EP:2 画力と部活。
「……画力欲しい」
思わず口に出した。
漫画研究部部室。
目の前には下手なイラスト。
……あたしが描いたんだけどね。
「ユメも希美も文香も絵が上手くて羨ましいよ……」
希美の絵はどちらかと言うと美術的なんだけど、上手いのには変わらない。
張本人たちがいないのをいいことに小声で褒めまくる。いたら絶対に否定しにくるからな。
……何やってるかって?部活だよ部活。それ以外に何かある?
漫研はかなりフリーダムな部活で、あたしの他にもゲームしてる人とか、ただ喋ってるだけの人とか、部員ですらない人もいる。
そんな部室で、イラスト描くのも疲れて少し眠かった。寝よう。
夢は見たくないな……
滝の上から飛ぶ夢をみた。
最近描いてるこの絵のせいだろうか?
少女が硝子の鏡を見つめている。鏡の中の少女は黒い羽が生えている。
あたしの心情風景のひとつだ。
以前鎖でぐるぐる巻きにされて吊るされてる少女の絵を描いた時も夢に出てきたし……
は?言っとくがあたしはドSじゃねーぞ。ドMでもないがな。
ただそういう絵を描くのが好きなだけだ。
……失恋の件があってから増えたけどなこんなイラスト。
あーやだ。もやもやする。
「……初っちゃん、何してるの?」
ゲッ、希美いたのか!
「……いや、なんでもない。寝ぼけたかな?」
軽く誤魔化す。
まだ失恋引きずってるとは思われたくないしな。
このくらいの嘘なら普通に言えてしまう。
あたしは、嘘つきだから。
何もかもに嘘をつき続けて生きていたから。
「希美、補修は?」
「雨降ったからなーしー」
「降ってたのか」
「今はやんだけどね」
時刻は五時。
いい加減帰らないと美里に怒られるな……
「あたしもう帰るぞ」
「あ、わたしも一緒に帰っていい?」
「別に構わねーけど……」
じゃあ準備するから待って、と言った希美を待っていたら、携帯が鳴った。
メールか。
「わたしは準備できたよー!」
……後で見よう。
誰かと帰るのは久しぶりだ。少し懐かしく、賑やかな放課後。
傷を癒す幸せだった。




