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第九章

リューイと私が

ジルとメリルに結婚の報告をすると・・・


その夜は

酒場で

いつまでも

いつまでも・・・


みんなで

笑いあってて・・・・


リューイは

お酒をいっぱい飲まされてて・・・


もう飲めない

もう飲めない・・・


そう言いながらも

なんだか

とっても嬉しそうで・・・


私のところに

お酒が来ると

もう

いっぱいのはずなのに

代わりに飲んでくれて・・・・


それでも

なんだか

嬉しそうで・・・・


私は

リューイと

今・・・・


本当に

近くにいるっていうことが

ただ

嬉しくて・・・・


私たちは

ずっとテーブルの下で

手をつないでいたの


何度も

何度も

ギュって

握り返してくれて・・・


そのたびに

目と目が合うから・・


とても

ドキドキ

していたの・・・・


少しだけ

入ってる

アルコールのせい・・・・


それもあるのかもしれないけれど・・・・


今日一日のこと・・・


昨日の夜から

今日にかけてのこと・・・


そして・・・今・・・


いろんなことが

幸せになって

押し寄てくる。。。。


幸せな気持ちって

限りがないんだね。。。


これ以上の幸せが

どんどん

心に

押寄せるの・・・


一秒

一秒

どんどん

幸せになっていく・・・


どんどん

リューイのこと

好きになっていく・・・


リューイ・・・わかる・・?

私ね

今・・


幸せで・・・


幸せすぎて・・・・


胸が張り裂けそう・・・


みんなに・・・


すべての人に・・・


幸せを

わけてあげたい・・・!


みんな

みんな

幸せになってね。。。


幸せになってね。。。。。



  





         ・・・・・・幸せになってね・・・・・・







私の願いが・・・・


願いの続く夜が・・・・


少しづつ・・


少しづつ・・・


明けていく・・・・・




朝もやの中・・・

宇宙艇の前・・・

私とリューイは

二人きり・・・・


『ミリ。行ってくる・・・』

リューイはふんわりと微笑んでいて・・・


私も微笑みながら

頷くと・・・


リューイが

私の腕を取って・・・


しっかりと

抱きしめてくれたの・・・・


両腕から伝わる




           ・・・・・感触・・・・・





静かに

唇を

合わせると・・・・


力強く抱きしめられる・・・・


一生忘れることのない

感覚が

静かに

ゆっくりと

刻まれていく・・・・


耳元で

リューイが・・


『今度の試合でヒュードックを引退する・・これからはミリとジル、メリル・・・

・そして子供とずっと一緒に暮らしていこう』


『・・・・・・』


『こんなに長い別れはこれで最後だから・・もう寂しい想いはさせないから・・

だからちょっとだけ待っててくれるかい・・・?』


顔を上げると

リューイは

微笑んでいて・・・・


私はゆっくりと頷いて


リューイが

その私の頷きに

答えるように

両腕に力を込めたの。。。。。


私は・・・・


そう言われても・・・・


なんだか・・まだ・・・離れたくはなくて・・・・


宇宙艇に乗り込んだリューイに

微笑みながら・・・

手を振り・・・・


涙が

止まらなくなってしまった。。。。。


へんなの・・・・


もう・・・

会えないわけでも

ないのにね。。。。。。。


涙で

揺らぐ

景色の中・・・・


リューイの

赤い機体は

空の彼方へ

静かに

静かに・・・・







             ・・・・・・消えていったの・・・・・










それから数日後

メリルに・・・


『ミリ・・お願いが・・・あるんだけど・・・』


そう声をかけられて

部屋に行くと・・・


『・・・・・わぁ!!!!!!!』


部屋には純白のドレスがあって・・・・


『これ・・・私が結婚式のときに着たものなんだけど・・・』


そのドレスには小さな

きらきらとした石が無数に

散りばめられていて・・・


『自分の子供が結婚する時に着てもらうのが私の夢でね・・・取っておいたもの

なんだけど・・・ミリが、もし良ければ着てもらえないかな・・・って思ってね』


たくさんのレースで覆われている・・・・


何十年もの時を渡ってきたはずなのに

一つも色あせていないドレス・・・・


メリルは

きっと・・・


その想いとともに

このドレスを大切にしてきたんだ・・・


私に

それを

託してくれてる・・・・・・


その想いに

胸が

じんわりと

熱くなる・・・・


『・・・着てもいい・・・?』


ゆっくりと袖を通すと・・・

すそが少し短くて・・・


私とメリルはその日から

二人でレースを編みながら

そのドレスを

少しづつ・・・

作りかえていったの・・・・・


このドレスが

出来上がる頃・・・・


リューイが

帰ってくる・・・!


