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33:千客万来? 厄日です

 


「ふんふふふーん」


「最近の嬢ちゃんはゴキゲンだな」


「ええ。だって学園が休みなら彼に会えるんだもの!」


 肝心のヴィル様だけど、最近は生徒会の仕事が忙しいらしく、あまり余裕はないみたい。

 移動中にヘカテにも手伝ってもらっているらしいけど、それでも仕事の負担は多いままなんだとか。

 同じ生徒会のカミーユとかいう人が、もっと仕事できたらいいのに。


「しかし、あの学園の生徒は貴族様ばかりなんだろ?

 どうしてまた嬢ちゃんみたいなの目当てに……」


「ししょー、フルコースご所望のお客様でーす」


 平謝りするおじさんは放っておいて、そのことについては言えない。

 ヴィル様は似ているからというより、私がクレアじゃないかと疑っているようだし。

 ヘカテに関しては、ほぼ確信を持ってクロウド様だと断言しているし。

 それでも、二人が会いに来るだけで行動を起こさないのは助かる。


 けどネクロマンサー疑惑も出てきたし、そろそろ隠しきれないって師匠も言っていたっけ。

 そうなったら私は……誰についていこうかな。




「アンタ、お客さんだよ。呆けてないで仕事しな」


「あっ、いらっしゃいませー。二名様ですか?

 あちらのお席へ――」


「今日もヘカテと来てあげたわ!

 フレアには私たちを案内させてあげる」


 考えても仕方ないので、仕事しよ。

 そう思った矢先に来たのがこの二人ですよ。

 二人?


「あの、本当にお二人ですか? 一人足りないのでは?」


「失礼ね、私たちだけよ。

 アルフォンス様がいなくて悪かったわね!」


「あ、そこは気にしていないのでご自由に」


「すみません。会長はですね……」


 ヘカテが言うには、ヴィル様はどこか寄る場所があって後から来るとのこと。

 ……すぐ会えると思っていただけに、おあずけの時間がつらい。


「貴女は本当にヴィル・ラグドーレ様にしか興味ないのね!」


「まあまあ。カトレアさんで言うところのアルフォンス様みたいなものです。

 わたしたちも同志でしょう?」


「ちょっとヘカテ、何よその同志ってのは」


 三人集まれば姦しい、とは言ったものだ。

 本来は他のお客に(カトレアちゃんだけ)注意されてもおかしくないのだけど、こんな町で貴族の娘を見れる機会などめったにない。

 しかも、それが自然体となればなおさらだ。


 足繁く通うヘカテたちを一目見ようと、遠いところからくるお客も増えたとなると、邪険にすることもできないとは師匠の言葉だ。

 もっとも、売上が増えたことは本人たちもあずかり知らないところだけど。


 そんなわけで師匠公認でもあり、私も大手を振って休憩できるというものだ。


「さ、じゃあ今日もカトレアちゃんのノロケ話でも聞きますかね」


「ちょっとフレア。のろけだなんてやめてよぉー」


 嬉しそうにクネクネするわね。どこかの都市伝説を思い出したわ。

 ……ぶっちゃけ、すぐにでもお帰り願いたい。

 というか、私が早退したいくらいだけど……これも仕事、我慢しないと。


「では、わたしはあちらで優雅なひと時を……」


「ヘカテ、逃げたらあの黒猫を膝に乗せてあげるわ」


「わー、カトレアさんのお話楽しみですねー」


 ふふ、道連れは多いほうがいいものね?

 令嬢三人が雑談するテーブルというのは、それだけで客寄せになるのだよ、ワトソンくん。


 以前クロに「お前はいらないだろ」と言われたけど、代わりにクーちゃんを放り込もうと提案したら納得してくれた。

 常連は「あの子たちと関わりを持ちたかったらお黙り?」とお願いをして以降はおとなしいし、ここに突撃してくるのなんて、学園関係者かお姉さんくらいよ!






