第三章
夜が来ても・・
ここは
それほど
温度の差がないようだった・・・・
不思議な場所。。。。
この岩山ひとつ抜けた先に・・・・
あの・・・生き物を寄せ付けない・・・
死の土壌が・・・
あるというのに・・・・
この場所は・・・
生に満ち溢れている・・・・・
星も見える・・・
今日は
星が
明るい・・・・
ここなら・・・当分・・生きられる・・・!
食べ物・・飲み物・・・温度差・・・
問題はない・・!
ここでなら・・・・
“・・・一生過ごせそう・・・”
そんな気持ちが
ふと・・・
思い浮かぶ・・・
思い浮かび・・・・!・・かき消す・・・!・・
私が生きているのは・・・
私が生き残ったのは・・・・
お父さん、お母さん、ピチを探し当てるため・・!
その為に生きてるんだ!!!
だから・・・!
わたしには
何もないけど・・・これから探し当てるだけの
その力を蓄えなければいけないんだ・・!
ここで・・ずっと・・・立ち止まって・・いられない・・!
大空を・・・
宇宙を・・・・・
見つめながら・・・・・
瞬きもせずに・・・・・・・
・・・・考える・・・・・
どうにかこの星から出る方法・・・・
その成功の可能性が一番高い方法・・・
私はあることを知っていた・・・
三ヶ月ごとにアルフィールドから巨大宇宙船が一隻やってくる・・・
食料運搬用の船だ・・・
多量の食料を積んでこの星に来ると・・・その代わりにこの星から
あるものを運び出す・・・・
そのあるものの存在を知るまで・・・私は・・
この星での作業は、新しい居住地開発のために
行われているものだとばかり思っていた・・・
あるもの・・・それは・・・
この星の本当の価値・・・
この星の地下・・・奥深くに眠る石・・・・
グストの存在だった。。。。
このグストを精製して作られるもの・・・
それは・・・高純度の幻覚剤・・・
このグストを大量に積んでアルフィールドに戻る。。。。
この船に潜り込めば・・・この星から抜け出れる・・・!
・・・一週間後・・・だったな・・・・
予定決行は・・一週間後・・・・
でも・・・・
うまくいくかは・・・
わからない・・・・
うまく乗り込めても・・・
うまく降りられるか・・・
わからない・・・・
グストを積んだ船・・・
きっと
厳戒態勢での警備・・・
でも・・・!
これしか方法はない・・!!!
大きく息をつく・・・
きっと
生かされてる・・
私には
なにか役目があって・・・
あったから・・・
生かされてる・・・!
余計な不安は
判断力を鈍らせるだけ・・・
ありのままいこう・・・・
きっと
意味が
あると
思うから・・・・
私の生きている・・・意味・・・・
草原に静かに
横たわる・・・・
星が
瞬くのが
美しくて・・・・
今日は
夜が
怖くない。。。。。。
きれいな星・・・・
強制収容所からは
星なんか見えなかった・・
夜のなかにあるものは
悲しみだけ・・・
その悲しみに・・・
堪えきれず・・・声をあげて・・泣き出すものもいる・・・
・・・こだまする・・・悲鳴・・・・
しばらくすると・・・
悲鳴が消える・・・
・・・いつものこと・・・
数限りなく・・・
行われてきたこと・・・
声とともに・・・命の灯が
消えたということ・・・・・
だからみんな・・・
泣くことさえできずに・・・
押し殺すように泣く・・・・・
その・・・音のない泣き声が・・・
悲しみを・・・募らせる・・・・
そして・・・感情を消していく・・・
少しずつ・・・こころを消していこうとする・・・
でも・・・・!
・・・こころは生きている間・・そこに・・あり続ける・・・・・
・・・だから・・・悲しみが消えない・・癒えない・・・
・・・悲しみがある・・・・生きている証拠・・・
でも・・・・
そんな証拠ばかり・・・わたしは・・・欲しくない・・・・
・・・・・もう・・・欲しくない・・・!・・
からだを起こす・・・
勢いよく
起き上がる・・・
・・寝てなんていられない・・・・!
