「あんまり天気がいいから」
今日はね、
実は単車のフロント周りを
弄るつもりだったんだが。
…気が変わった。
今の単車はね、
古いから、
あちこち手を入れて、
…お金も掛かるし。
以前は
レーサーレプリカに
乗ってたんだ。
もうそのまんま
レース出れるぜ、
ぐらいな勢いで改造してね
毎日の様に峠に通ってた。
その峠は
俺達の行き付けの
すごく
お気に入りの場所でさ、
俺はそこならば、
誰よりも
速く走れる自信が有った。
1コーナーから
9コーナーまで、
どこで減速して
ギアは何速で、
ブレーキングポイントから
ライン取りまで、
頭の中に叩き込んで。
心臓が口から
飛び出るぐらいまで
ブレーキを我慢して
単車を寝かして倒し込んで
膝をアスファルトに
擦りながら
右に左にヒラヒラと
体重移動して、、、、
…どんだけ速く走れるかに
命賭けてたわ。
友人は単車の事故で
4人死んだ。
…その内の一人は、
毎日、一緒に居たんだが。
最後に
奴が逝っちまってから
皆、単車を降りた。
あまりにも短い間に
仲間が死んで、
恐怖感が
皆を支配したから。
レーサーレプリカは
…やめた。
でも、
俺は単車を降りない。
降りてしまったら、
奴との
繋がりが切れそうで…。
…いい天気だ。
今日はいじるのやめた。
久し振りに、懐かしい、
あの峠に走りに行こう。
大丈夫さ、
もうあの頃の走りは
したくたって
出来ないじゃないか。
…単車が違うしさ。
…今日は奴の月命日って
訳でも無いんだけれど、
なんだか
無性にお前に会いたい。
あんまり天気がいいから。
峠に行った後から、、、
…お墓参りに行こうか…。




