少しの説明会。
お久しぶりです。
これまで棕櫚が経験した分の説明会になります。
それではどうぞ
クルックルルウウゥゥゥ!
朝日が差し込んでくる。
「もう朝か・・・あんまり寝つけなかったな・・・ってかさっきのなんだ?鶏?」
コンコンコン ガチャ
「失礼します。お目覚めでしょうか?朝食と長老から昨日の続きを、と言われておりますので昨日の場所までお越しください。」
昨日案内してくれたセルジルさんが来てくれた。
「あ、はい、わざわざありがとうございます。それと、ですね・・・」
「はい、なんでしょう?」
「トイレ・・・ってわかるかな?厠・・・は、またわからないだろうし・・・ご不浄?とにかく、出したいんだけど・・・どこにあるのかな?」
いい加減我慢も限界だったりする。
昨日も深夜に波が来たけどこんな時間に誰もいないよねって我慢しちゃったんだよね・・・
それで今また波がやってきました。
「といれ?かわや?ごふじょう?ですか?出す・・・あっ失礼しました。こちらに、大丈夫ですか?」
気付いて慌てて案内してくれた。
結果はぎりぎり間に合いました・・・危なかった・・・
この世界、トイレのことは「個室」って言えば伝わるらしい。
川の上か土を掘った穴の中に落とすらしい。土の方は専門の処理業者みたいなのがいるらしい。
「おぉ、起きられたか、調子はどうじゃな?」
「はい、すっきりしました。ありがとうございました。昨日の続き、お聞かせていただいてもいいですか?」
「ふむ、よかろう、」
「その前に長老、朝食を。」
「う、うむ、ほれおぬしも・・・そう言えば名前はなんじゃったかな?」
「あ、棕櫚といいます。失礼します。」
昨日の席に座るとすぐに朝食が持ってこられた。
今日の朝食は黄身が赤色をした目玉焼きと黒パンに汁物・・・は昨日見たような気がする葉っぱが浮いていた。
「ほれ、いただこうかの、いただきます。」
「い、いただきます」
「これも以前来た者のセリフでな、印象深かったから覚えてしもうた。」
それは覚えててもトイレは言ってなかったのか、と不思議に思いつつももう固定化した呼び方はなかなか変えられなくても初めての言葉に意味は覚えやすいのかもしれないなと勝手に納得する。
朝食も食べ終わり(目玉焼きはほとんど味が変わらず、塩コショウがかかってなく黒パンは期待した通りの硬さで汁物は極々薄味でした。)と言ったところで昨日この部屋にいた人たちが集まり昨日の続きになった。
道案内してくれたエルフさんと家案内してくれたセルジルさん、長老のフィリレさん、自分の4人。
「え~それで「しろ」だったかの?」
「棕櫚です。」
「そうじゃったそうじゃった、しろじゃな」
(言えてない・・・)
「シロでいいです・・・」
犬みたいな名前だな・・・
「そういえば昨日は言葉が通じなかったからな、改めて、俺の名前はアルバルドだ主に村の周りの警備をしている。昨日お前、シロにあったのもその一環だったんだ。昨日の見回りの時あのスクロフに襲われそうなシロを見つけてな、おかげで捕まえるのが楽だったよ。」
本来、あのイノシシ、(スクロフと言うらしいが)頭がいいらしく中々人前に姿を出さないらしい。見つけても自分に分が悪いとみるとすぐ逃げるんだそうだ。
(ってことは俺が弱く見えたってことだよな・・・はぁ・・・)
「その節はありがとうございました。」
「いやいや、また見つけたら俺の前に持って来いよ!」
と、変な期待?をかけられてしまった。
それと途中のウサギ、ラビットホーンとそのままな読み方だが雑食らしい。普段は草を食んでるんだが、肉が来るととびかかってくるらしい。ある程度逃げるかすれば逃げ切れるらしいのだが、1羽見ると近くに5羽くらいは集まっているらしく逃げ切るのも命がけみたいだ。
昨日のアルバルドはやはりすごかったみたいだ。
「さて、そのくらいでいいじゃろ、昨日の続きを話そうかの」
「あ、はい、すみません。よろしくお願いします。」
「うむ、まず昨日も言ったことじゃが、この世界の名はロージアン、この村の名はメイユ、というとこまでは話したかの」
「はい、それで、俺は帰れるんでしょうか?」
「うむ、それなんじゃがな、おぬしはたぶん山頂に近い位置からここに来たんじゃないかの?」
「ええ、洞窟で一晩過ごして山頂へ行ってから1時間くらいして下山したんですけど、いつの間にか|こっち(異世界)に来てたんです」
「うむ、その時は知らんかったんじゃろうし特例にしておくが、本来は祭りの日以外は山頂に登ってはならんのじゃよ、途中に立て札がなかったかの?」
「あ、ありました。なんて書いてるか分からなかったですけど・・・」
