表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

二節 河から化け猫

2話目ぶち込み~。評価とコメント、感想待ってます!

 蓮華が雄也の学校に転入してきて1週間、当の本人も少しずつだが人間の常識を理解し始めていた。


「いいかい、くれぐれも妖怪としての本性を出しちゃいけないよ。わかってるね?それと、ボクと話す時は敬語なんて使わなくていい。使われるとぎこちなくて仕方ないんだ」


「は、・・・うん、わかった」


蓮華は案外呑み込みが早かった。その早さに雄也も少し驚いていた。さっき雄也が本性を出すなと言ったのには、ちゃんとした理由わけがある。それは昨日の晩のこと・・・。


『今日はチゲ鍋よ~』


『『いっただきま~す!』』『いただきます』


昨日の晩御飯のチゲ鍋、それが全ての元凶だった。


『こほっ、こほっ・・げふんげふん!』


なんと蓮華は、誤って右手から火を出して机を鍋ごと燃やしてしまったのだ。この時十三端家は、妖怪の凄さを痛感させられたのだった。


「よーし、今日も張り切って行ってみよー!」


蓮華は上機嫌だった。昔は友達と呼べる者がいなかったせいか、クラスメイトの存在は彼女にとって新鮮なものだった。


「もうお昼だね、一緒に食べよ」


お昼になると必ずと言っていいぐらい、蓮華は雄也と弁当を食べていた。しかも時代が違うハズの蓮華が、弁当を作っちゃっているのだ。その後は普通に授業を受け、放課後になった。


「ふ~、学校終わった。帰ろう蓮華」


「うん♪」


ムニィ♪


雄也は顔が赤くなった。いくら妖怪の女とはいえ、くっついて歩くのは恥ずかしかった。しかし蓮華は雄也のその気持ちも知る由もなく、さらにくっついてきた。その光景はもう、『地元の名カップル』と街中から持て囃された。


「も、もう家だよ。離れてくれよ」


「いいじゃない、中に入ったら離すわよ♪」


家の中に入ったら入ったで、『爆裂妖怪抱擁絞殺ばくれつようかいハグクラッシュ』が炸裂してしまう始末なのだ。幸か不幸か、自分にはわからない状況に雄也がいるのは間違いない。


「あ、ニュースだ」


『次のニュースは、連続怪死事件の続報です。今日未明、江佐間広大えさまこうだいさん26歳が荒川の河川敷で白骨体となって見つかりました。傍には他の事件同様、大量の猫の毛が落ちていたのことです』


「猫の毛?と言えば化け猫、化け猫の代表格は猫又だよね」


雄也は妖怪ファンの血が騒ぐのか、部屋中を跳ね回っていた。


「雄也、『荒川の大黒猫』って知ってる?」


「え、そんなの聞いたことないけど・・・」


雄也は妖怪ファン故に、様々な妖怪の伝承を知っていた。が、本物の妖怪の知識には敵わなかった。


「昔ね、荒川にたいそう猫嫌いな地主が住んでたの。猫を見かけたら銃を放って殺しちゃうくらいのトンデモな男が。でも反対に息子は、猫が大好きだった。息子は一匹の黒猫を地主に黙って買っていたんだけど、ふとしたことでそれがバレて猫は殺されてしまった。息子は地主の掟?みたいなもので山奥の空き家に追いやられて死んでしまったの。そして息子の死後、地主の家では夜な夜な猫の鳴き声が聞こえるようになってどうもそれが、奥さんの部屋からだったみたいなの。地主が部屋を覗くと、そこには奥さんの着物を着ている殺したハズの黒猫だった!奥さんは黒猫に食われて体を盗られたのよ、無論その夜地主も黒猫に頭から食われてしまった・・・。これが『荒川の大黒猫』よ」


追加すると、その後も大黒猫は猫を嫌う者たちだけ食らった。あくる日、屈強な僧兵の集団が訪れて大黒猫を退治してしまったとされている。


「猫って怖いな、不幸を呼ぶとか言われてるし。人間も怖いけど」


雄也は猫よりも、猫を被った人間の方が怖いと感じた。


「んしょっと、猫又退治行きますか。マタタビ携え、いざ出陣!」


 雄也と蓮華は、猫又の出没地の荒川まで行った。もう夜の8時を過ぎたが、二人とも高校生だ。両親は無事に帰ってこいよと、二人に手を振り見送った。


「猫又ってどんだけ強いの?」


「猫又は比較的、そんなに強い妖怪じゃない。でも猫又の吐く息には気をつけて」


息に気をつけろってどういうことだ、と雄也は思いながら河川敷でじっと待っていた。そして2時間以上待った頃だろうか、急に猫たちがざわめき始めた。猫又が現れる合図だ!