早く逢いたい・・・!


こんなに

一日を

長く感じたことなんてなかったわ・・・!


ねえ・・・

どうすれば

一日って

もっと短くなるのかな・・・?


逢いたい

逢いたい・・・!






             ・・・・・・・逢いたい・・・・!・・・・・








今度の試合が終わったら・・・・


私たちは

ずっと一緒・・・


毎日

同じ景色を見て

同じ空気を吸って

あなたのぬくもりを感じながら

眠りにつくの。。。。。


同じものを

食べて

『美味しいね』って

微笑んで・・・


同じものを見て

笑って

泣くの・・・・・


優しい涙も

悲しい涙も


いっぱい

いっぱい

一緒に

流して。。。。。


わたしは

ずっと

そばにいて・・・


ただ

そばにいて・・・・


ねえ・・・

そんな日々が

あと少しで

やってくるんだよね





          

     


            ・・・・・やってくるんだよね・・!・・・・







・・・・そして・・・・・・


わたしは願いながら・・・・


願いながら・・・・


やっとその日が来たの・・・・





今日・・・・

その願いが叶う日・・・


リューイの最後の試合・・・

その・・・地・・・・・







            ・・・・・・エグザナード・・・・・・








『もう、そろそろだな・・・・』

私とメリルが椅子に座って画面を見ていると・・・

ジルがゆっくりとその横に

腰掛けて・・・・


この試合が

リューイの引退試合だということが発表されて・・・


エグザナードには沢山の観衆が

押し寄せていたの・・・


その画像が

先ほどから繰り返し流されていて・・・



エグザナード・・・

この星は普段

無人星で・・・・


ゴツゴツと突起した地形

その中に僅かに残る

緑・・・


そして・・・


絶えず変わり続ける

気流・・・・・・


その厳しき星エグザナードは

人を拒み続けていることから

別名・・・・

“遠ざけの星”と呼ばれていた・・・・



この星でのレースが

リューイの最後のレース・・・・


今日は天気がいい・・

視界がすっきりとしていて

レースを存分に楽しめそう・・・・


リューイ

楽しんできてね。。。。


思い切り

楽しんできてね。。。。



ふと・・・


画面に

リューイの姿が

映る・・・


わぁ・・・!!!

いつもと変わらない微笑み・・・


少し髪が伸びたみたい・・・


でも・・・

元気そうで良かった。。。。



チャイムとともに

一斉に

浮び上がる

宇宙艇の機体・・・


ふんわりと

浮び上がる・・・


・・・一瞬の・・・・静止・・・


            




            ・・・・・3・・・・・


          



            ・・・・・2・・・・・


             



            ・・・・・1・・・・・





            ・・・・・!・・・・・






花火が開くように

一斉に空に散らばっていく・・・・!


私は

ただひたすらに

願い始める・・・・


リューイが

無事に

宇宙を飛べること・・・


思う存分

飛べること・・・




チェックポイント


・・・1・・・2・・3・・4・・・・


やっぱりリューイは速い・・・・


順調にチェックポイントを超えていく・・・・


あと少しで

この試合が終わって

戻ってくる・・・・・


早く

戻ってきてほしい・・・!


