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26:どうりで見覚えがあると

24話を修正しました。

2人が盲目になり、師匠が極悪人? となりました。


 


 どうみても厄介事の匂いしかしない。

 ヴィル様たちは帰ったのに、また学園生?

 今から帰ると半日以上かかりますけど、いつかのヘカテみたいに学園を休むのですか?


 疑問は絶えないけど、いつまでも入り口に立っているわけにはいかない。

 それに段々と私が注目されているし、そのうち彼女もこっちに目線を――あ、目が合った。


「――っ! 出たわね泥棒猫! 待ってたわ!」


「? 猫はあっちですよ。ししょー、これ裏に運んだらいいですかね?」


「ああ。さっさと置いてきな。で、この営業妨害する騒音娘をどこかやってくれ」


 ここまで師匠が無視するのも珍しいけど、あくまで私のお客さんだからだろう。

 いつもならすぐ外へポイか、サイレントの魔法で喋れなくするのに。


「無視するのかしら! この私がカトレア・クロワールだということをご存じない?」


「ご存知ないですねー。あ、運搬ありがとうございました。あとはクロに運ばせますので」


 手伝ってくれたお兄さんにはそう言って、カウンターからクロを呼び出す。

 髪は赤いのにクロワールさんね。

 さて、お兄さんへのお礼は師匠に任せるとして、あとはこの迷惑な彼女を――。


「おいカトレア。お前なんでこんな場所にいるんだ?」


「「へ?」」


 どうやらこの場に、彼女を知っている人物がいたらしい。

 その人は荷物を持ったまま、カトレアと名乗った彼女をさも不思議そうに見ている。


「お兄さん、この子の知り合い?」


「ああ。うちの生徒が迷惑をかけた。この通り、ここにいる皆に謝罪しよう」


 ご丁寧に荷物をクロに渡してから、お兄さんは深々と頭を下げる。

 え、この人教師だったの……?

 というか、見覚えある! 

 お話はオールスキップしちゃったけど!






 荷物を片付けたあと、改めてテーブル席へと移動する。

 人数は店の代表として私と、お兄さん……レオン先生とカトレアちゃんの三人だ。


 さっきの騒動もあってか、店内の視線が私たちのテーブルに集まる。

 そりゃあ、散々わめいていた生徒と先生、ついでに泥棒猫? がいるんだもの。

 見物もいいけど、料理も注文しなさいよね!


 ちなみに私が選ばれた理由。

 単純にいなくても困らないからだとさ。


「理不尽!」


「きゃっ! い、いきなり大声出さないでよ!」


「失礼。にしても、可愛いらしい悲鳴ですね」


「余計なお世話よ!」


 彼女がダンッ! とテーブルを叩くと、それに連動するようにチッ! という舌打ちが聞こえた。

 他でもない、レオン先生からだ。

 あの、イライラするのは仕方ないですけど……さっきまでの優しいお兄さんは、いったいどこへ消えてしまったのでしょう。


「さてカトレア。まずは何よりも重要なことだ。お前、明日の授業はどうする?」


「そ、そんなことよりもこの――」


「そんなこと、だと?」


 レオン先生が凄むと、カトレアちゃんは小さく悲鳴をあげる。

 この人は攻略対象のなかで唯一の大人枠だ。


 同級生であるアルフォンス王子。

 先輩枠で、我が愛しのヴィル様。

 隠しキャラのクロウド様と、もう一人の同級生。

 そして学園の先生という立場の人物、それがレオン先生だ。

 このレオン先生、中々の実力者である。


 彼のルートはよく知らない。

 ……だってタイプじゃなかったし。

 学園よりも離れた場所に居住し、遅刻などが多くだらしなさも目立つ教師。

 確か妹さん? と住んでいるんだっけ。


 あとは攻略対象の中で一番強い。

 それこそ、戦争で単騎魔女とやり合えるくらい。

 もしぶつかったら、師匠とどっちが強いんだろ?

 そんなどうでもいいことを考えているうちにも、私を置いて言い争いは白熱する。


「それなら先生だって、明日はどうするつもりなんですの!」


「俺は午後からしか講義がないし、いつもこの近くから通っている」


 あー……よく来てくれますもんね。

 あんまり印象に残っていないから、なんか見たことある人がいるなー程度の認識だったのよ。

 まさか攻略対象だった先生とはね。


「明日、休まないよな?」


「えと、それは……」


 煮え切らない態度のカトレアちゃんじゃ、埒が明かない。

 師匠も段々とイラついているようだし、ここは仲裁に入りますか。


「すみません、そこら辺は後でお願いできますか?