「ぐにゃぁああっ!」


「出たな、ボクのマタタビ木刀受けてみろっ!」


バチイイィン!


妖怪と言えど、猫。マタタビ塗りたくりの木刀に叩き落された。蓮華もすかさず斬りかかろうとするが、雄也に止められた。


「初めてのVSたい妖怪、ボク一人で十分さ」


「甘いな青二才が!これでも喰らえぃ」


ブワアアッ


猫又がムクリと立ち上がり、雄也に息を思い切り吹き掛ける。息を全身に浴びた雄也は、なんと鼠の姿にされてしまった。こうなると敵は猫又だけではない、その周りにいる猫たちも敵となってしまうのであった。


「「ニニャ~~~!!」」


「ゴメン蓮華、キミの言うとおりだったよ!後でちゃんと謝るから、早く猫又を倒すんだ!!」


蓮華は猫から逃げる雄也の言葉をしかと受け止めた後、腰から刀を抜いた。


「雄也のため、オマエをこの場で鎮める!」


「んにゃ?妖刀かよ、ほんじゃオレ様も」


蓮華の妖刀は堂々とした日本刀だが、猫又の妖刀は刀と言うより鎌に近い。蓮華VS猫又の刃を交えた闘いが始まった。


「にゅおう!」


ザブンッ


猫又は河に叩きつけられた。単純な力比べや技術など、その他もろもろ全て蓮華が上回っていた。が、それは猫又の策略だった。


「お助け~~~」


雄也は必死で逃げ回っている、一刻も早く元の姿に戻すため蓮華は速攻をかけた。


「うおおおおっ!」


「その刀は火の御剣、水には何の役にも・・・」


猫又の策略はこうだ。蓮華を河の中心に誘い込み、刀の力を封じて弄る。極めて単純だが恐ろしい策略だった。が、刀の火は消えるどころかますます強くなったのだ。


「こんな水ごときで、ワタシの闘志が消せると思ったかあああっっっ!!!」


ズバァアアアアアアッ・・・・・・・・


「ぐにゅおぁあああっ!悲劇の火天女族めぇ~~・・・・・」


猫又は耳を塞ぎたくなるような断末魔を上げて、死んだ。


「すごいよ蓮華、猫又退治したんだね!・・・さっきは勝手に進んで、敵の攻撃に簡単に引っかかってキミに迷惑かけた。本当にごめんなさい」


元に戻った雄也は、蓮華に謝罪と感謝の念を込めて深々と頭を下げた。

 二人が家に帰った時は、既に深夜1時を超えていた。両親はもう眠ってしまったようだ。蓮華がついでだからと、自分の妖刀について話した。


「ワタシのこの妖刀、白火花しらひばなは母さんが死ぬ直前に残してくれた物なんだ。さっき火が河の水に触れても消えなかったのは、ワタシの闘志が消えなかったから。この刀の火はワタシの闘志の大きさに比例して、どんどん大きく、強くなっていくの。あれだけ強い火を放ったのは、ご先祖様を周りの妖怪狩りの連中から守った時以来だよ」


雄也はそれを聞いて、顔がポッと赤くなった。それを見て蓮華は笑いながら言った。


「別に雄也が好きなわけじゃないよ、多分雄也じゃなくても助けたよワタシ。人間と妖怪、生まれは違えどもこの大地で育ったのには変わりない。ご先祖様がいつも言っていた言葉だよ」


雄也は深く息をし、その通りだと呟いた後深い眠りについた。

本日の妖怪

猫又...化け猫代表と言っていいほど有名な妖怪。永く年を生きた猫が化け、黒猫が最強と言われる。超能力を使え、人を病気にしたり殺すことができる。伝承では一晩に7,8人食い殺した猫又もいるとある。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