・・気持ちばかりが・・先へ進もうとする・・・
進もうとする・・・・・
・・・進もうと・・・する・・・
宇宙を見つめる・・・
・・・届かない・・・宇宙を・・・見つめる・・・・
・・・見つめ・・・続ける・・・・
・・・・・・
・・・
・・・
・・・・・・・!・・・・・・・・
わたしは・・・
目をこする・・・
目を・・
凝らす・・・・
流れ・・・星・・・?
赤い・・・・星・・・・・・
・・・・・・・・・・!・・・・・・・・
違う・・・!
宇宙艇だ!!!!!
アルフィールド製じゃない・・・宇宙艇・・・!!!・
宇宙遠くに一隻の宇宙艇を発見した・・・!
夢中で手を振る・・・・
気づくはずがない・・・・!
でも・・・・
どうすればいい?
どうすれば・・・・
夢中で考えながら・・・手を振る・・・
きっと・・
行ってしまう・・・
火でも起こせれば・・・気づくかも知れないけれど・・・・
そんなものは・・・
ここには・・・
ない・・・
涙が・・・・止まらない・・・・
悔しい・・・・・
悔しい・・・・・・・
悔しい・・・・・・・・・・・!
なんにもできない自分が
ただ
悔しい!!!!
どうして私は・・・こんなに無力なの・・・?
力がないの・・・?
チャンスさえ・・・活かせないの・・?
もっと力が欲しい・・・・
今すぐ・・・力が欲しい・・・
すべてを変えるだけの・・・・力が欲しい・・!
涙を・・・流すことしか・・・できないなんて・・・・
・・・・・泣くことしか・・・できないなんて・・・・・
気持ちが・・・落ちていく・・・・
深く・・・深く・・・
でも・・・・!
・・・私は宇宙全体を・・・にらみつける・・・!
今できることだけにこころを込めよう・・!
気持ちを込めよう・・!
身体をこの宇宙へ飛ばすことはできないけれど・・・
こころは無限に飛ばすことができるから・・・・
想いは・・飛ばすことができるから・・・・
届く・・・・
届く・・・・・・!
・・・・・届く!・・・・・
・・・・・!!!・・・・・・・
宇宙艇が・・・・
宇宙艇が・・・・・・・
宇宙艇が・・・・・・・・!
来る!!!!!!
進路を変えて・・・こちらに向かいだしてる・・・・!
赤い機体が・・少しづつ・・鮮明に・・・見えてきた・・・
こちらに
向かってる・・・・
今!
向かってる!!!!
涙が・・・
夜風がそよぐたびに・・・
拭われて・・・・
その拭われた
頬をまた
涙が・・・潤していく・・・・・
間違えない・・!・・夢じゃないんだ・・!・・・
赤い・・赤い・・美しすぎる・・・赤い機体・・・・・
目の前の・・・
草原の海原に・・・
静かに・・・・
舞い降りた・・・・・
扉が・・・開き・・・
降りてきたのは・・・・・
若い男・・・・
ふんわりと微笑む・・・
・・・・若い・・・男・・・・
手を・・・差し伸ばされ・・・
私は・・・
その手にしがみつき・・・
ただ・・・
溢れる涙が・・・
とまらない・・・・・・
久しぶりに感じる・・・
温かさ・・・
命の・・・温かさ・・・・
繋がる手から・・・伝わる・・・
温かさ・・・
初対面の人間に
どうして・・・
これ程までに・・
温かさを
感じたのかは・・
わからない・・・・・
ただ・・・この温かさを
信じられた・・・
私は
懸命に
凍りついたこころを
溶かしている・・・・・
手から伝わってくる・・ぬくもりから・・・・
男は・・泣き崩れる私を・・・
優しく・・
抱き起こすと・・・
しっかりと抱きしめてくれた・・・・
私の・・・
すべてを・・・・
暖めるように・・・・・
そして・・・・
『一緒に・・・来るかい・・?・・・』
その言葉に・・・
ただ・・・
頷くことしか・・・
できなかった・・・・・・
この人を・・・
わたしは・・・・・
信じる・・・・
何も
知らない
この人を・・・・
信じる・・・・
わたしの・・・・勘・・・・・
これまで
何度も救ってきてくれた
勘が・・・
私自身の心が・・・・
そうしろって・・・言ってる気がするから・・・・
乗り込んだ機内は・・・目が痛いくらい
キラキラとしていて・・・・
『・・・後ろに座っててくれる・・??』
頷くと、ベルトをしっかりと固定して座った・・・・
わたしが座るのを確認すると・・・・
『じゃあ!行くか!・・・・とその前に・・・・』
男が
先ほどから点滅している
スイッチに・・手を伸ばす・・・
現れる・・・画像・・・
『・・・・・・・・!』
現れたのは・・・・
強制収容所の・・看守・・!
