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第八章

リューイは、3ヶ月から・・・

長い時は半年くらい

トゥールスを離れていて・・・


必ずお土産を持って

帰ってきてくれた


その星の・・・


小石

草木・・・・


星々のカケラたち。。。。


ほんの少し・・・


私のために持って帰ってきてくれることが

嬉しくてたまらなかった


でも・・・・


一番嬉しかったのは

リューイのみやげ話


『この間行った惑星リューザックは大きな二つの山があって・・・』


今夜は星祭りの日・・・・

私とリューイも

星降りの丘の上で夜空を見上げていたの・・・


リューイと出会ってから

5年・・・・

私とリューイの関係は

家族・・・・


兄と妹・・・・

そんな感じのまま変わらずに

このまま過ぎていくんだと

思ってた・・・・・・


でも・・・・


わたしは

リューイに憧れ始めて・・・・


その気持ちは

いつしか恋にかわってた・・・


でも・・・・

私とリューイじゃ

違いすぎる・・・・・


リューイには

ふさわしい誰かと・・・

一緒に生きてほしい


だから・・・私は

この宿屋を

今年中に出て行くことにした・・・・・・


リューイにはふさわしい人と

一緒になってほしいけど・・・


その姿を私は見たくなかった


幸せになってほしいけど

誰かと幸せになっている姿を

想像するのはつらくて・・・・


私はリューイの前から姿を消すことにした


ある日突然

何もない普通の日に・・・・


『ちょっと行ってくるわ』


と・・・・・・


また

帰ってくるふりをして・・・

静かに・・・・



リューイには

たくさんのものを

もらった


たくさんの

優しさ

思い出・・・・


私は・・・・


ミルフィールドが実は・・・・


私が強制就労所に連行されてから

半年もたたずに

あとかたもなく

粉砕してしまったことを

ここに来て半年程して知った


リューイがそれを知らないわけはなかった・・・

それなのに・・・


リューイは私にことあるごとに


『いつかミリの故郷に必ず連れて行ってやるからな!』

そう言ってふんわりと笑う・・・・


私は必ず頷きながら・・微笑んだ・・・


リューイは私に

命をくれた・・・


新しく

生きていくための

命・・・・・


その力・・・・・


だから

私は

もう・・・ひとりでも・・・

生きていける・・・・・


大好きな

大切な

あなたの前から・・・

お荷物でしかない私は・・・消えるわ・・・


きっと・・・

今日・・・


星降りの丘のこの夜が

二人きり

最後の夜ね・・・・


ふいに

リューイの話が止まった・・・


わたしは

夜空を見つめながら・・・


涙を落としていた

自分に

気がついて・・・


慌てて手で拭おうとすると・・・


リューイが私の涙を拭ってくれた・・・


『・・・どうした・・・?』

私はゆっくりと

リューイに向き直って・・・


『なんでもない!』

そう言いながら・・・


涙が

溢れて止まらない・・・・


心が嘘をつけない・・・


私は一緒にいたい・・・

心が

そう言いつづけてる・・・


でも・・・・!


今だけ・・・


お願い

嘘をつかせて・・・・


うまく

嘘をつかせて・・・・


私は・・・


『目になんか入ったみたい・・ちょっと泣けばきっと取れるわ・・』


ふんわりと微笑むと・・・


リューイは笑ってはいなくて・・・


リューイは私を

しっかりと抱きしめて・・・


『なんかあったら言えよ・・ミリは一人じゃない・・ミリにはちゃんと俺がいるんだから』


力強くそう言った・・・・


私は嬉しかった・・

でもそれ以上に

哀しかった・・・・


どんどん好きになることが

哀しかった・・・


これ以上好きになったら

私はもっと哀しくなってしまう・・・・


リューイが好きだから

哀しくなってしまう・・・・・


もう・・・


これ以上

リューイを好きになりたくない・・・!


