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第一章

[一]


夜が怖いの・・・・・

見るものがなくなる真っ暗な夜が

怖いの・・・・


ずっと

ずっと

昼間ならいいのに・・・

目に焼きつくものが

過酷な毎日でも

私は、あの日のことを思い出さないだけ

気分が楽になる・・・・


あの日・・・・


『ミリ、早く起きなさい・・!』

お母さんの囁きに目を覚ますと、あたりはまだ真っ暗で・・・


わたしは

目をこすりながらぼーっとしていると・・・

『早くしなさい!』

お母さんはすごく怒って・・・

わたしは・・・

お母さんに手を引かれて・・・

家を出た・・・


お父さん・・・妹のピチを背負ってたな・・・


で・・・・


町の中・・・


みんなが慌ててて・・


人がいろんな方向に行き来してるから・・・

私はうまく走れないし苦しくて・・・

泣き出すと

お母さん・・・

わめくように・・・・

『我慢しなさい!今、アルフィールドが攻めて来るんだから・・!』


アルフィールド・・・・

私の星ミルフィールドと姉妹星だった・・


でも・・・・

私が生まれる前から

星間戦争が繰り返し行われていて・・・


こんな空襲は生まれたときから何回もあったから

もう・・・

身体が

慣れていたはずなのに・・・・


こんな風に泣き出したのは初めてだった・・・


私はその時・・苦しいからだけで・・・・

泣いていたのではない・・・・


不安とその恐怖から

なにか・・・・


これから起こる惨劇を予感していたのかもしれない・・・・・






私は見てしまった・・・・





『お母さん!空の上にいっぱい飛行機があるよ!あれなんで

あんなにあるの?怖いよ!!!』


そう私が言うと

あたりの人々が一斉に目を頭上に向ける・・・・










真っ暗な空に無数に存在する小型宇宙船・・・

音もなく漂っている・・・・・









『何言ってるのよ!この子は!』

お母さんは視線を私に返すと・・・・


『何もないじゃないの!』

あたりの人も皆、視線を頭上から戻す・・・


え・・・・

幻????

あれは幻なの???

あんなにたくさんいるのに・・・みんな見えないの???


『お母さんそっちに行っちゃダメ!そっちにはいっぱい・・・』


お母さんが私の頬をうつ・・・


『いい子だから大人しくしてなさい!』

お母さんは泣きそうになりながらそう私に言う。。。


私がモタモタしていたのでお父さんとピチからはぐれてしまって

不安だったんだろう・・・・


母の不安が硬く握られた手から伝わってくる・・・・


でも・・・・・!


そっちの上空には・・・・無数の敵機がいるんだよ!!!


何でみんなそっちに行くの?

見えないの?

私・・そっちに行きたくない!!!


どうしたらお母さんわかってくれるの???


周囲を必死で見渡すと・・・


隣のおじさんおばさん・・・・そっちに行っちゃダメ・・・


あ、あれ。。。同じクラスのピート・・花屋のお姉さんも・・・

どうしてそっちに行っちゃうの???


ダメ!


行かないで!!!


お願い!!!


『そっちに行っちゃダメ!!そっちには!!!!』


誰にも伝わらない声・・・・・


わたしの声は・・・


わたしは・・・・








あまりにも・・・小さすぎる・・・・・・










お母さんだけでも・・・・

わたしは母の・・・・手を振り解くと・・・

反対方向へ地を這いながら向かいだす・・・・・


ここから・・・・・

あの無数に点在する宇宙船から・・・・

少しでも離れないと・・・・・

私は夢中で動き出す・・・・・

動いて・・・

動いて・・・


足がすれる・・

手のひらがすれる・・・

人と何度もぶつかりながら・・・・


夢中で地を這う・・・・・


お願い・・・・

早く・・・

ここから

離れないと・・・・・



泣きながら・・・後ろを振り返ると・・・・・








少し離れたところに

お母さんがいて・・・・






きょろきょろと私を探している・・・・





『お母さん!!!』

私はここにいるの!

ここに!


気づいてほしくて

どうしても気づいてほしくて・・・・


夢中で声を上げる・・・・


なのに・・・!


どうして・・・・・


そっちには私はいない!!!!


いないのに・・・・


そっちへ向かおうとするの????


そっちに行かないで・・・


お母さんダメ・・・


こっちに・・・

私に気がついて・・・・


お母さんは私に気づかないまま・・・


あの怖い場所・・・

私が怖くてたまらない場所に向かおうとしている・・・・


私はたまらず・・・

お母さんの方へ行こうとするけど。。。。


うまく動けない・・・


先ほどまでより

人が明らかに増えてる!!!!


どんどんお母さんが遠のいていく・・


お母さん!


そっちはダメ!


お願い!行かないで!!!


みんな頭上を見上げて!!!


もっとよく見て!!!!


見えるでしょ?!


あんな狂気的な空が見えないの???







あんな・・・黒い空を・・・なんで見ようとしないの・・・!





私が立ち尽くしていると・・・ルートが完全に閉鎖されて・・・



私は夢中で・・・・


人並みとは反対の方向へ走り出した・・・・


きっと大丈夫!

お母さんもお父さんもピチも・・

みんなあの町を越えてる・・・!


そう何度も願いながら・・・・


私は

山の中を走る・・・


走り抜ける・・・


足の平が痛い

無数の小石と小枝・・・


チクチクとした痛みの中・・・夢中で足を動かす・・・

お願い・・・・

足・・・

もっと早く動いて・・・!