『なにかようですか・・?』
男がやんわりと答える
『わたしたちの星に無断で入って・・・黙って帰る気ではないでしょうな?』
『・・んー?俺には権限があると思うんだけど・・・』
男が答える・・・・
『しかし・・・この星にはこの星のしきたりがあるから・・それに、従ってもらわないと』
『・・・・宇宙全体の権限の方が大きいと思うんだけど・・・この星ひとつではなくすべての星に共通する権限・・・それに従うだけだけどね・・気に入らないのかい?』
男の口調が・・・
『そう言われたとしても・・・』
『とにかく!失礼する!』
通信画面を・・・閉じる・・・!
男は振り返ると・・・・
『ちょっと揺れるけど・・・しっかりつかまっててくれよな!』
ふんわりと微笑むと・・・
浮かび上がる・・・機体・・・・
窓の外に・・・目を・・・やると・・・
・・・・・・・・!・・・・・・・・・
・・アルフィールド製の・・・宇宙艇・・・!
何隻も・・・・浮かんでる!!!
・・・・まずい・・!・・・・・
機体が動き出す・・・
機体が・・・
アルフィールドの宇宙艇の海へ・・・・
向かって・・・
進んでる・・・!
見えているの・・?
見えていないの・・・?
このままじゃ・・・!!!
『・・・わざとこの方角に飛んでるから安心しな』
男が声をかける・・・
わたしは・・・静かに・・・
願う・・・・・・
真っ直ぐに敵機へ向かい・・・飛ぶ・・・
ミサイル・・・・!
飛んでくる・・・・!
よける・・・
飛んでくる・・・・
よける・・・
・・・すべてを・・・よけていく・・・・
ミサイルが
この機体を・・・
避けているみたい・・・・
なんで・・・?
こんなことが
できるの・・・?
・・敵機が敵機を・・・撃ち落していく・・・・・
『ミサイルは・・機体が重くなるから・・つまないようにしてる・・けど・・必要ないってわかるだろ・・?』
自由に・・・空を・・・泳いでいく・・・・
素早く・・・優雅に・・・ゆっくりと呼吸するように・・・
生きているように・・・!
機体が・・泳いでいく・・・
通信が入る・・・
『・・・あんた!・・・誰だ・・・?!』
荒々しい呼びかけ・・・
平然と・・・・
答える・・・男・・・・・
『・・・宇宙艇乗りのリューイ・・・といえば・・・わかるかい・・・?』
『・・・・・・!!!・・』
『このことは、連邦に報告しておく・・・!』
『あんた・・無敗の帝王・・・伝説の宇宙艇乗りの・・・リューイ・・・なのか・・・?』
『・・・・ああ・・・・・』
男は・・・通信を切ると・・・
真直ぐに宇宙に向かって・・・・上昇を始めた・・・
先ほどまでの・・ミサイルはやみ・・・・
敵機は・・静かに・・・私たちを・・・
・・・・・見送っているようだった・・・・・・
『ちょっと・・あの星の流儀が気に入らなくてな・・・おとなげない事してしまった・・ごめんな・・』
『・・・・・ありがとう・・・・・』
やっと・・・私から・・・言葉らしきものが・・・でた・・・・
男は振り返り・・・ふんわりと笑う・・・
『・・・・自己紹介まだだったな!俺はリューイ!』
『私は・・・ミリ・・・・』
『ミリか・・・・しばらく旅の仲間だ!よろしくな!』
手を差しだされ・・・
握手する・・・
固い・・・握手・・・
『・・・んー・・・うまいもの食いたいよな・・?』
向き直ると・・リューイは調べ物を始めたようで・・・・
『うまいもの・・・おなかいっぱい食わせてやっからな!』
キーボードを叩きながら・・・
『そのまえに・・・よーく休め・・・・』
『・・・・・・・・・』
『安心して休め・・・この船は・・・宇宙で一番・・』
リューイは振り返り・・・・
『安全だからな・・!』
ふんわりと微笑んだ
[四]へ 続く・・・・