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ENDEAST:転生ドロイドの記憶《キルログ》  作者: 桜乃孤坐
第1章 自由の残響:転生篇

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LOG.07 グランドセントラル

「何者だ?なぜ、E4ドロイドを連れている?」


デニムのシャツを身につけ、

無精髭を生やした30歳くらいの男だ。

あの拳銃、警察官なのか?


[×HOSTILE:前方に5名の人間]


まずいな。

ゾロゾロ仲間がやってきて、今にも引き金を引きそうだ。


「そのドロイドはなんだ?答えろ!!」


どうする?

何か喋るべきか?


[×WARNING:射撃の危険性あり]


銃口が目と鼻の先まで来てるんだ。

そんなこと言われなくてもわかってる。


「そいつは、ハッキングしたの。

 なんでもいうことを聞く。

 ————ただの荷物持ちよ」


ルナがまっすぐな声で言った。


「ハッキングだと?

 知るか、こいつの同類が何をしたのか分かってるのか?」


[×WARNING:敵対心が強まった模様]


だから、分かってるって!

くっそ。

どうすれば…


「お前たちは、ボストンの生き残りか?」


次に声を上げたのはジョシュだった。


「だったらなんだ?」


「やっぱりか…。

 俺たちはリバプールからここまで来た。

 あんたらの救援信号を聞きつけて」


「どう証明する?」


ジョシュはコートの内ポケットに手を入れ、ジャラリと何かを取り出した。

それは、10枚ほどの古びたコインだった。

いや、ただの硬貨じゃない。

穴が開けられ、鎖に通されている。


「これは、ここに来るまでに死んだ仲間のものだ。

 お前は、こいつらの死を、海を渡った決意を、無駄にする気か?」


警察官はそのコインをじっと見つめた。

錆びつき、血に汚れ、そこには鳥の紋章と、

死んだ戦士の名前が彫り刻まれていた。


「…お前ら!銃を下ろせ!」


[×HOSTILE:検知なし]


どうやら助かったようだ。

警察官の男は床に転がったコインを1枚拾い、

コインについた汚れを指で拭った。

 

「クリス!そこの少年に何か食べさせてやれ」

 

「了解、ベン」


タンクトップを着た、茶髪で短髪の女がそう返事すると、

カルをターミナルの方に連れて行った。


「さっきは失礼した」


警察官はコインをジョシュに渡した。


「いや、俺も人のこと言えないからな」


全くだよ。

俺もさっき殺されかけたところだ。


「俺は、ベンジャミン・クリセントだ。

 ベンとでも呼んでくれ」


「ジョシュだ」


「明るい場所で話そう」


明るい場所とは、

グランド・セントラル・ターミナルだ。

高い吹き抜けの天井には星座が描かれている。

3の巨大なガラスのほとんどが破られ、

瓦礫の山がバリケードを築いている。

4面時計の周りで人が集まっている。


奥から妊婦の金髪の女性がベンと顔を合わせ、何か合図を送ると、ルナと会話をし始めた。

何を話しているのかはわからないが、実に微笑ましい。


[×ANALYSIS:24名の人間]


「生き残ったのはこれだけか?」


「いや、直通ビルの方に怪我人含めて1000人ほど」


「1000人だと…?どうやってここまで」


「奴らにも知られていない秘密の地下通路を見つけた。

 おそらく国のお偉いさんが作ったものだろう。

 サウス駅からここまで安全に移動できた」


「なるほど」


「それで、問題なのだが…」


ジョシュとベンが小難しい話をしている中、

俺は天井に描かれた星座に目を奪われていた。


[×LOCATION:メインコンコースの天井(高さ約38メートル)]


[×COLOR:鮮やかな地中海の空のセルリアンブルーを背景に、2500個の金箔の星が描かれています]


[×PAINT:黄道十二宮(12星座)のうちの8つ(おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、おとめ座、てんびん座、うお座)に加え、オリオン座、ペガサス座などが描かれています]


すごいな。

あれ?

でもこの星座、逆?


[×RESULT:神の視点(宇宙の外側から地球を見下ろした視点)で描いたため]


なるほど。

そういう意図が…


[×REAL:原画を渡された画家が、

床に置いて作業する際に向きを間違えただけという説が有力]


舐めんな!

ただのミスじゃねえか。


「おい、そこの青年。君だ。おーい。君だよ君」


え、俺のこと?


