LOG.17 いってらっしゃい
[×WARNING:カミラ・マクレーンの斬撃]
ギャリィィッ!!
やばいやばいやばい。
絶対怒らせちゃいけない人を怒らせてしまった。
カン!カン!
赤い斬撃が視界を覆い尽くす。
が、昨日のトウモロコシ畑とは違って空間を広く使えるからな。
これぐらいならまだ、なんとか対応できる。
それでも、防戦一方なことには変わりないのだけれど。
「逃げるなよ!B26!!」
ずっと思ってたけどB26ってなんだよ。
それより今何時だ?
[×TIME:5時53分]
後もうちょっとだ。
ルナたちは無事に脱出したか?
[×WARNING:右からロケットランチャー]
ロケットランチャー!?
嘘だろ、避けきれない!
ド ッ カ ァ ア ン !!
赤い爆炎に吹き飛ばされ、俺は無様に地面を転がった。
視界が歪む。
再び中央塔の屋上だ。
「ノア!」
この声は……ルナか?
顔を上げると、そこには絶望的な光景があった。
「やはり、計算通りだな」
赤い装甲の死神が、ベンを足元に踏みつけ、ルナの腕を掴み上げている。
[×ANALYSIS:ルナ、ベン、エミリーを確認]
[×STATUS:拘束]
インペリウムのスーツを脱ぎ、元の服装を着ている。
そして武器を持っていない。
くっそ、捕まったのか。
[×HOSTILE:E-RED]
「邪魔するな候補生!
B26は私一人で十分だ」
カミラも爆風を切り裂いて屋上に登ってきた。
その目は血走っている。
「……その左手、貴様は今まで何をしていたんだ?」
「黙れ…」
「幹部が次期こちらに到着する。
あの方がそのザマを見れば、さぞお怒りになるだろうな」
「黙れと言っているだろ!」
こいつらは一体なんの話をしているんだ?
だが、チャンスだ。奴らが言い争っている隙に……。
ルナが口パクで何か言っている。
『じ・か・ん』?
[×TIME:6時00分]
ああ、もう、作戦は失敗か?
いや、まだチャンスはある。
[×WARNING:真空チューブ列車が猛スピードで接近中]
「……おい何をした人間!」
赤い装甲のドロイドが足元の不穏な振動に気づく。
ルナは不敵に笑った。
「チューブに小さな穴を開けて、そこにパウダーを流し込んだ。
酸素が回って、列車が通過した直後に火をつけると……どうなると思う?」
地鳴りが、ビルの底から這い上がってくる。
「一箇所で大爆発が起き、チューブ内には一気に大気圧がかかる。
そして、制御を失った列車は止まることなく、進み続ける……!」
「なんだと?」
そう、それが俺たちの当初の作戦。
大きな危険が伴うが、カミラを基地ごと葬り去るにはこれしかない。
[×RESULT:列車暴走(1000km/h)]
地平線の先からやってきたがすぐにこちらまで突進してきた。
そして、その直線方向にあるのが……ここだ。
列車はそこからほとんどスピードを落とすことなく、このバベルの塔に貫通した。
酸素を手にし、有り余った運動エネルギーが、巨大な爆鳴を上げる。
ズ ド ォ ォ ォ ォ ォ ン !!!
折れた。
巨大な質量が、ゆっくりと傾ぎ始める。
「ノア!!」
[×TARGET:E-RED]
[×MODE:ジェノサイド]
「オラああああ!!」
青い刀身を一瞬にして振り上げた。
ザ ン ッ !!
[×KILL:E-RED]
青い血飛沫が飛び交う中、勢いそのままルナたちの元に飛び込む。
赤いやつはカミラほど固くはなかった。
「大丈夫、捕まって!」
腕の中に3人、いや、腹の中まで数えりゃ、4人だ
足場はどこだ?
[×ANALYSIS:ロード中…]
崩落する瓦礫の雨。
このまま落ちても、この先は湖だ。
一昨日、確認してある!
「逃がすかぁぁぁ!! B26!!」
[×HOSTILE:カミラ・マクレーンの投擲]
傾く塔の上を走りながら、跳ね返る瓦礫に紛れ、赤い短剣をこちらに投げた。
[×WARNING:湖に落下]
逃げ場はない。
俺は身を挺して、腕の中の3人を庇った。
グサッ…
ジ ャ バ ー ン !!
冷たい水が、すべてを遮断する。
みんなは、どこだ?
[×WARNING:右胸部を貫通]
[×WARNING:浸水開始]
俺の怪我は今はどうだっていい。
それよりルナたちは無事か?
ルナとベン……いた。
自力で泳いでいるから大丈夫だろう。
あとは、エミリーは?
エミリー?
水中で、俺の視界に「赤」が拡散していくのが見えた。
俺の胸の傷からじゃない。もっと、別の場所からだ。
早く、助けないと……。
またルナが口パクで何か言っている。
こんな時に……。
なんて言ってるんだ?
[×WARNING:巨大建造物の落下を感知]
ほとんど何も見えない上空を仰いだ、その瞬間。
降り注ぐタワーの残骸――巨大な黒い質量が、俺を深くへと押し沈めた。
[×WARNING:全身に激しい損傷]
だから……今は俺のことはいい。
残ってる力全部使って、エミリーを助けなきゃならないんだ。
……行け!!
エミリーの腰を左腕で抱き寄せ、俺は全力で脚部スラスターを噴射した。
水圧を切り裂き、一気に浮上する。
「ブ ハ ァ ッ !!」
水面に顔を出し、エミリーが荒い呼吸を吹き返したのと同時に、ベンの声が聞こえた。
「おい、エミリー!
大丈夫か!?
血が……この剣、まさか……」
彼女の左胸。
心臓のわずか上に突き刺さっていたのは、カミラの赤い短剣だった。
「ああ……痛い。
早く、この子を産まないと。
ルナ……手伝って……」
エミリーの弱々しい声。
そこへ、最悪のノイズが重なる。
「どこだぁぁぁ!! B26!!」
また来たのか。
しぶといクソババアめ。
[×BATTERY:1%]
「ルナ……」
「ベン、そっちを持って!」
一瞬、考えた。
約束通り、ルナにトドメを刺してもらう時ではないかと。
だが、今、彼女が何をしているのか。
その横顔を見て、俺の脳みそが別の答えを導き出した。
「あいつは俺が対処する。
だから……ここは任せたぞ、ルナ!」
俺の肺が破れたような掠れ声に、彼女は手を止めず、ただ一言だけを返した。
「……いってらっしゃい」
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この物語は、完結まで書き切る覚悟で書いています。
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