表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近衛戦記  作者: 犬大好き


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

オレンジノート

俺は今日も訓練をしていた。

そうすると毅さんが俺を呼んだ。

「蒼紫君……希典君が君のことを呼んでいた。今日はもう訓練を切り上げていい。あと集合場所はホーク合衆国大使館だそうだ」

俺は昨日もらった「ホーク合衆国との提携強化」についての話だと思った。

深々と頭を下げ、

「ありがとうございます、毅さん」

と言った。

俺はすぐにホーク合衆国大使館へと向かった。

ホーク合衆国大使館は東中にあり、割と時間がかかってしまった。

そして俺がホーク合衆国大使館に着いた時には、日が傾き、寒くなっていた。

入口には希典さんが待っていた。

希典さんは大きく手を振り、

「蒼紫君、ここだよ」

と言っていた。

そして俺は希典さんと共に、大使館内に入った。

大使館に入る前に、希典さんは俺にとある紙を渡した。

「これをホーク合衆国の外交官に渡して」

と言われた。

……というか、俺はなぜただの飛行士なのに、こんな外交の場に呼ばれたのだろうか?

そんなことを思っていると、希典さんが俺に対して言った。

「蒼紫君、なんで君がここに来れたか……みたいなこと考えてない?」

言われた俺は、希典さんはエスパーなのかと思った。

「はい、なんで私のようなただの飛行士がここに来れたんですか?」

そう聞くと、希典さんは堂々と、

「私のコネだ」

と言った。

凄く堂々と言っていて、清々しいまであった。

「まぁ、コネじゃないと来れないですよね……」

「ああ、だけど君はあくまで書記だ」

「書記なんですか?! 初耳なんですけど……」

俺は、書記をするだなんて一言も聞いていなかった。

すると希典さんは、また堂々と、

「そりゃ伝えたのは今日だからな」

と言った。

「は?」

思わず口からこぼれてしまった。

まあ、この任務のことは知っていた。

頑張ろう。そう思った。

そして会談の時間になった。

ホーク合衆国の外交官が入ってくる中、俺は見覚えのある人物を見つけた。

見た瞬間、背筋がわずかに冷えた。

彼の名は神代武尊。

帝国派のトップであり、内大臣を務めている人物だ。

彼が今回の日旭側の代表だろう。

俺はそう思っていた。

その後も続々と人が入ってくる。

その中のとある人物に、俺は違和感を抱いた。

この会談の通訳をする人物らしいが、見た目が明らかに、この世界の人ではないような服装をしていた。

俺は希典さんに、その人物の名前を聞いた。

「彼は藤谷蓮さんという人で、舩坂さんと仲が良かった。私も一度会ったことがあるけど、とても頭がいい人だったよ。まあ舩坂さんの冗談かもしれないけど、彼は別世界から来たらしい」

その言葉を聞いた瞬間、点と点が繋がり、線になった。

俺が持っている異世界辞書――

それは彼、藤谷蓮さんが書いたものだと直感した。

ということは、彼はこちらの世界で一番信用している人に、この本を渡したということだ。

……つまり、誠さんを一番信用している。

なら、彼は誠さんと同じ考えを持っているかもしれない。

この会談が終わったあと、話してみよう。

そう考えていると、ついに会談が始まった。

俺は正直、まだ何についての会談か知らなかった。

だが議題を見て、驚いた。

「オレンジノートについて」

それは、とても重要なものだった。

現在ホーク合衆国は、日旭帝国に対してオレンジノートという条件を提示している。

最近ホーク合衆国は本格的に大日旭帝国へ敵対的な姿勢を取り、ついに魔石の輸出量を削減すると決定した。

オレンジノートの内容

一条 ゲールマン第二帝国との同盟の破棄

二条 政治体制を民主主義に移行する

この二つである。

ゲールマン第二帝国は七大国の一角であり、大日旭帝国と同盟を結んでいる。

だがそれは利害関係の一致によるもので、より好条件があれば、すぐに寝返る可能性のある不安定な同盟だった。

最初に言葉を発したのは、神代武尊だった。

「我々は、とある案を提示します」

そう言った瞬間、会場は一瞬静まり返った。

軍内部で議論されていた案――

「三本の矢」。

オレンジノートへの返答と、もう一つの条件を含んだ案である。

一条 ゲールマン第二帝国との同盟の位を下げ、準同盟国とする

二条 議会を設置する。ただし議会は軍が統治する

三条 魔石の輸出量を元に戻す

だが外交官は激怒した。

何を言っているのかは分からないが、とにかく怒っている。

藤谷蓮が翻訳する。

「何を言っているんだ! 議会が統治する軍だなんて、それは真なる民主主義とは程遠いじゃないか……とのことです」

その瞬間、空気が一気に凍りついた。

お互いがお互いの意見を通そうとする。

議論は平行線を辿っていた。

俺は、以前本で聞いた言葉を思い出した。

「会議は踊る、されど進まず」

――まさに、この状況そのものだった。

そして会談は終わった。

何の進展もなかった。

だが俺は、希典さんに言われた通り、ホーク合衆国の外交官に紙を渡した。

外交官は紙を読んだ瞬間、俺を別室へ案内した。

別室には、通訳である藤谷蓮しかいなかった。

「こんにちは、藤谷さん。私の名前は近衛蒼紫です。よろしくお願いします」

そう言って、相手の目を見た。

「よろしくお願いします。なぜ私の名前を?」

疑問げに聞かれ、俺は正直に希典さんから聞いたと答えた。

すると藤谷さんは、

「あなたが舩坂さんの意思を継いだ日本人ですね!」

と、興奮気味に言った。

日本を知っている――

それは彼が日本人である、何よりの証拠だった。

蓮さんは、日本で学校の先生をしていたらしい。

俺たちは、また改めて話す約束をした。

正直、外交官よりも蓮さんの方が気になっていた。

残りの目標は一つ。

ホーク合衆国との提携強化。

なら、俺はここに尽力する必要がある。

俺は外交官と向き合い、互いに自己紹介をした。

「私はホーク合衆国の外交官、ハンス・ルーデンだ。よろしく」

「私は京魔第一飛行場の飛行士、近衛蒼紫です。よろしくお願いします」

「あなたが、舩坂さんの代わりに民主主義前線のトップとなった蒼紫さんですね」

「はい!」

大きな声で返事をすると、ルーデンさんは穏やかで、しかし堂々とした口調で語り始めた。

「以前、私は誠さんと『平和な社会』について話しました。彼はこう言ったのです。

『平和な社会を築くには、一人一人の協力が必要だ。だが、それを妨害するものがあるなら、全て私が壊す。その対象が、今のこの大日旭帝国だ』と」

「私は彼の考えに賛同しました。だから民主主義前線への支援を決めていた。だが……彼は今、刑務所にいる。だから支援を伝えられなかった。だからこそ、あなたに伝えたかったのです」

俺は、これまで多くの人と関わってきた。

その度に、誠さんの凄さを痛感する。

俺は誠さんの代わりに……

いや、誠さんを超える人間になりたい。

「分かりました。ルーデンさん、ありがとうございます!」

こうして我々民主主義前線は、ホーク合衆国の支援を受けられることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