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ハードな世界 1日目

人は簡単に死ぬ。それは自然の摂理であり、遥か遠く宇宙から与えられた唯一と言っていい慈悲でもある。


もっとも、俺がそれに気が付いたときは......既に手遅れだったけれど、ね。


△▼


森。


暗雲立ち込めるここは夜ということもあってか、非常に暗い。否、黒いと言ったほうが正しい描写なのかもしれない。


「ったく...ここどこー?帰りたいよー」


情けない声は木々に跳ね返り、不穏に響き渡る。森のうねりが四方八方から俺のことを遠巻きに眺めているようだ。


ガサリ


「...?誰かいますかー...?」


物音がする。それも割りと近く。

情けないことに俺は少々怖がりなきらいがあり、こういうものにはめっぽう弱い。恐る恐る発音源に近寄る。


ガサリガサリ


藪が揺れている。さあ鬼が出るか蛇が出るか、薮蛇をつつくことにならなければいいのだが......


「あの......」


「近寄らないで!!!」


悲痛な叫び声がした。よかった、どうやら女の子のようだ。でも、どうして?


「この事は...私の問題ですから。私と奴の...問題なのです。このままでは貴方も巻き込まれてしまう。早く、この森から逃げて」


混乱する頭で思考する。ここに来てまだ数分しか経っていない筈なのに、なんとも濃い出来事が起こっているのだろうか。


「と、とりあえず君もこっちに来て!一緒に逃げよう!!」


草を掻き分け女の子を掴もうとして、しばらく俺は動くことが出来なかった。

陶器のように白い肌、絹のように滑らかな金髪、フランス人形を思わせる綺麗な顔、小柄な体は風でも吹けば飛んでしまいそうな程に儚い。


混沌とし、生物として完成した人間。


どうしてか、そう思った。同時に少々の頭痛も生じたが、対した問題ではないだろう。


「あっ、その、早く、来て!」


「..........わかりました」


幾多もの木々を避け、数多もの小川を跨いだのち、ようやく町の明かりを拝むことに成功したのだ。


「よかった、町だ!」


「そう、ですね......いえ、確かに逃げられたことには喜ぶべきで────」


喜びの言葉を分かち合う、その刹那だった。


ドゴォォォォオオオン


何か重いものが落下した音と、冒涜的なまでの熱風を肌で感じる。それはおおよそこの世のものとは考えがたく、俺の思考は宇宙的恐怖に陥る。

ふと、後ろを、今まで走っていた森を振り返ると。


そこには先程まで存在していた、緑生い茂る森は存在せず、空虚な荒野が広がっているだけ。


「あ......あああああ、

ああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああ!!!」


女の子の叫び声が隣で聞こえる。

だけれど、俺は、そんなことよりも。


目の前で突如として起こった冒涜的な光景に目が離せないでいたのだった。

冒涜的な気配......

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