LOG.06 摩天楼は眠らない
———2046年9月6日ニューヨーク州———
ルナ曰く、東海岸には使えそうな船が残っていないらしく、俺たちは船を探しに車に乗ってニュージャージーを目指していた。
「まさか自分の本名を忘れちゃうとはね。傑作だわ」
ルナは呆れたように、けれど楽しげに喉を鳴らした。
にしても、なんで忘れてんだ?
転生の副作用なのか?
あの自称神め、何がしたい。
「笑ってる場合か。これで罠だったらどうする」
「面目ない」
助手席にルナと、運転席にジョシュが、
後部座席には俺とカルという少年が座り、
カルは気まずそうに外を眺めていた。
外はどこを見ても瓦礫瓦礫瓦礫。
にしても異色のメンバーだな。
人種も年齢も、全員バラバラだ。
積もる話もなく、 静まり返ったまま車を走らせ、ハドソン川の側までやって来た。
[×LOCATION:ジョージワシントン橋]
[×ANALYSIS:通行不可]
端が真っ二つに落ちている。
「どうする?迂回する?」
「遠回りになる。日が沈む前に辿り着きたい。街の中を行くぞ」
[×MAPPING:ロード中…成功]
街って、あれのことか。
かつての眠らない街、マンハッタン。
RED roomで見た時よりも随分と緑が多くなっていて、まるで森だ。
立ち並んでいたビルは荒み、
エンパイア・ステートも真っ二つのまま。
ビルの根から蔦が伸び、大きな樹木のようだ。
あれから8年。
実際にその場にいたわけではないが、
どこか奥ゆかしさを感じる。
[×HOSTILE:E2ドロイド8体]
E2?
って確か旧式の…
「左からベータだ!!かがめ!」
銃弾が右から押し寄せる。
車窓は粉々に砕け散り、車が動かなくなった。
タイヤに穴でも開けられたか。
「車から降りろ!」
そこにいたのは、俺とは違う、塗装が剥げ落ち、配線が剥き出しになった旧型のドロイドだった。
武器を持っているのは1体だけで、他は何も持っていない。
だが、その錆びついた体と青い血を垂れ流しながら殺意を向ける姿は、人間にとっての脅威であることを思い出させるのに十分だった。
「右からも来た!挟まれたわよ。どうするジョシュ」
ここは俺が、って武器没収されたんだった。
まあ、エネルギーも残ってないしここは任せよう。
「ルナ!そっちは任せるぞ」
ジョシュは背中の刀を抜いた。
[×ANALYSIS:高周波ブレード]
これ、人間には使いこなせないのでは。
そう思った直後、風で靡いたコートから、脚部に備え付けられた、機械らしきものが目に入った。
[ANALYSIS:不明]
「調べても出ねえぞ。これは俺が作った。人類の発明だ!」
排気音を上げると、青白い光を帯びた刃が、弧を描く。
衝撃波がビルの谷間を突き抜け、ここまで届いた。
[×TARGET:死亡] [×TARGET:死亡] [×TARGET:死亡]
[×TARGET:死亡] [×TARGET:死亡] [×TARGET:死亡]
速い。
とてつもなく速い。
一瞬で8体殺した。
この人、本当に人間なのか?
「ああ、まずい」
ルナが吐露すると、視線の先には奴らがいた。
[×HOSTILE:E2ドロイド36体]
これは、分が悪い。
逃げるしかないか。
って…
「おい!前からも来る!どうすんだ?」
どこか逃げれるところは…
[×ANALYSIS:ロード中…地下鉄の入り口]
「あそこから逃げよう!ついてきて!」
階段を降り、プラットフォームまで走った。
電車は流石に動かないよな。
[×ANALYSIS:NY市地下鉄 R260型車両(旧式)]
[最終稼働ログ:2038年11月4日]
[ステータス:全システム・オフライン]
[接続インターフェース:物理接触により確立]
いけるか?
「追ってきたぞ!何体いるんだ?」
[×HOSTILE:E2ドロイド210体]
は!?
なんでそんなにいんの?
[×SEARCH:第一次全米終末戦争の残党]
幽霊戦士ってこと?
コイツを復旧して逃げないと。
「えっと…しばらく食い止めておいて!」
「は!?ふざけるな!…ったく」
[×WARNING:メイン動力応答なし]
[×WARNING:軌道上の架線電力なし]
[×ERROR:始動できません]
[×ERROR:始動できません]
くっそ。
どこかにエネルギー源があれば…
って俺か…!
[×BATTERY:8%]
なんとかなるか?
[×TARGET:地下鉄制御システム]
[セキュリティ:旧世代暗号化方式(WEP-Gen2)]
[解析時間:0.002秒]
[アクセス権限:管理者権限を取得]
「後ろの車両を切り離して!!」
「カル!任せたぞ!」
[強制始動:成功]
[現在速度:0km/h …… 加速中]
「やったよ!!」
「じゃあ、早く中に!!」
[現在速度:20km/h……30km/h]
奴らの目と口の光が、徐々に暗闇に消えていく。
なんとか追い払ったみたいだ。
「助かった」
「ああ、いや、別に。こちらこそありがとう」
ルナが一瞬クスッと笑って悪戯げに言った。
「全く。この人素直じゃないの。これでも感謝してるみたいだから」
「いいよ、伝わってる」
カルも何かいいたげな顔をしているが、結局何も言わないまま…
[×WARNING:前方、瓦礫により通行不可]
[×BATTERY:8%]
変わらずか。
昨日は一瞬で尽きてしまったのにな。
デタラメな戦い方しなければ、普通に持続できたのかもしれない。
さっきのE2が8年間動いているのが、何よりの証拠だ。
「ここで降りて道を探そう!」
[×ANALYSIS:警備用通路]
ここから出れそうだな。
ジョシュがドアの前に立つとルナと顔を見合わせる。
「行くぞ」
暗いな。
俺は見えるけど。
そのまま一本道を進んで、ようやく出口に辿り着いた。
ここも、地下鉄のプラットフォームみたいだけど、比較的新しい。
壁に何か書いてあるな。
[×ANALYSIS:グランド・セントラル]
「そこを動くな!武器を置け!」
今の声、ジョシュじゃない。
後ろを振り向くと、一人の人間がジョシュの頭に銀色の銃を突きつけた。
[×ANALYSIS:S&W 4046]
[×SAERCH:マサチューセッツ州警察の正式採用拳銃]
マサチューセッツってもしかして…
ボストンの生き残りか?
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