旅立ちは明日にしよう・・・・


明日の朝・・・


何も言わずに・・・


出て行こう・・・


私の涙は

なかなか止まらなくて・・・・


その夜は

ずっと

リューイが

私の手を握ると・・・・


一緒に

星降りの丘・・・・


二人で星を見上げていたの


神様・・・

今夜だけは

リューイを独占していても

いいよね・・・・



最後の夜だから・・・

いいよね・・・・





              


             ・・・・・・いいよね・・・・・・・・







白々とした朝の中

私は手を繋いだまま

リューイと歩いたの・・・・


家までの帰り道


ただ・・・・


手を繋いだまま

歩いたの・・・・


リューイの背中

暖かい手・・・・


私・・・忘れないよ・・・


ずっと

ずっと・・・


忘れないよ・・・・


忘れなくてもいいよね・・・?


今までのこと

今の気持ち


この想い・・・・


もう

逢えないけど・・・



忘れなくてもいいよね・・・・?


全部

全部・・・

忘れなくてもいいよね・・・・


ずっと

想っててもいいよね・・・・


リューイの

知らないところでなら・・・・


想っていてもいいよね・・・・


いっぱいの

幸せを

ありがとう・・・・・


あなたに逢えたから

今まで

生きられた・・・・


これからも

生きていける・・・・


ありがとう・・・・


でも・・・・・


ただ

一言だけでいいの・・・・


この気持ち・・・伝えたい・・・・


言ってもいいかな・・・


言ってもいいよね・・・・


一度なら・・・


一度だけなら・・・


言ってもいいよね・・・・


もう・・・・一生・・・口にしないから・・・いいよね・・・


私は

思わず

リューイの手を振りほどくと・・・・


大きな・・・


大きくて

暖かい

リューイの背中に

抱きついて

背中に唇を押し当てて・・・


唇だけ動かしたの・・・


            




            ・・・・好きよ・・・・




やっぱり

言葉には

ならなかった・・・・


でも・・・

私のこれが精一杯・・・


気付いてほしかった


でも・・・!


気付いてほしくなかった・・・・


私は

あなたの

家族のまま・・・


他人にならずに

別れたかったの・・・


涙が

言葉にならなかった気持ちの分だけ

溢れてきて・・・・


その涙にリューイは気付いて・・・

リューイはそのまま

私に背中を貸してくれたの・・・



さよなら・・・・・・・・



さよなら・・・・・



さよなら・・






大好きよ・・・・


これからも

好きなまま・・・


私の気持ちは

変わらないよ・・・


遠くから

想ってる・・・

願ってる・・・


ただ

幸せを

願ってるね・・・・・・






             ・・・・・・願ってるね・・・・・









私は静かに・・ゆっくりと・・・リューイの背中から離れると・・・・



『ありがとうね!』


そう一言だけ言って

微笑んだの・・・・


リューイはただ

わたしに微笑んでくれて・・・・


きっと

この笑顔を

一生忘れないんだろうなって

思ったの・・・・




家に戻って

リューイが部屋に入って行くのを見て・・・


もう・・・・


この後姿が最後なんだと思ったら

涙がこみあげて・・・・


でも・・・・!


身支度を整えると・・・


私は・・・・


静かに・・


5年間お世話になった

この家を

後にしたの・・・・・



ジル・・・・メリル・・・ありがとう・・・

私ここで一緒に暮らせて

幸せだったよ


私のこと

娘みたいに可愛がってくれて

私すごく幸せだったよ


なんにも言わずに

去ってごめんね・・・・


許してね・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・


それから私は

なんとなく

もう一度・・・・


星降りの丘に

戻ったの・・・


昨日の夜・・・・・


もう二度と来ない

リューイとの夜を

心に

しっかりと

刻みたくて・・・



星降りの丘・・・・・

昼間は丘の遠くの方に海が見えて・・・・


ずっと夜ばかり来ていたから

この丘には・・・・


夜空しかないのかと

思ってったけど・・・


青い

青い・・・・

草原と海と空が


きらきらとしていて・・・・


さわやかすぎる風が

吹き抜けてく・・・・・


それが


哀しくて

哀しくて

しかたがない・・・・・


リューイ・・・・


離れたのに

もう

逢いたくてしかたがないの・・・・


どうしよう・・・・


逢いたくて・・・・


もう逢いたくてしかたがないの・・・・!


