第二章
ある夜の空襲・・・ただ一人、夜空いっぱいに点在する敵宇宙戦艦を見たミリはその攻撃を逃れ、爆風とともに気を失う・・気がつくと敵国アルフィールドに捕らえられていた。強制就労所のある星に連行されるが・・・そこは1日の温度差40度1年で半数・・2年で1割の人間が生き残るという過酷な星だった・・・・
7637番・・・これが私。。。
性別も年もない
名前もない
人間でもない。。。。
ただ7637番・・私はここではそれだけの存在・・・
『7637番。こっちへこい!』
作業中声をかけられる。。。。
ただ・・・立ち上がり
睨みつけるように
見上げる・・・・・
『なんでしょうか?』
急に立ち上がると
めまいがする・・・
やっぱり
この昼間の熱には慣れない・・・
でも・・・・
意識を集中させる・・・・
しっかりと
地面を踏みつける。。。。
『7637番に今から指令を与える。。。ついてこい!』
指令?
なんだろう・・・・
私は静かに
後ろをついて歩き出す・・・・
私のいる強制就労所から500mほどの場所に大きな岩山があって・・・
その岩山はまるで壁のように・・・・
左右に上下に広がっていた・・・・
地平線の先まで広がる岩山・・・・
先人が作ったものか・・・それとも神のいたずらか・・・・
ここから
抜け出られた人間が
今まで・・・・
ひとりもいなかったのは・・・
無造作に置かれた壁のせい。。。
それも理由のひとつとして
あるのではないかと
私は思っている・・・・・・
そびえ立つ・・・壁・・・
その前に私は連れて行かれると・・・・
『今からこの岩場の探査任務を言い渡す!』
取り除かれた小さな岩の陰には・・・
小さな穴が開いていた。。。。。
小型生命装置を渡されると私は四つん這いで穴の中へと向かう・・
私は12歳だったが・・・成長期に満足な栄養を与えられずにいた為
体がとりわけ小さくて・・・
多分私しか通ることのできない岩穴・・・
その中を
ただ
ひたすら・・・・
進み続ける。。。。。
身体中を圧迫感が襲う・・・
心まで圧迫されていく感覚・・・
小型生命装置が果たして本当に機能するかも
わからない・・・・
でも・・・!
逃げたくない・・・!
このまま逃げれば
私は・・・・
どこまでも続く
横穴・・・
少しずつ
息苦しさが増す・・・
酸素が・・・薄い・・・・
もう・・・引き返さなくては・・・
頭が・・もうろうと・・してきた・・・
軽い・・酸欠状態に・・陥ってきてる・・・
・・・・もう・・・・・これ以上は・・・・
・・・・・・!!!!
引き返そうとした・・・その時・・・!!!
光を感じた・・・!
薄暗い岩の穴の先に
見える・・・・
ほのかで
あたたかな・・・・
・・・・・光・・・!!・・・・
風も僅かに感じる・・・・
このまま
進んでみよう・・・・!
一種の賭け・・・
今賭けるべき
賭け・・・・
勝つか負けるかなんて
考えている
時間は・・・・
・・・一瞬も・・・・・ない・・!・・・・
ただ
自分を信じて・・・
私には
もう・・・・
信じられるものは
自分しかないのだから・・・
こんな時に
自分を信じられなくて
どうするの・・?
大丈夫・・・
わたしは・・・
力尽きることはない・・・
わたしには・・・まだ・・・やることが・・・・
やらな・・・ければ・・・いけない・・・ことが・・・・
意識が・・もうろうと・・してくる・・
目がかすむ・・・・
でも・・・・!
・・・・・・・あるんだから・・!!!!・・・
少しだけ横穴が
広がっている
気がした・・・・・
これなら・・・・いける・・!!・・・
夢中で身体を
動かして・・・・・
出た答え・・・
それは・・・・
小さな光・・・・
その正体は・・・・・
壁に開いた
小さな穴から
こぼれる
光だった・・・・・
・・・・あぁ・・・・・・・
・・・もう・・・わたしには・・・・・
・・・・戻れる・・だけの・・・・体力も・・・気力も・・・
・・・・・ない・・・・・・
絶望感が・・心を・・・覆う・・・・
なにも・・・見る気がしない・・・・
こころの中が
もう・・・
何もない・・・・
何も・・・残っていない・・・
ふわふわとした
無意識の中・・・・
壁に拳を打ち付けていた・・・
何度も
何度も・・・・
無意識に
打ち付けていた・・・
手に血がにじむ・・・
痛みを感じない・・・・
それでも・・・・
何度も
何度も・・・
打ち付けていた・・・・
何度も
何度も・・・・
感覚のない心・・・
なにが
私を動かしているのかは
わからない・・・・
でも・・・・・
ひたすらに・・
打ち付ける・・・・・
ふと・・・・涙が・・・・溢れる・・・
痛みからではない・・・・
痛いからでた
涙なんかじゃない・・・・!
