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小さな心臓  作者: 雨世界
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「……猫ちゃん?」

 その声で真白の意識は覚醒した。真白は二、三回瞬きをしてから、周囲の様子を伺った。世界は真っ暗な闇に包まれていた。びゅー、という冷たい冬の風が吹いた。でも、体はそれほど寒くはない。なぜなら真白の体は心の体温によってしっかりと守られていたからだ。

「猫ちゃん、大丈夫?」

 心は心配そうな顔で真白を見ていた。真白はこのときも瞬きをした。それから心の顔をじっと見つめた。二人の視線が重なった。やがて真白はその場で小さなあくびをした。

「ふふ。猫ちゃんはお眠なんだね」と、どこか安心したような顔で心が言った。

 ……お眠? 僕はいつの間にか眠っていたということなのか? 真白はぼんやりとする頭の中でそんなことを考えた。……では、先ほどの経験は夢? ……僕は夢の中で夢を見た、ということなのか? ……意識の、無意識の、そのまたもっと深い場所まで、僕の意識は沈み込んで行ったということなのだろうか?

 ……よく、わからない。

 首をぐるりと動かして世界を見ると、一箇所だけ、そこに白い色が混ざって見えた。それは窓の外に降る雪の色。だからあそこには窓がある。そして反対側の闇の中には薄っすらとだけど階段が見えた。上と下に続いているあの階段だ。

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