涙で

景色が

歪んで見えた・・・


その

ゆらゆらとした

真っ青な空の中を・・・・






               ・・・・・!・・・・・・






赤い・・・


赤い機体・・・!


リューイ・・・


リューイ・・・・!


リューイ・・・・・・!!!!


あの時と同じ・・・・


あの・・・


初めて出逢ったときと同じ・・・!


ゆっくりと

ゆっくりと

私の目の前に

舞い降りたの・・・・


ドアがゆっくりと開くと


リューイが・・・


あの時と同じく


ふんわりと微笑んで


泣き崩れる私に


手をさしのべてくれたの・・・・・


『なにしてるんだよ・・・!』

リューイ・・・・・

あの時と同じ・・・・・


初めて会ったときと同じ・・・・


わたし・・・

わたし・・・・!


やっぱりこの人と離れたくない・・!

離れられない!


『なんで泣いてんだよ・・・!』


『さあ帰ろう!』

私は頷きながら・・・でも!動けない・・・!


『なあ。どうしたか言ってみたらどうだ・・・?』


わたしは・・


わたしは・・・・!


『・・・・リューイの・・もう邪魔になりたくないの・・・!』


わたしから

やっと

その一言が出たの・・・・


『わたし・・リューイが他の人と一緒にいるところ見たくないの・・・』


わたし

リューイが好きだから・・・!








         ・・・・・・・・・・好きだから・・!・・・・・・










わたしがリューイを

見つめると・・・・


リューイは

しっかりとわたしを抱きしめて・・・・・


両腕に力を込めながら・・・


『俺・・・ミリに本当の家族に・・・なってほしい・・・』


リューイが優しく・・・



『ミリには二十歳になったら言おうって思ってたけど・・・今言った方がいい気がしたから言ってみた・・』


語りかける・・・


『俺じゃ・・・だめかな・・・・』


わたしは

リューイの胸の中で

ただ

思い切り

首を横に振ってたの・・・・


『じゃあ・・結婚してくれるのかい・・?』


わたしは

顔を上げると


『でも・・・・わたしとリューイじゃ・・・不釣合いよ・・・私じゃリューイに・・・申し訳がない・・・私には何もないもの・・・』


リューイは

私を

ぎゅっと

抱きしめると・・・・


『ミリは・・俺のもってないものをいっぱい持ってるよ』


抱きしめたまま・・・


『俺は一人じゃ幸せにはなれないけれど、ミリがいると俺は幸せになれるんだ』


そのまま・・・


『ミリが俺の幸せを、作ってくれるから・・・・』


見上げたリューイの顔は・・・


『ミリが俺の幸せをいっぱい作って持っててくれてるから・・・!』


あの時と何も変わらない・・・・


『俺の幸せを持っているのはこの宇宙でミリだけだ』







           ・・・・・・・大好きな笑顔・・・・・







                            




『3ヵ月後・・結婚式を挙げよう。エグザナードでの試合が終わったら、大型宇宙船を一隻買って帰るから』


『・・・・・・・』


『何処の星で式を挙げようか・・・』


私の中では・・

もう答えが出ていた・・・


あの世界樹・・・


私とリューイが家族になった

あの世界樹の見える場所がいい・・・・


『世界樹・・・・あそこがいい・・・』


そう伝えて見上げると


リューイと目があって・・・・


私とリューイは

初めて

口付けを

交わしたの・・・・・・


優しい

優しい・・・・

キス・・・・


私から

また

涙が溢れてた・・・・・


なんだか

優しい涙・・・・


それを

リューイが手で拭ってくれて・・・・


『世界樹がいいな!あそこは俺とミリが家族になった場所だもんな!』


そう言ってふんわりと微笑むから


なんだか

また

涙が出てしまった


私は

リューイが・・・・・






             

           ・・・・・・・好きなんだ・・・・・・



[九]へ続く・・・・・・


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