これは・・・・
我に返る・・・・・!
わたし・・・無意識に・・・生きようとしてる・・・・
何度も
何度も・・・
打ち付ける・・・
まだ・・・命が尽きたわけでもないのに・・・・
何度も
何度も・・・・
打ち付ける・・・
・・・・・心を殺そうとしてた・・!!!・・
負けたくない・・・・
負けたくない・・・・・・・
・・・・・・負けたくない・・・!・・・・・
私が帰る・・・・
心が・・・・・
生き返る・・・・・
・・・・・・負けるわけにはいかないんだ・・・・!・・・・・
この涙は
生への渇望・・・・
心を生き返らせる・・・
命の水・・・・・
わたしは・・・・生き残る・・・!
携えていたもので・・・・使えそうなものは・・・・・・
生命維持装置・・・・
これを・・・・・もしかしたら・・・・仕えるかも・・・・
・・・・ん・・・・と。。。。。。
スイッチへと繋がる導火線を
剥き出しにする・・・
小瓶・・・
薬のビン・・・持ってたな・・・・
この星の風土病予防のためにと・・・
薬が手渡されていた・・・・・
風土病ではなくても・・・
力尽きていく人は
たくさんいたけど。。。。。
・・この薬・・・・手放すの・・・やばいかな・・・・
そう考えながらも・・・・
目の前の
チャンスに
私は・・・
・・・・・・・しがみつく・・・・・!
瓶から・・さらさらと白い粉が・・・・
壁穴から吹き込む風に舞って・・・
後方へと
流れていく・・・・・
もう・・後戻りは・・・できない・・・!!
肩から服の袖を破る・・・・!
ビンに詰めて・・・
こんなので・・・・
この壁が爆破できるのかは・・・・
わからない・・・・
もしかしたら・・・・
爆風に・・・
飲み込まれて・・絶えるかも・・・しれない・・・・
でも・・・・!
自分を信じる・・・・・・!
・・・・信じ・・!・・続ける・・・・!
タイマーをセットして・・・
壁の穴の奥へと手を伸ばす・・・
願いを込めて・・・・
置く・・・
後ずさり・・・
すばやくしようとすると
焦って
うまく
動けない・・・・
大丈夫・・・
大丈夫・・・・・
大丈夫・・・だから・・・・
身体を動かす・・・・
恐怖に負けてはダメ・・・・
まだ・・・結果は・・・出ていない・・・・
・・・・何も・・!・・始まってない・・・!・・・・・
下唇をかむ
穴を睨みつけるように
見つめ・・・・
・・・・!・・・・
・・・・・・爆風・!!・・・・・
風が・・・・白い煙とともに・・・身体に打ち付ける・・・・
無数の痛み・・・・
痛み・・・
痛み・・
・・・・・・・!!!・・・
・・痛みを・・感じる・・ということは・・・・・!
わたし・・・生きてる・・・・!
生きてるんだ!!!!
真っ白な煙のなか・・・
煙が
晴れて・・・
見えてきたものは・・・・
『・・・!!!!』
私から言葉にならない声が
溢れた・・・・
目の前には・・・・
わたしたちの作業をしている
居住地とは
あきらかに違う・・・・
・・・・楽園が広がっていた・・・・・
青々とそよぐ
大草原と樹木
水を湛えた
湖・・・・・
生物が生きる世界・・・・・・・
ここは・・・・岩山を抜けた先。。。。。
それとも・・・・
・・・天国へ来てしまったんだろうか・・・・・?
風がゆっくりと
動く・・・・・
身体を包んでいく・・・・
暖かな日の光と久しぶりに感じる風の感触・・・
天国なんかじゃない・・・ここは・・・・現実・・・・
果実がなる樹に目が入る・・・・
ゆっくりと歩き出し・・・・
走り出す・・・!
赤い・・赤い・・果実・・・
夢中で手を伸ばす・・・・
・・・・!・・・・
・・待って・・・・!
果樹をくまなく
見つめる・・・・
きっと・・・・あるはず・・・・
きっと・・・・
・・・・・
・・・
・・・
・・・・!・・・
あった!・・・
鳥か何かはわからないけど・・・
生き物が
この実をついばんだ
跡がある・・!
この実は確実に食べられる・・・!
ということは・・・・
水も・・・大丈夫そうね・・・・
わたしは
夢中で
赤い実に手を伸ばし
頬張る・・・・
久しぶりに物を食べる感覚・・・・
食べるという感覚・・・・
そして・・・・
忘れていた・・・
味わうという感覚が・・・
戻ってきた・・・・
美味しい・・・
美味しい・・・・・・
美味しい・・・・・・・・!!!!
食べながら
泣いていた・・・
生きていることに・・・
生きていると感じることに・・・
ただひたすら・・・・
・・・・・・泣いていた・・・・・・・
[三]へ・・・つづく