40:side 生徒会会議
「では、臨時会議を開催しようか。
議題は『魔女の家』について」
生徒会室にはメンバーが勢揃いしていた。
あの時食堂に集ったメンバーから、部外者であるカトレアが抜け、代わりにカミーユを入れた五人が生徒会メンバーだ。
会長であるヴィルの声に、全員が注目する。
「この前僕たちが訪れた際、君たち二人と会ったよね?
ルファスは『セリアについて来た』らしいけど、セリア。
その件について君の意見を聞きたい」
これはイベントではない。
セリアがそう断言できるのは、そもそも『魔女の家』なんて場所はゲームに出てこないからだ。
実を言えば、ルート通りの行動をしない攻略対象への疑問を解消するためだったが、それを口にするほどセリアは愚直ではない。
「はい。死人を操るという禁忌、ネクロマンサーというものが、本物かどうか興味があったのです。
魔法学園に通う身として、探究心をくすぐられたのかもしれません。
あわよくば……という想いもありまして」
セリアの言葉も嘘ではない。
噂だとしても、死んだはずの人間が生きている。となれば、大抵の人は興味を持つだろう。
そして可能ならば、あの人を……と。
セリアの両親がいないのは周知の事実だ。
ヴィルもそのことを思い出してか、普段の優しげな笑みを崩し、顔に僅かなしわを寄せた。
「そうか。あの場はデートだなんて言っていたらしいけど……」
そこでヴィルは、同席しているルファスのほうをちら見する。
彼がセリアに想いを寄せていることは、この場ではヴィルのみが知る情報となっている。
建前上はデートとなっていたが、ルファスにとってはまるで本番のように思えたことだろう。
しかし、現実のセリアは非情だった。
「噂を確かめに行くよりは、そちらのほうが説得力ありますよね?
おかげで狭い馬車に何時間も揺られるはめになりましたが、噂に関してはなんとも言えないです。
この彼のおかげで、十分な聞き込みもできなかったわけですしね」
「……………………」
ルファスは喋らない。
あの場を見ていたヘカテもまた、彼が何をしたか知っているので責めるようにルファスを見ている。
唯一知らないのは、会議の内容を理解できないカミーユくらいだろう。
「まあ、いいや。
セリアさんはあの場所をどう感じたかな?」
ヴィルが一番知りたいのはそこだった。
ヴィルとヘカテには、あの場所は魔女の被害者を再現した不気味な場所にしか思えない。
クレアとクロウド。両方に共通するのは、魔女の被害者。
そして貴族という身分と年齢。
なのに彼らは、そんな過去などなかったかのように自然とあの店へ溶け込んでいる。
アルフォンスはまだ偽物の線を捨てきれていないようだが、セリアはそれを見てどう思ったのか。
それはヴィルのみではなく、ここにいるルファス以外全員からの疑問でもあった。
「わたしは……とても恐ろしい場所、だと」
「恐ろしい、とは?」
「得体の知れない、邪悪な力が作用しているように思いました。
『魔女の家』と名乗るだけあって、魔女の関係者がいることに間違いはないです」
その言葉に、全員が言葉を失った。
始めから疑っていたヴィルとヘカテはもちろんのこと。
事情を知るルファスは、魔女という断言に驚き。
カミーユは偽物、または『魔女を偽りたいだけの工作』という考えを改めることに。
それくらい、今のセリアの言葉には有無を言わせない迫力があった。
「……では、僕らは関わることをやめたほうがいいのかな?」
この国では魔女が畏怖される。
ヴィル達も疑っていたとはいえ、平民出でその魔力の優秀さだけで成り上がってきたセリアに言われると、また意味が違ってくる。
聖女の再来。
光魔法・回復魔法に長けるセリアは、そう皆から呼ばれている。
崇められるといっても良いほどで、その性格と合わさって親しい友人がいないことが玉に瑕だが。
その聖女が、そこまで恐れる場所。
……実際は聖女でもなんでもなく、ただの魔女なのだが。
「そうですね。この件はわたしに任せてもらえませんか?
それまで、皆さん。あの場所には近づかないようにお願いします。
他にあの場所を知る人がいるなら、それとなく注意も」
アルフォンスとカトレア。
あとは噂を知る生徒が、セリアみたいに訪れないとも言い切れない。
セリアがいつまでに決着をつけるか知らないが、ヴィルは会長として全生徒に「ネクロマンサーはアルフォンスに一任する」というお触れを出した。
肝心のアルフォンスにとってはそのほうが都合が良いし、セリアとアルフォンスは関わりがないが、そこはヴィルの人望。
事後承諾とはいえ、当本人たちに納得してもらうことに成功した。
それから三週間。
『魔女の家』に学園生徒は訪れなかったが、そうなった理由をフレアたちは知らない。