・・・・5・・6・・・7・・・・


このまま

いけば

リューイは優勝して・・・・







          ・・・・・・戻ってくる・・・!・・・・・







誰もが

最後のリューイの・・・・


若き英雄・・・

宇宙艇乗りリューイの姿を

目に焼き付けるべく・・・・


視線を追っていた


今日はリューイ専用のカメラも

あって・・・・


リューイ・・・・


あなたの走り・・・


私は忘れないからね・・・


いつか

子供が生まれたとき

あなたの話をするわ・・・・


あなたが

どんなに素敵な景色を

たくさんの人たちの心の中に

描いていたのか・・・・

私は話すわ・・・


ひとつ

ひとつ

全部

あなたのこと

覚えてる


そして

今日という日が

遠い過去になっても・・・


何度も何度も

思い返して

あなたの素晴らしさを

語り続けるわ・・・・・




そして・・・・







        ・・・・あなたを 永遠に 愛し続けるわ・・・・・


              


            




        ・・・永遠に 心に寄り添って 愛し続けるわ・・・






・・・・・・・・・・・


・・・・


・・・・


・・・




それは・・・・


あまりにも・・・・


簡単な・・・・・・






 

      ・・・・・・・・・一瞬だった・・・・・・・・・






その時・・・・


何が起こったのか・・・・


誰もわからなかった・・・・




『カメラ!ちゃんと撮りなさいよ!』


笑いながら

メリルがそういうほど・・・


その時何があったのか・・・・

誰にもわからなくて・・・・


画面には

先程までの

リューイの赤い機体は

ひとつも映っていなくて・・・・


ただ・・・



青い 

青い・・・


               




          ・・・・・・・青すぎる空・・・・・・




それだけが

すべてだった・・・・・





数秒間の沈黙・・・・・



長い・・・・沈黙・・・・




画面から

流れてきた音声は・・・・


    




      [リューイ選手の機体が、今、忽然と消えてしまいました・・!]





・・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・




          ・・・・・・・・!・・・・・・



だんだんと

私の意識が・・・・


ゆっくりと

動き出す・・・・


その意識と

反比例するように

脈が・・・速くなっていく・・・・!


なに・・・?


何がおきているの・・・?


[・・・墜落したのでしょうか・・・?]


え・・・?

なに・・・


そんな簡単に・・・言わないで・・・・・


嘘・・・


嘘・・・・!


さっきまで

走ってたじゃない・・・!


どういうこと・・・?


嫌・・・・


嫌・・・・・!


嫌なことばかり

心に浮かんでくる・・・!


止めて・・・


心の中を

止めて・・・!


お願い止めて!!!!!


泣きたくはなかった・・・


泣いたら・・・


泣いたら・・


現実になってしまう・・・


現実にしたくない・・・!


そう・・・・


思いながらも・・・


胸がどんどん熱くなる。。。






『あああああああああ!!!!!!!!!!!!』


メリルが絶叫とともに

泣き出して・・・

ジルがメリルをしっかりと

抱き寄せると・・・・



私は・・・・


ゆっくりと

立ち上がり

部屋に戻ろうと・・


なんとか部屋に戻ろうと・・・

2歩・・・・3歩・・・

足を前に出す・・・・

ゆっくりと

足取りを

確かめながら・・


力のない

足をなんとか・・・

前へ出し・・・・


その場に

崩れ落ちた・・・・


体が

頭が

心が

動かない・・・・・


何も

もう・・・

考えたくない・・・・


考えたくないのに・・・・・!


浮かんでくる・・・・


リューイの笑顔・・・

リューイの・・・






             ・・・・・死・・・・・・





嫌・・・・!


いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!



そんなこと思いたくない!!!


ずっと

一緒に生きていく・・!

そう思いたいのに・・・・


どうして

涙が止まらないの?


あなたがいなければ

生きていけない・・・・!


生きている意味がない・・・!


生きていたくない!!!!!!!


転がりながら・・・

ただ転がりながら・・・・


私は・・・


次第に・・・


願い・・・

始めた・・・・・


・・・・・・・


・・・


・・






               ・・・・・死にたい・・・・・









あなたの近くに

行きたい・・・・・


ずっと一緒に

いられるなら・・・


それがいい・・・



でも・・・


体中の力が抜けていく・・・・


死ぬことも

生きることも

ままならないなんて・・・


私が

私では

なくなっていくみたい・・・・


このまま・・・


私は・・・


あなたの近くに・・・・


いけるのかな・・


この体から

抜け出ることが出来たなら・・・


あなたのそばまで

ゆけるのかな・・・・



どこにいるんだろう・・・


どこにいるのかな・・・





転がったままの私は・・・・


斜めに切り取られた

窓の外に・・・・


ぼんやりと

ただ・・・


目を向けていた・・・・


開かれた窓の外は

薄闇の宇宙が

もう

広がっていて・・・・


その宇宙を目にしながら・・・・


じっと

見つめながら・・・・


見つめながら・・・・・・






           ・・・・・・・見つめながら・・・!・・・・・




意識が戻っていく・・・!