木々が黒い影を左右に揺らす

私はゆらゆらとした道を

ただひたすら

走り抜ける・・・・・


あの不気味なもののいない空の下へ・・・

私は少しでも

この場を離れないと・・・・


山を登る・・・

木立を登りつめる・・・・・

もう少し・・・・

あと少し・・・・

木々の隙間から・・・・

広がる・・・・







下界・・・・・







上空に目をやると・・・・

ここにはあの不気味な黒い影はなくて・・

いつもの静かな夜空が広がっている・・・・


私はその場に崩れるように座りこむと・・・

そのまま下を向いた・・・・






私はもう一度・・・・

祈りながら・・・







体中を震えが襲う・・・

それを押さえ込むように

自分自身を抱きしめる・・・






お願い・・・幻でありますように・・・見間違いで・・・






・・・ありますように・・・・・








一呼吸・・・息を呑み・・・あの町の上空に・・・・目をやると・・・


やっぱり・・・・ある・・・・・!


あの無数の敵機が町の上空全体を覆っている!









次の瞬間・・・・・・・・








白い閃光・・・・・・




目をとっさに覆う・・・・



あまりの音の大きさに音を失う世界・・・・





そして・・・・




風が吹き上がる・・・・



私の体が一瞬浮くような・・・・感覚・・・・




目を静かに開けると・・・・・



なにもない・・・・




すべてが



すべてが・・・・跡形もなく無に変わる世界・・・・・




きらきらとした白い粒子が

先ほどまで真っ暗だった空を覆う・・・・・


夜に突然現れた昼間のような

明るさが・・・・


私の心をすべて・・・・無に染めようとするかのように

流れ込み・・・・


わたしは・・その白さの中・・・


何も考えられず・・・何もできず・・・・

そのまま・・・記憶が遠のくのを感じた・・・・・









気がつくと・・・冷たい石畳の感触と激痛を感じた


あたりが薄暗く・・・どこだろう・・・?


ゆっくりと見渡す・・・余裕もなく

髪を引っ張られる。。。。

『さあ!起きろ!こっちに来るんだ!』

荒々しい男の声・・・

私は体を何とか起こすと。。。。

背中に冷たい感触・・・


『さっさと歩け!』

私は薄暗いこの場所が牢屋だということに気がついた。。。


背中に突きつけられた銃口・・・

私は妙に落ち着いていた・・・・・


薄暗い牢屋が立ち並ぶ場所から・・・階段を上ると・・・

眩しさに目を覆う・・・

一変して小奇麗な部屋が並んでいる・・・・

その中で私だけが不釣合いなほど・・・薄汚れている・・・・


大きな部屋の扉の前まで行くと、男は・・・・一瞬身なりを整え・・・

私の背中の銃口が外される・・・!


私は夢中で走り出した・・・!


逃げ切れるとは思わない!

でも・・・

走り出さずにはいられなかった・・・・!


何かを抵抗したかった

なにか・・・

思い通りにさせたくなくて・・・・


でも・・・・すぐ私は捕まって・・・・


大きな扉の部屋の中に押し込まれた。


初老の男が私に声をかける

『名前と年は?』

答えたくなかった・・・でも・・・背中に冷たい感触・・・




『ミリ・・・・10歳・・・・』




初老の男は私をまじまじと見ると・・

『10歳か・・・・強制労働の収容所・・・あの星の・・

精神力が強そうだからこの子ならやっていけるんじゃないのか?』


どうやら私は軍事裁判にかけられていたらしい・・・・


男は

『ですが・・今の逃走行為・・年・・女ということを考えると

処刑するのが・・・』

そう言った。。。


処刑・・・・?


初老の男は

『いや・・・ほとんどの人間はここに来ると錯乱状態に陥る・・・だが・・

この子は妙に落ち着いている・・この子は使えるよ』



私は惑星ヒュースの強制就労所へ移送されることになった・・・・



私はこのとき生かされたことを

幸福なことだとは思っていない・・・・


だって・・・・


今ある現状は・・・・


今・・・・ここで暮らし始めて2年・・・・

ここで生きることがどんなに過酷か

たたきつけられるように理解していったから・・・


一日の気温差40度・・・・

そこで私は・・・・

新しい街の建設のため

田を耕し、木を育てる・・・


炎天下のなか・・・・

水はこの星では貴重品

喉を潤せるほどに飲めることはなく・・・・

ただひたすら働き続ける・・・

食事は1日おき・・・・

レトロな粉末宇宙食・・・

それを水に溶かず

そのまま飲み込む・・・

喉に張り付いていく感触・・・

なかなか慣れない。。。

それでも・・・

そんな食事でも1日が過ぎると

欲しくてたまらなくなる


鞭に打たれながら。。。

ひたすら働いた後には・・・


冷たすぎる夜。。。。


氷点下になる夜に震えながら眠りにつく・・・


いつまで続くのだろう・・・・

こんな日が・・・・


1年で半数の人間が死に至り・・・

2年目には一割ほどの人間しか残らないこの場所で・・・


私はいつまでい続けるのだろう・・・・


でも!私は!負けない!


絶対!お父さんとお母さん。ピチがどこかにいるはずだから・・・

私はここから出て探し当てるんだ!


絶対ここを出る!!!


でも・・・・・それは100パーセントありえない・・・・

この星が丸々・・・強制就労所になっている以上・・・

星から飛び立たない限り・・・・私はこの世界から抜け出ることはできない・・・


私はこの施設から抜け出ることを・・

とりあえず抜け出ることを

ひたすら考えていた・・・





[二]へ続く・・・・・



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