 まずは彼女の言い分を」


 元はといえば、彼女がここで騒いでいたことがおかしい。

 どうしてそうなったのか、泥棒猫が関係してくるんじゃない?

 あ、せっかくフォローしたのに睨まれた。


「そうよ! 昨日アルフォンス様を訪ねたら、どこかの町娘に会いに行ったですって? 

 慌てて追いかけてきたけど、まさかこんな辺境だなんて!」


 場所は門番から聞いたみたいだけど、この子地理に弱いのかしら?

 考えれば、半日かかることもわかるだろうに。

 レオン先生の担当じゃないかもだけど、しっかり教育しておいてよ。


「それは場所を知らないお前が悪い」


「ですね」


「ちょっと! レオン先生はともかく、何で貴女まで! だいたい――」


「カトレア、静かに」


 レオン先生が右手を挙げると、カトレアちゃんはヒッ! と怯えて静かになる。

 まるでパブロフの犬ね。


「馬車で来たなら、あいつらと道中すれ違わなかったか?」


「そ、それは……寝ていたから、気が付かなかったわ」


 このカトレアちゃんも貴族のくせに、乗合馬車でここまで来たらしい。

 愛の為せるワザとはいえ、なんとも無防備な。

 ほら、先生だって頭抱えてるよ?


「お前なぁ……ちなみに、今日の宿はどうするつもりだった?」


「あ、アルフォンス様と同室に決まっているじゃない!」


「あほ」


「バカですね」


 これで私と同い年だっていうのだから驚きだ。

 ゲームのカトレアはもうちょい賢く……ないな。

 アルフォンス王子も大変ね。


 あれ? でもヴィル様とウェルダン君はともかく、ヘカテもあの馬車で一緒に……。

 つまり、狭い空間で殿下と至近距離なはずよね。

 ま、まあ? ヘカテはクロウド様一筋! なところがあるから大丈夫かな。


「で、泥棒猫のフレアちゃんよ。コイツをどうする?」


「その呼び方はやめてください。えーと、師匠。どうしましょう?」


 一番迷惑をこうむったのは師匠だし、ここは師匠に決めてもらうべきだろう。

 さっきの場面を見ていたお客さんも、師匠がどう処分するかの賭けをしてたようだし。


「さぁて、どうしてやろうかね。学園を休ませるのはまずいんだろ?」


「ああ。なるべく負担にならない罰を頼む。なんなら俺が肩代わりしてやっても良い」


「先生ぇ……」


 美しき生徒愛。

 でもその子、ただ営業妨害しただけですよ?

 外ポイで済むレベルの迷惑でしかないですからね?


「そうさね。まず、居合わせたお客に謝罪してもらおうか」


「ぐっ……この私が頭を下げないといけないなんて!」


「おや、先生はすぐに頭を下げたってのに、問題の生徒はずいぶんと強情なこったねえ?」


 師匠が煽る。レオン先生はさらに頭を抱える。

 ……そのうち禿げそうね、この先生。

 手伝ってくれたお礼に、胃薬でも提供しようかしら。


「別に頭を下げたくなけりゃ、下げなくていいさ。お客もそんなこと望んでいないしね」


 店内からは「謝罪なんて腹もふくれねーや!」と同調の声がいくつもあがっている。

 それに気を良くしたのか、カトレアちゃんの顔が少しだけ明るくなった。


「そ、そう? じゃあ下げないわ!」


「わかった。よしお前たちっ! 今から一品だけ好きなもん頼みな! この嬢ちゃんが騒いだお礼に奢ってくれるとさ!!」


「「「よしきた!」」」


「えっ、待ちなさいよ! 誰もそんなこと――」


「よ、太っ腹ー」


 棒読みだけど、先生も同調する。さすが常連なだけあるわ。

 カトレアちゃんの抗議は、店中の大歓声にかき消されるて誰も聞いていない。

 ……ま、こうなることはいつものことよね。

 あたふたとするカトレアを横目に、私とレオン先生は賭けが当たったと喜ぶ。


 もちろん、ここの常連で外す人はいないけど!



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