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30:ひと月の成果

 


「まったく、アイツらも飽きないね。アンタ、くれぐれも……」


「いつも通りですよね? わかってますって」 


 あれからひと月近くが経ったけど、学園が休みの日に必ず訪れる客が三人・・いる。

 いつも四人がけのテーブルに通すので、最近はその空いた四人目の席が私の休憩場所だったりする。


「やあ。今日も大丈夫かな?」


「はい! ヴィル様もヘカテもいらっしゃい。今日は向こうのテーブルでお願いします」


「ちょっと! 私もいるのだけど?」


「あ、カトレアちゃんもですか。ちょっと小さくて……いえ、なんでもないです」


「なっ!?」


 ぎゃあぎゃあと騒ぐカトレアちゃんは、ニコニコと笑みを崩さないヘカテに連行されていく。

 ……その役目、ヴィル様じゃなくてヘカテなのね。

 あの娘ぜったいにクロウドを尻に敷くタイプだわ。

 そんな将来の夫はというと。


「あれは別人あれは別人あれは…………」


 軽く現実逃避していました。

 それ、本来なら貴方が言われるセリフじゃないの?


「まだ慣れない?」


「あ、ああ。俺が知っているヘカテと、あのヘカテの姿が一致しなくてな……」


「あの席譲ってあげるから、話してきたら?」


「無理だ。そもそもお前は、どうして普通に話せるんだ?」


 どうして? と言われても困る。

 今は別人フレアになっていたとしても、私はヴィル様が好きだ。

 そんな存在が目の前にいて、我慢できるとでも?


 逆にクロは、目の前にヘカテがいるのになんで平気……いや、平気じゃなさそうね。

 涙は見せないけど、昼間はクーちゃんの姿でヘカテをジッと見つめている。

 ヘカテはまだ黒猫に対して怯えているから、その視線に気づくとプルプルと震えだすのだけど。

 ……まさか、その可愛い反応が見たくてワザとなの?


 とりあえず、私の最近の仕事は話し相手になることだ。


「じゃ、師匠。ちょっと休憩してきますね」


「休憩じゃないさ。あいつらの相手はアンタの立派な仕事だよ。きちんと仕事しな」


「はいはい、わかりましたって」


 あの中の誰が、アルフォンス王子と繋がっているか。

 そして王族の連中に目をつけられないよう、話を誘導してこいと。

 師匠は警戒しすぎだと思うけど、誰が一番危ないかと言えばカトレアちゃんだろう。

 だって彼女、学園では常にアルフォンス王子の傍にいるらしいもの。

 ……そろそろ、東の魔女ヒロインも介入してきそうだし。




「ではここ、座りますね」


「待っていたわ! さっきのアレはなんなのよ!」


「まあまあ、落ち着いて。とりあえず果実水でもどうですか?」


「うっ……そ、そうね」


「ししょー、一番高い果実水追加でー」


 よし、オーダーげっと。

 カトレアちゃんはやられた! といった顔をしていたけど、引っかかるほうが悪いのよ。

 ちなみにヴィル様とヘカテは既に注文を終えていた。

 チッ、勘のいいやつヤツらめ。


「フレアさん。体調に変わったところはない? それと、嫌なことや不安になるようなことはなかったかい?」


「大丈夫ですよ。今日も『魔女の家』は平和でした。最近はクロの滞在も増えましたし」


「まあ。それは朗報ですわ」


 ここひと月の間、師匠も私も手を打たなかったわけではない。

 師匠はクロがバレないよう、三時間だった人間状態を倍の六時間に伸ばした。

 あぁ……モフモフできる時間が。

 とにかく、そのために店を三日間ほど休業する必要があったけど、逆にその三日間で何があったの?


 私とクーちゃんは山奥へ放り投げられていたので、その間のことは知らない。

 ただその期間中、クーちゃんとの絆が芽生えたとだけ言っておく。


 この改装? によって、クロが夜の営業中に戻る心配はなくなった。

 私も仕事の負担が減ったので、その余裕ぶんの時間で魔力操作の練習ができるというものだ。

 これなら師匠に認められる日も近いわね!

 うふふ、と笑う私を見てか、ヴィル様とヘカテはひそひそと内緒話をしている。


「……やはり、魔女の魔力が馴染んでフレアさんも汚染が……」

「……休業していたようだが、それは二人の洗脳を進めるための……」

「……二人をこの世に繋ぎ止めるための処置が……」


 お二人とも、仲がよろしいことで。

 ヘカテならクロに一筋だろうし、あんなにヴィル様と近くても嫉妬する要素なんかない。

 内容までは聞こえないけど、あの二人が付き合うことはないし、大丈夫よね。

 私の隣りにいるカトレアちゃんだけは、今もアルフォンス王子への愛を語っているけど。


「その時ですわ。アルフォンス様が私の肩を抱いて――」


「はいはい、よかったですねー」


 一人だけ仲間外れみたいだけで、カトレアちゃんはそれでいいのかしら?

 ま、本人は楽しそうだからおっけーね。





 ◇◇◇





「調査の結果が出ました」


「早かったね。どうだった?」


 中央の国、とある城の一室。

 少年にあてがわれた部屋には、他に黒ずくめの男性が一人存在していた。


「はっ! 所在が確認できたのは、西と南のみ。

 東は、我らの力でも発見ができませんでした!」


 少年が命じていたのは、各国に魔女は存在するのか、という調査だ。

 魔女は無断で国を出ることが許されない。

 所在をハッキリとしておくことが必要な魔女が、行方不明となっている。

 しかも、常習犯である南の魔女ではない。

 そのことに驚きつつも、少年は報告の続きを促す。


「東のほうはいつから? それと北はどうしたの?」


「はっ! 東の魔女は一年ほど前には確認されていたらしいですが、北の魔女に至っては何が何やら……」


「どういう意味?」


 何でも、北の魔女は七人発見されたということだ。

 最初は誰かが偽っているだけかと思えば、全員が全員「私が北の魔女だ」と証言する。

 それだけならまだしも。

 不自然に・・・・散らばった魔女は、七人とも揃ってこう言っていたらしい。


「我らは七人そろって北の魔女、ね……」


 男性は既に帰ったが、少年は最後に言われた言葉を反芻していた。

 このことは、父や兄にも伝わっているだろう。

 その七人は、魔女だという証拠の魔導書をそれぞれ所持していた。

 ご丁寧に、項目別にだそうだ。


「北の魔女が何を考えているかわからないけど、隠そうとしないってことは……」


 少年の思考を止めるものはいない。

 あの店が本物・・だとするなら、怪しいのは行方のわからない東の魔女だ。

 ただ、あの店は何年も前から存在するという。


「店ごと乗っ取った? でも、何のために?」


 考えは尽きない。

 そして、少年の思考を修正する人物も、この場には存在していなかった。



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