表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな心臓  作者: 雨世界
10/56

10

 目を開けた心はまず秋子さんを見て、次に自分の胸の上にいる真白を見て、それから顔を動かして丸椅子に座っている年老いた男の顔を順番に見た。

 心はゆっくりと体を起こし始めた。真白は邪魔にならないように空いている空間に移動する。心はそんな真白を見てくすっと笑うと、「おはよう、猫ちゃん」と真白に朝の挨拶をした。それから心は年老いた男と秋子さんのいる方向に顔を向けて「おはようございます。大麦先生。冬子さん」と二人に笑顔で挨拶をした。

「おはよう心ちゃん、今朝の具合はどうだい?」と大麦先生と呼ばれた男が、優しい顔で心に言った。

「……はい。大麦先生のおかげで、だいぶよくなりました。今はとくにどこも痛くなったりしないです」と心は言った。

「心ちゃん。私たちに遠慮しないで、本当のことを言ってもいいんだからね。痛みを感じたり、体の調子が変だなと思ったら、その場ですぐに私たちに報告すること。いいね?」

「はい。わかりました。冬子さん」

 三人は真白の存在を無視して会話をしていた。真白は大麦先生の心に向ける優しい顔を見て、それから冬子さんと呼ばれる女性の顔を見た。どうやらこの女性は似ているだけで、昨日真白にミルクをくれた女性とは別人らしい。この人は秋子さんではなくて冬子さん。

 言われてみれば、どことなく違うような気もするが、真白にははっきりと二人の違いを見分けることができなかった。あえて言えば、機嫌がいいのが秋子さん、機嫌が悪いのが冬子さん、といった感じだ。それくらいしか真白には二人の見分けをつけることができなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