「あれにはの、こう書いてあったんじゃ[精霊の住む森、立ち入り禁止]とな」
「えっ立ち入り禁止、ですか?すみませんでした、知らなかったこととはいえ」
「うむ、じゃがあとで行っててもらうかのどんな理由であれ入ってしまったのじゃから精霊たちに供え物をしてこなきゃならんのでな。」
「はい、それは行かせていただきます?」
「ん?どうかしたかの?」
「精霊っているんですか?」
「ふむ、そう言えば迷い人の世界にはいない、もしくは見えないんじゃったかの?こっちの世界には確かにおるよ、登ったのは朝方じゃったんじゃろ?なら会わなかったのも納得じゃな、精霊たちは朝めったに顔を見せんからの・・・っと、話がそれたの、帰れるか、じゃったか結論を言えば帰れる、じゃな」
「よ・・・よかった・・・」
「でもすぐには無理じゃよ」
「まぁ仕方ないです・・・いつ頃行けますか?」
「うむ、まずこの村には年に1回お祭りがあるんじゃ、その祭りがもうそろそろなんじゃが、その日に行けるようになるはずじゃ」
「はずって・・・・」
「詳しくは知らんのでな、山に入るのを許されるのがその日だけなんじゃよ、あとは特例として精霊たちが認めた場合のみじゃな、それでその日に山に登り洞窟で一夜を過ごせば戻れる・・・はずじゃその日は魔力も集まりやすいからの。前にも一回すぐに帰ると言って丁度時期もよく去っていった迷い人がおったの」
また気になる単語が・・・
「魔力、ですか?」
「うむ、おぬしが言葉を覚えたのも魔力のおかげじゃ」
そう言って昨日の目つぶしの本を取り出す。
「これは言語習得の魔法書じゃ、迷い人がたまに来るからの、こうして長老宅に代々置いてある。正直他の者にはいらない魔法書じゃな。普通に言葉を覚えればいいだけじゃしの。」
「魔力・・・俺にもあるんでしょうか?」
「やはり気になるか?」
「それは・・・はい。」
「心配せんでも言葉を扱える時点で魔力はある。というより異世界からくる者はそのほとんどがかなりの魔力を有しておるようじゃ。前に来た者も使い方を聞いたら飛んで行ったからの。もう10日にもなるから森を抜けたかどうかじゃろう。他の町の場所も聞いて行ったしの。その時の挨拶もかなり早かったしのぅ・・・精霊たちがへそまげとらんどればよいが・・・まぁこれはおぬしに任せるかの、同郷のよしみじゃ、よろしく頼むぞ」
「えっそんな・・・はぃ・・・」
どうにも変えられそうになかったため引き受けることになった。
どこのバカだよ!
「さて、しばらくこの世界にいなければならんからの、軽く常識だけは頭に入れといても損はないじゃろ。それじゃぁ説明はセルジル、おぬしに任せるかの」
「はい。かしこまりました。」
「それじゃぁ儂は少し休んでくる、あとは頼むぞ、それとアルバルド、あとで村を案内してやってくれるかの?」
「かしこまりました。」
「頼んだぞ」
そう言い残し扉の先へと消えていった。
「少し休憩しますか、お茶をお持ちします。」
「あ、すみません。」
「いえ、それではお待ちください。」
と、セルジルさんも去っていった。
「シロも大変だよな。わけもわからずこんなとこに来て」
「はい、でも最初にアルバルドさんに会えて良かったです。あのイノシシ、スクロフでしたっけ?に危うくやられそうになりそうなところで助けてくれて、最初は言葉も通じなかったのに親切にしてもらって助かりました。」
「村で言われててな、もし迷い人を見つけたら丁重にもてなししろと、それがなんでかわからんが、迷い人の特殊なスキルや知識が欲しいのかと最近じゃ思ってるがな。」
「知識はなんとなくわかりますが特殊なスキルってなんです?特殊なことなんて何もないと思うんですけど・・・」
「それはな、」
「それも含めお教えいたしましょう。どうぞ」
と、アルバルドが言いかけたところでセルジルさんがやってきた。
「ありがとうございます。これは緑茶・・・じゃないですよね?」
緑茶じゃないのに色は緑、でも香りはすごくいいように思う。
「それはあれだ昨日帰りに拾ってただろ、緑色した葉、それだよ」
「昨日見てらしたのですね、ええ、これは薬草茶というもので体力を少し回復させることができます。」
「あれが薬草・・・」
恐る恐る口に含んでみるとほどよい苦みと共に香りが鼻にくる。
「あまり苦くないんですね、おいしいです。」
「ありがとうございます。」
アルバルドはおとなしく飲んでいた。実はこのお茶が好きなのかもしれない。
「それでは軽くこの世界常識を教えます。」
「よろしくお願いします。」
こうしてセルジルの勉強会が始まった。
まだ続きます^^;
祝日は仕事になってしまいましたので、次の日曜に更新になるかもしれません。
もし早く終わったら明日書きます。