 そう思っていた時間は、一時間ほどで破られた。


「でね。アルフォンス様は私に魔法を教えるため、手をとって――」


「盛り上がっているところすまないね。アンタにお客だよ」


「へ?」


 師匠がアンタと呼ぶ人物なんて、このテーブルには私しかいない。

 お客と聞いて、私のみならずヘカテとカトレアちゃんも入り口に視線を向けたけど、そこにいたのは学園の関係者ではない。

 でも、私にとっては懐かしい――そして、予想外の人物だった。


「お嬢……様?」


 立っていたのは、この店の従業員のような服を着た女性。

 しかし、その服装は本格的で、どこかの使用人が迷い込んできたように思える。

 彼女の顔は、私が目覚めて一番に見た顔で……親身になってくれた彼女を、忘れるわけがない。


「レ……っ……メ、メイドさん?」


「あら? なんでここにメイドが来るのよ。

 もしかして仕事しない誰かの代わりかしら?」


「余力はあるはずなので、増員ではないですね。

 フレアさん。働き口に困ったならわたしの家、きます?」


 ……色々と言ってやりたいけど。

 いまの私には、失礼な事を言ってくる二人に構っている余裕はない。

 かつてラグドーレの屋敷にいたときのメイド、レリーナ。

 どうしてここに彼女が?

 その疑問は、彼女の後ろからヒョイと入ってきた人物を見て解消された。


「遅れて済まないね。少し僕の実家に寄っていたから」


「ということは、彼女はラグドーレ家の使用人ですの?」


「ああ。あのねレリーナ、さっきも言ったように……」


 ヴィル様はレリーナの耳に顔を近づけ、ひそひそと何か伝えている。

 ……ああ、そんな仕草も素敵だけど、どうしてあの位置にいるのが、私じゃなくてレリーナなのだろう。

 いやいや、今はどう誤魔化すか考えないと!


「ようこそヴィル様! 今日は使用人の方とご一緒なのですね! 私は仕事に戻りますので、どうぞこちらへ」


「クレ……っ、いえ! 使用人風情など、立ったままで大丈夫です! お構いなく」


 レリーナはそういうけど、お客様なのだし……どうしたら?

 判断に困ったので師匠に視線で問うと「好きにしてやりな」と返される。

 いいのかしら?


「あらそう? では、ヴィル様。

 そちらの方も、私はこのままでよろしいですか?」


「ああ、すまないね。彼女がどうしてもと聞かなくて」


 ヴィル様の後ろに立ったレリーナに視線を向けると、ピタっと目が合った。

 あわてて目をそらしたけど、これ気づかれてそうね……どうしましょう。


「それで、今まで何を話していたのかな?

 またアルフォンスの武勇伝かい?」


「はい、そうですわ! 最近は王子の為の責務を果たすためか、ますます素敵になられて――」


 意識がカトレアちゃんに集まった。今だ!


「すみません! そろそろ忙しくなるので、私は失礼しますね!」


「あっ、ちょ――」


 ここは三十六計逃げるに如かず!

 下手なこと言ってバレたら師匠にコロされるし、かといって解決策なんて思いつかない。

 あばよっ!




 ……とは言ったものの、店内で走るのはご法度だ。

 あ、ちょうどお客が来たわね。

 クロも現れる時間だし、対応してそのままフェードアウトしちゃおっかな。


「いらっしゃいませー! 二名さ……ま?」


「ここが例の場所ですか。名前はともかく、心地の良い場所ですね」


「ああ。この安らぐ感覚は何だろうな。てっきりお前の傍だけかと思ったが、こんな場所にもあったとは」


「ふふ。浮気はダメですよ、ルファスさん」


 そんな、交際二年目くらいの雰囲気を見せつけるカップル。

 どちらもよく見覚えがある。


 片方は、攻略対象として。

 そしてもう片方は、プレイヤーとして。


「今日は厄日ね……」


 私はヴィル様が来てくれたら良いのであって。

 東の魔女ヒロインと半魔の攻略対象なんて、お呼びじゃないのよ!





ある意味修羅場です。

まだ誰も結ばれていないのに……

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