なにを考えていたのわたし・・!


リューイが死ぬわけがない・・!


リューイの墜落した場面・・・


すべては

私の心が

描き出していた幻想・・・・!


リューイは

この宇宙の中に

きっと・・・・






          ・・・・・・生きてる・!・・・・・・






リューイ・・・



私はこんなにも

心惹かれている・・・


惹かれあうもの同士

きっと

また出会える・・・!


あの人は

死んでなんかいない・・!


あの人は

私を

どこかで

きっと

待ってるんだ・・・!


わたしが

もし・・・

ここで

命を絶ってしまったら・・・・


あの人の命も

きっと

終わってしまう・・・!


わたしが死を選んだとき・・・


きっと・・・・


リューイの魂も

死に引き寄せられてしまう・・・


心惹かれるとは

魂で

惹かれあうこと・・・


どこまでも

どこまでも・・・


惹かれあうということ・・・・


だから・・!


わたしは

絶対に生き抜く・・・!


リューイが死の淵に

もし

いるのなら・・・


私が

生の中心に引き寄せる・・・!


私の

すべてで

引き寄せる・・・・・!


私が

生きて

生きて

生き抜けば・・・!


きっと

リューイと

いつか

出会える・・!


だって

私たちは

惹かれあって

この広い宇宙の・・・


宇宙の片隅で

出会えたんだから・・!


絶対会える・・!


わたしは・・・


わたしは・・・・!


あきらめない!!!!!


生きることを

あきらめない!!!!!


リューイとともに

生きるから・・・・


生きたいから・・・・!





             ・・・・・・あきらめない!・・・・・・





私はゆっくりと身体を起こすと

薄暗い部屋の中・・・



でも・・・


どうすればいいんだろう・・・


どうすれば・・・・


リューイを

探し出せるんだろう・・・・


私に

自由な

翼があったなら。。。。


いいのに。。。。。


・・・・・・


・・・・


・・・






            ・・・・・!・・・・・



そうだ・・・


前にメリルが言ってた・・・・



私はゆっくりと・・・


でも・・・

先程までとは

違う力強い足取りで・・・・


メリルとジルのそばまで行くと・・・


メリルとジルは先程と何も変わらずに

その場に

ただ

存在しているだけで・・・・


『メリル・・・私・・リューイを迎えに行くわ・・!』


顔を上げた

メリルの瞳には

まだ涙が・・・溢れていて・・・


私の問いに代わりにジルが答えてくれた・・・


『ミリ・・気持ちはわかるが・・民間人はあの星に行くことはできないんだよ・・・』


私はゆっくりと


『わかってるわ・・・』


テーブルの上・・・・


『星間通行許可証がないと行けないわね・・』


『・・・・・・・』


『だから・・・!ヒュードックのレーサになるわ・・!』


『・・・・ヒュードックのレーサーは・・・難関の上・・今までに女は一人もいない・・気持ちはわかるが・・・』


果物かごの傍にある

ナイフを

手に持つと・・・


私は・・・・


長い髪を束ねて・・・


その刃を当てて・・・







            ・・・・・引く・・・!・・・・





バッサリと

髪の束が・・・

床に落ちる・・・・


『私は・・・リューイの前以外で・・・女でいる必要はない・・!』




刃を当て・・・引く・・・!



『私は・・・リューイの前以外で女でいる必要がない!』



引く・・・!



『私は・・・!』



引く!


『今日から・・・!女ではなく・・・!』






             

             

             『・・・人間として・・・生きる・・・!』







そう思いながらも・・・・

足元に散らばる長い髪に・・・

涙は落ちていった・・・



[10]へ続く・・・・


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