26話
二年半後―――
俺は東京の大学に進学し、この春二回生となった。
今は新歓の帰りだ。
「いや~、今年の後輩は元気がある奴が多いね」
「そうだな。特にあの丸坊主、いきなりみんなの前で一発芸なんて肝が据わりすぎ」
「あー、あれ面白かったね」
みんなそれぞれ先ほどの新歓を思い出す。
すると、
「そうだ。この後、次のサークル体験会の打ち合わせしない?」
同じサークルの女の子が提案した。
「お、いいね~」
「やろ~、やろ~」
それに対し、みんなも賛成する。
うーん、俺は明日用事があるんだけど……
「昴はどうする?」
すると隣にいた海音が声をかけてきた。
隼太は別の大学に行ったが、相変わらず海音とはいつも一緒にいる。
「俺は明日用事があるからパスするよ」
「あー、明日だっけ。約束の日」
「うん、結構遠いから早起きしないと」
「わかった。みんなに言っておくね」
「ありがとう、海音」
「あれ、昴は抜けんの?」
その時、男子の一人が気づいた。
「ああ。明日用事があるから。それじゃ」
「なんだよー。付き合えよ、桂~」
「付き合い悪いぞ~」
「ごめん、次は参加するから」
そう言って俺は駅の方へ向かいだした。
◆◆◆
翌日、俺は待ち合わせの旅館に行った。
父さんたちはすでに個室にいる。なんでも昨日日本に帰ってきたらしい。
俺はまだ待ち合わせの時間まで余裕があったので裏手にある遊歩道に行った。
季節は今春だからあの時のように紅葉したモミジはない。
代わりにあるのは青々とした葉っぱだった。
俺はゆっくりと遊歩道を歩く。
これから会う彼女に思いをはせながら。
しばらくすると、モミジの木を見上げる一人の女の子を見つけた。
腰まで伸びた枝毛ひとつない光沢ある黒髪、俺の手ですっぽり覆えるほどの小さな顔。その中にある大きく、くりっとした目に形の良い唇。
依然と違って、とても大人びたようだがそんなことで彼女を見間違うはずがない。
綾女……
すると、綾女も人の気配に気づいたのかこちらを振り返る。
彼女は俺を見た瞬間、言葉を失っていた。
俺はゆっくりと綾女に近づく。
そして、この日のために用意していた言葉を口にする。
あの時、綾女を連れ戻すことができなくて言いそびれていた言葉を。
――――――おかえり、綾女
いままで「あの有名女優が俺の妹になる件について」を読んでいただいてありがとうございました。
本当に多くの方に読んでいただいてとても嬉しかったです。
終わりのほうは更新が滞ったり、感想を返すことがなくなったりとしたことについてはすみません。
感想についてはすべて読ませていただいたのでこれからの参考にさせていただきます。
本当に今までありがとうございました。
次回作はまだ決めていませんが、今度はパクリ疑惑が浮上しないようにしたいと思います。
次回もよろしくお願いします




