になっただけです。
そこにいる彼女――クレア様と、そのクロウド様を囲う貴方が」
――正体に気づいている!?
私はともかく、ここにいるクロなんてただの黒猫にしか見えないじゃない。
ルートでは鶴の恩返し的な意味で判明するのだけど、黒猫イコール、クロウド様と結びつくなんて……。
疑惑がだんだんと確信へ近づいていく。
セリアはさも重大なことを言ってやったぜ! とでも言いたげな表情だ。
しかし、それだけで終わらない。
「実はわたし、東の魔女なんですよ?」
あ、ごめん。それは知ってる。
全文消えた! 終わった!
となりましたが、Ctrl+Zキーに助けられました。
この復元方法はもっと広がってほしい。心臓バックバクでしたよ……。




