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一節 棚から大明神

初めてなものでどう評価してもらえるか、実際ドキドキしております。妖怪は自分のオリジナルやお馴染みのもいっぱい出るので、読みやすいと思います。設定は大半オリジナルでガンガン突っ走ります!

 今、日本は世界的景気悪化に伴い就職氷河期なんて言われる、不景気のド真ん中を突っ走っている。しかしそんな中、不景気なんてもろともしない素晴らしい会社が存在した。東京都三鷹市新川4-44-4にある、『喪乃黒製鉄所ものくろせいてつじょ』である。


「雄也、電話取って。多分お得意様だと思うから」


「ほ~い」


この電話を取った少年は十三端雄也とみはじゆうや、地元の進学校に通う少し変わった高校1年生だ。変わっているところはどこかって?見ればわかるさ。


「最近いろんな妖怪モノがあるけど、やっぱ鬼太郎だよな。これぞ妖怪を世に知らしめた名作って感じするしな~。今度DVD買ってこよう、そうしよう」


そう、彼は大の妖怪ファンなのだ。昔から鬼太郎を見ていて、鬼太郎みたいなかっこいい男になりたいとずっと憧れ続けていた。様々なスポーツのパフォーマンスをトップレベルまで練り上げ、剣道に至っては世界大会にまで出場したスポ根野郎である。


「あっ、道場行かないと!今日からボクが師範代やるんだった!」


雄也の通う道場は、父の武勇ぶゆうが師範をしている。歳には敵わず、雄也が跡を継ぐことになっていた。父も剣道で世界大会に出た実力者だ。

「え~、今日から父に変わって師範代をする十三端雄也です。稽古は以前より厳しく、充実してやっていこうと思いますので皆さん、そこのところは覚悟してください」


早速新しい師範代の稽古が始まった。開始5分もしないうちに檄が飛び、弟子たちは早くも息が上がってしまったようだ。


「「師範代、や・・休ませてください~」」


「アンタらそれでも、父の弟子かあぁ!」


 稽古も無事終えて、雄也は家路に着こうとしていた。


「今日も稽古がんばったよ、帰ったら飯食って寝るか」


20分程経ち、雄也は家に着き和室でゴロンと横になった。その和室にテレビはなく、あるのは古びた戸棚だけだった。


「これ何年前に買ったんだ?父さんは20年以上前って言ってたけど」


雄也は無性に戸棚を開けたくなった。今まで中身を見たことがなく、いつも鍵がかけられていた。


「お、今日は開いてる」


雄也は戸棚から、小さな真珠みたいな物を出した。色は白く、ビニールに包まれているその珠の秘密を何としても知りたくなった。


カッ


「うわっ、何だ!?」


なんと珠が眩いばかりの光を放ち、パリンと砕けた。その珠のあった所には、一人の女が立っていた。


「やっと出られた、主も余計なことをしたものです」


雄也はあんぐりと口を開けていた。その容姿の端麗さもさながら、体から神々しいオーラをこれでもかと放っているのだ。


「アナタが主の子孫にあたる、雄也様ですね?ワタシは浅草守恩神あさくさもおんのかみ、違う違う。蓮華れんかと申します」


「は、はぁ」


雄也は戸惑いながら薄っぺらい返事をした。雄也は、どうして出てきたのかを聞いてみた。


「それはこの西暦2011年、この年が妖怪がもっとも凶暴に活発に動き回る年なのです」


「でもボクが開けなかったら、キミ出られなかったんじゃ・・・」


神様沈黙。それを見た雄也は笑いながら言った。


「イヤイヤ、ボクは数奇な運命の持ち主だね。大好きな妖怪が実在してるなんて驚きだし、棚から神様が出てくるんだもん。他にはいないよ絶対♪」


蓮華は雄也の様子を見てホッとした。もっと驚かれて追い出されるのかと思いきや、妖怪に巡りあえたと大喜びされているのだから。


「ねぇ、その腰の長いの何だい?」


雄也は、蓮華の腰に巻きつけられた筒状の物を指差した。


「これは妖刀です。妖怪は力が大なり小なり、必ず妖刀を身につけています。ワタシは妖怪『火天女ひてんにょ』、お裟女さめの娘です。母はご先祖様の世話役をしておりました」


「へ~、妖怪好きには新説だね。妖怪の新事実がわかっちゃったよ」


雄也は家族にも紹介しようと、蓮華を強引に居間へ連れて行った。


「今日からこの家に居候する、大明神蓮華様で~す!」


「おお~、ナイスボディの神様だ、かはっ・・・」


武勇の汚い発言を母の常子つねこが粛正した。蓮華は予想外の歓迎ぶりに、目から大粒の涙を流した。


「よ、よろ、よろしくお願いいたします」


常子は電話を取り、どこかへ電話した。


「もしもし、十三端ですが」


 翌朝、雄也は颯爽と学校へ走った。周りの女子からガンバレコールを浴び、男子からは死ね死ねコールを浴びた。


「今日は転校生が来ています、入りなさい」


「はい」


雄也は過剰に反応した、否、反応せざるを得なかった。何故ならその転校生というのが・・・。


「本日付けでこの学校に転入しました、三島谷蓮華みしまやれんかです。皆さんどうぞよろしくお願いいたします」


「母さん、電話してたのこの学校だったのか・・・」


男子は既に釘付けにされていた。雄也もそのうちの一人だった。そして、蓮華は雄也の隣の席へ座ったのだった。


「よろしくね♪」


雄也はテンションMAX、その陽気な笑顔に蓮華もつられて笑った。さてさて、この先どのような学校生活が始まるのか。それは次回のお楽しみに。

本日の妖怪

火天女...無実の罪を犯した男の妻が自害し、その恨みが人の形を象って生まれた妖怪。容姿端麗だが、男を見境無く火で焼き殺し食ってしまう。稀に恋愛成就の神様として祀られていることもある。

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