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第6話 カミカゼとオウカⅡ

 雲が高い冬の青い空。

 地球本部施設前に解放された大公園に様様な人人が集まり、それぞれの目的のまま、流れていく穏やかな時間を過ごしていた。

 勿論、ここは電脳空間ではない。

 風が冷たいリアルだった。

 戦闘で傷ついた外装を新しい物に取り換えたカミカゼは、せがまれるまま、厚着で群がるカラフルなマスクの子供達にサインを描き、渡している。

 オウカは観光客の動画の撮影に喜んで応じ、踊り、ポーズをとっていた。家族連れやカップルも多かったが、オタクらしき男女も少なくない。

「いやー。平和で結構」

「だから、何で納豆クレープ食べてんのかなぁ、このマクティガルは」

 リアルでもコーヒーゼリー納豆クレープを食べているマクティガルに、オウカは嫌味な口を利く。

「だって好きになっちゃったんだもん。しようがないじゃない」

「リアルでこんな物があったなんてねー……」

 オウカは意外そうに、表情が読みづらいロボットフェイスで嫌な顔をする。

「オウカちゃんに意外な美味品をリアルで体験して、経験値を詰んでほしいわ。クサヤとかブルーチーズとか、シュールストレミングとか」

「マクティガル、もしかして美少女に臭い物かがせフェチ? そんなのリアルじゃなくて電脳情報でいいわ」

「リアルもデータも変わらないよ」

「匂いが外装や記憶に染みつきそうなのよ!」

 二〇四六年・十二月。

 地球のほとんどのAIが参加した大ワクチンプロジェクトは、とうとうCOVID-19Ω株の最終抗体を作る事に成功した。

 地球に残る八基のメガストラクチャは大病院船としての機能はそのままで、冷凍睡眠させていた患者達をよみがえらせ、最終抗体を投与。全員がΩ株に対する抗体を獲得する事が出来た。

 人類はΩ株に対する勝利宣言を全地球に発表した。

 勝者は大病院船を降りた。

 解体されたAVCの元構成員達にワクチンや政治に関する誤った認識を改める脱洗脳処置と共に抗体投与が進められ、二〇四八年には人類の九八%がCOVID-19Ω株の抗体を得た。それ以上の新株の出現は見られなかった。恐らく元AVCで後遺症に苦しむ者も多いだろうが、それはこれからの課題だ。

 大病院連合とAVCは統合され、世界を統一した国家は、国名を『地球』とあらためた。

 この戦争の犠牲者は多すぎた。原始社会でさえAIを必要とするほど、人類のAI依存は高まるを得なかった。

 人類とAIは文明の両輪となった。

 そして兵器としてのAIも。

 カミカゼも、オウカも、一人も敵を殺さず、戦争を終わらせ、人類滅亡を食い止めた英雄となった。

 カミカゼも、オウカも、地球人類がその名を聞いて第一に連想するのは皆、このロボット兄妹の名になっていた。

 春の季節は近く、さわやかな風の匂いが近づいていた。

 マクティガルは歩きながら、久しぶりに配信再開されたアニメ『サザエさん』をタブレットで観て笑った。

 マスクを着けていないサザエさんは久しぶりだった。

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