「そうだ。君だ。こっちに来い」


お坊さんが声をかけてきた。

黒い法衣と橙色の袈裟、右手に錫杖を持っている。

禿げてるし、お坊さんだよな。

なんでお坊さん?

っていうか今、俺の思考読んだよな。

 

「あの、なんで青年って」


「私の目にはそう見える」


よく見ると瞳孔がない。

盲目のようだが。


「お主、迷いがあるな」


「こいつの言うことは聞くな!」


今度は誰だ?

黒い中折れ帽子に、黒いコート。

おまけに長髪に髭面。

絵に描いたようなノワールだな。

汚れたタオルで手入れしているのはスナイパーライフルか?


「ビクター!お前は黙っておれ!」


「似非僧侶のくせに、カッコつけてんじゃねえ」

 

「お前こそその黒い金棒は飾りか?煩悩まみれめ」


「ああ?」


あーあー、これまたキャラが濃いこと。

今にも殴り合いが始まりそうだ。


「おい!こっちに来い!」


ナイスタイミング。

ジョシュに呼ばれたから、行かないと。


「またな、青年」


ジョシュのところに駆け寄ると、

二人でルナがいるところに向かった。


「エミリー!案内してやってくれ」


「分かったわ、ベン。あなたも無理しないでね」


仲睦まじい夫婦だ。

全く、羨ましい。


「カルはどこいった?」


「とっくに上に上がったわよ」

 

グランドセントラル直通。

4本の横並びのエスカレーターを登った先にある巨大ビル。

ガラス張りのエントランスの上部には、

『ARKWRIGHT HILLS』とだけ書かれている。


「どうしたの?」


ルナがどこか耽った様子だその文字を見ていた。


「なんでもない。行こう」


そういって中に入った。

床には少しだけガラスが散らばっていたが、

今まで入ったどんな廃墟よりも綺麗だった。


[×ANALYSIS:強化されたハーフガラス]

[×SEARCH:外部からの迎撃による破損の恐れなし]


「9階のオフィスが空いているはず。

 エレベーターは動かないから非常階段で行くわよ」


ルナは手摺にもたれながら登るエミリーを気遣いながら、階段を登った。


9階まで来て案内されたのは、

机や椅子が片付けられたオフィスルームの一室だった。

こんな場所で休めるのかどうか疑問に思ったが、

ここに来るまでに大勢の怪我人が地面で倒れたように寝伏せっているのを見た。

文句は言えまい。


「えっと、トイレは出て左の資料室の横、お腹が空いたら3階、シャワーと洗濯は15階、着替えは14階にあるはず。

 それともし仲間に連絡したかったら、かなり大変だけど、59階、屋上のアンテナを使って」


「了解。ありがとう」


「うん。じゃあまたお話ししようね」


エミリーはルナに向かって手を振って、その場を後にした。


「俺は、屋上まで行って本部に報告する」


「マジで?59階まで登るの?」


「それぐらいどうってことない。

 お前たちは休んでおけ。明日は朝5時に出発だ。

 寝坊するなよ」


ジョシュも自分の荷物と持っていた武器を置いて、

再び階段の方へ消えていった。

あの人、本当にタフだな。


「あー!疲れたー!

 もう3日もまともに寝てなかったから、ほんと…」


ルナはオフィスのロングチェアに倒れ込むと、

電池が切れたみたいに即落ちした。

俺はオフィスチェアにかかっていた毛布を手に取ると、

軽く埃を払い除けてから、彼女にかけてやった。


「ねえ、ルナ。

 俺たち、どこかで出逢ってるのかな?」


いいや、そんなわけないか。


さて、俺もスリープモードに入ろうかな。

さっき起きてから6時間経ったけど充電は減っていないものの、

いつ戦闘になるかは分からないからな。


[×SYSTEM:シャットダウン]


 パチッ


  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ジョシュは階段をひたすら駆け上がり、

ようやく59階についた。


 ガチャンッ!


屋上のドアを開けるとさっき見た女——クリスが発信機を使っていた。


ジョシュは最初、彼女が使い終わるのを待とうとしていたが、

クリスがジョシュに気がつくと慌てた様子で通信を切った。


彼女は気まずそうに目を逸らすと、そのまま何も言わず駆け足でその場を立ち去ろうとしたところで、ジョシュが声をかけた。


「カルはどこ行った?」


高層ビルの強い風の音だけが響いた後、彼女が答える。


「3階にいるわ」


「ありがとう。引き止めて悪かったな」


「別に」


そう言い残し、クリスは屋内に入って行った。

彼女が通信していた相手とは……

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