12話
先日ご指摘を受けた箇所を訂正しました
そのため表記の仕方が前の話と一部違う部分があります
ジャンル別日間ランキングで一位を取ることができました
これもいつも読んでくださる皆さまのおかげです
本当にありがとうございます
まだこの小説は続きますのでこれからもよろしくお願いします
しばらくすると目的のフードコートが見えてくる。
城門を模した入り口からはパスタにから揚げ、ラーメンなどお馴染みのお店があった。
しかし、俺は同時にフードコートの出入り口で泣いている小さい男の子を見つけた。年はたぶん四、五歳ぐらいだろう。
通りがかりの人が何事だろうと男の子を見るが、誰一人として声をかけようとはしない。
「わるい、綾女、少し待っててくれ」
俺はいてもたってもいられなくなり、綾女の手を離すと男の子のもとへ走った。
「うええぇぇぇぇぇぇん」
「どうしたの?」
俺はかがんで男の子に尋ねる。
「マ、ママがいなくなったああぁぁぁぁ」
あー、迷子か
まあ、こんなに人がいたんじゃ、はぐれてしまうよな・・・
「わかったから、泣かないで。今から一緒に君のママを探そうか」
俺は男の子の頭を優しくなでる。すると男の子も少し落ち着いてきたようだ。
「ひっく、ひっく……。お、おにいちゃんだれ?」
「ん、俺は桂昴だよ」
そこで、綾女が俺に追いつく。
「もー、いきなりどうしたの……って、あれ、その子迷子?」
「うん、そうみたい。綾女、これからこの子のお母さんを探しに行ってもいいか?綾女はまだ遊んでいてもいいから。この子をお母さんのもとに送り終えたら、電話……」
「なに言ってるの?私も昴君といくよ」
「でも、せっかく来たんだし……」
「一人でアトラクションに乗っても楽しくないでしょ。だから、一緒に行く」
「わ、わかった」
すると、男の子が俺のズボンを引っ張る。
「ね、ねえ、すばるおにいちゃん。このおねえちゃんは?」
「私は綾女だよ。ぼくのお名前は?」
「あ、あきら……」
「そう、あきら君か。じゃあ、さっそくあきら君のママを探しに行こうか」
「うん」
綾女があきら君の手を握る。そして、まずはアトラクションエリアから行こうとすると、
グー
タイミングよく三人のお腹が鳴った。
「「……」」
「あはは、三人ともお腹すいてたんだな。じゃあ、まずはどこかで食べようか」
「ぼくもいいの?」
あきら君が遠慮がちに尋ねる。
「もちろん。あきら君は何が食べたい?」
「んーっとね……。あれ」
そう言ってあきら君は一軒の屋台を指差した。
あれは……ケバブか。
「それじゃあ、行こうか」
「うん」
◆◆◆
そうして俺たちはあきら君が言ったケバブを食べ、途中アトラクションに乗って遊びながらあきら君のお母
さんを探した。
あきら君も最初は遠慮していたけど遊ぶうちに俺たちに心を開いてくれ、いつのまにかまるで俺たちの弟みたいになっていた。
今は遊び疲れたのか俺の背中の上ですやすやと眠っている。
「すばるおにいちゃん……あやめおねえちゃん……」
背中からあきら君の寝言が聞こえてきた。
「あきら君、寝ちゃったね」
「そうだな」
「なんか、デートっぽくなかったかな?」
「あはは、たしかに。どちらかといえば、家族旅行に近いな」
「えっ、それって、あきら君が私たちの子どもっていうことじゃ……」
綾女は顔を赤くしてぼそぼそとなにやらつぶやいている。
しかしその声はとても小さくて、俺がはっきりと聞くことはできなかった。
「えーっと、綾女が何言ってるか聞こえなかったけど、ほ、ほら、あきら君が俺たちの弟みたいでさ……」
そこでばっと綾女が振り向いた。
「えっ、どうしたの?」
「家族ってそういうこと⁈」
「そ、そうだけど……。それよりも綾女、静かにしないとあきら君が……」
そこで綾女もはっと気がつく。
「あっ、ごめん」
俺はちらっとあきら君を窺った。あきら君からはいまだスースーと規則正しい寝息が聞こえてきた。どうやらまだ夢の中のようだ。
「大丈夫みたい」
「そう、よかった……」
すると、
「あきら~、どこに行ったの~」
少し向こうで女の人が叫んでいる。
「もしかして、あれ、あきら君のお母さんじゃない?」
「ああ、そうだな。じゃあ、あきら君を届けようか」
「あきら君起こすと悪いから、私、あの女の人のところに行ってくるね」
「ありがとう。お願い」
しばらくして綾女があきら君のお母さんを連れてきた。
「どうもありがとうございました」
俺の背中ですやすやと眠るあきら君を見るなりお母さんは俺たちに深々とお辞儀をする。
「いえ、全然大丈夫です。あきら君、とてもいい子でしたし」
「そうですか?でも本当にご迷惑をおかけしました」
「ところでお母さん、あきら君、眠っているんでこのままでもいいですか?」
「あ、はい」
俺はあきら君をお母さんのもとに手渡した。お母さんはあきら君を起こさないようにおんぶする。
その瞬間、あきら君の表情がふっとほころんだ。
「……ありがとう……すばるおにいちゃん……あやめおねえちゃん……」
その後俺たちはあきら君のお母さんと別れ、もういい時間だったのでセントラルパークを後にした。