LOG.12 残酷な音声通話
カルはジョシュを投げ倒し、
その勢いのまま畑の傾斜を下っていき、
硬い粒が転がる緑の大地に伏せた。
そして、誇らしげに言った。
「な!俺、ちゃんと役に立っただろ!」
「バカやろう!無茶しやがって!!」
ジョシュは怒号混じりで声を上げる。
だが、カルの引きつった顔を見ると、
表情を和らげ、頭を撫でながら言った。
「命を賭けるにはまだ早い。
その命は将来、
俺なんかよりもっと大事な人のために使え」
頭に置いた手を折れた肋骨に置き換え、
二人は顔を見合わせた。
一方その頃…
ルナは散弾を放った。
カミラは咄嗟に交わし直撃を免れたものの、
この至近距離、無事では済まないだろう。
だが、硬質な金属音がカンッと鳴った。
硝煙が晴れると、
カミラの顔の半分に鈍色の骸骨が現れていた。
眼窩の中から赤く目を光らせた。
「ああ、痛いじゃないか…」
俺はジョシュが落とした剣を拾った。
[×SCAN:完了]
[×WEAPON:高周波ブレードを認識]
黒人のおばさんに向かって剣を振り落とす。
が、やはり弾かれた。
[×ANALYSIS:カミラ・マクレーン(NSF軍事部長官)]
「ようやくお出ましか、B26」
顔が半分持っていかれているのに、このババアピンピンしてやがる。
オメガには頭蓋骨もあるのか。
「このクソババアが。
かかって来い」
俺は両手で剣を構える。
NSF長官。
ただものではないはずだ。
それに剣なんて使ったことない。
が、やるしかない。
剣に意識を向ける。
[×MODE:ジェノサイド]
[×WEAPON:導通確認]
[×ENERGY:バイパス形成]
[×DEGREE:3000℃ 上昇]
[×MODE:高周波プラズマ・ブレード]
キィィィィン……!
刀身が青白いプラズマを纏い、
高周波の唸りを上げる。
俺は地面を蹴り飛ばした。
一撃で決める!
ガギィィィン!!
稲妻のような斬撃。
奴の胴体を完全に切り裂いた…はずだった。
斬れない!?
弾かれたのか!?
彼女の手から煙が立ち込め、再び鈍色が現れる。
[×ANALYSIS:ジルコニウム基アモルファス合金]
[×FEATURES:超弾性 / 衝撃拡散]
[×RESULT:物理攻撃無効]
クソが!
そういうのは先に言ってくれよ!
結局、カミラをほんの数メートル押し出しただけで、ほとんど通用していない。
「あなたの目にはどう映ってる?」
「よくわからんけどアモルファス合金で、
物理攻撃無効だってさ」
「はっ!
どうりで鎧がないわけだ」
カミラが自分の堅牢な手のひらを見ている中、とルナで瞬時に策を練る。
「アモルファス合金ならなら、
その剣を4、5秒当てれば崩れるはずよ。
自信ある?」
「いや全く」
「そう。ならプランBね。
もう一度、あの顔面にこいつを喰らわす」
ルナはショットガンを回しながら言った。
「効かないんじゃないの?」
「直撃を喰らわせれば死んでたわよ。
それに今なら眼窩が剥き出し。
少しでもあの中に散弾が当たれば、
致命打になるはず」
「話は終わったか?」
カミラが余裕そうに言った。
「私があなたの後ろから攻める。
あなたは防御に徹して」
「了解!」
[×STRATEGY:変更]
[×MODE:ジェノサイド … 終了]
[×FPS:上昇]
これなら省エネで戦える。
ルナが畑の中に潜り、俺はその前に立ち塞がる。
「来いよ!ホラーマン!」
「レディに向かって何と失礼な。
これは、お仕置きが必要だな!!」
俺が挑発すると、カミラは赫い短剣を持ちかえ距離を詰めてきた。
だが、この速度なら対応できる。
ルナの位置は特定できないはず。
俺がここで食い止めれば…。
茂みの中から散弾を送る。
何発も、何発も、何発も。
だが、全て避けられる。
畜生!
やはりこの距離だと駄目か。
もっとギリギリで、かつ後ろに回り込まれないようにして戦わないと。
[警告:残エネルギー3%]
は!?
今かよふざけんな!
視界は赤と青の線がひっきりなしに交差する。
[×WARNING]
今度はなんだ!?
ザンッ!!
あれ?
[×WARNING:両腕ロスト]
剣を握ったままの俺の両腕は宙高く舞い上がった。
直後、カミラは俺の首を掴み、そのまま持ち上げる。
「さあ、おしまいだ。
こいつはもう戦えない。
大人しく出てこい、人間」
足は動く。
思いっきり蹴りを入れれば…
足を後ろに引いた途端、カミラの手から電撃が放たれた。
「動くな、B26」
[×NARVE:ダウン]
身動きが取れない。
そんなギミックがあるなんて聞いてないぞ。
それより、ルナは、無事か?
「とっとと出てこい、人間。
それとも…
こいつもろとも私を撃ち殺すつもりか?
いいさ、やってみろ」
ああ、ルナ、やってしまえ。
このクソババアを…
目の前の茂みの中から、E3ドロイドの増援がゾロゾロやってきた。
このまま何もしなければルナも…
そう思った瞬間、大きな正方形が、E3を引き殺し、俺とカミラを畑の中へと突き飛ばした。
「早く乗り込め!」
この声は…ベン?
さっきの正方形…
[×NERVE:再起動…成功]
「行くわよ!早く立って!」
ルナに体を起こされると、足が動き出した。
ベンが俺の切り落とされた両腕を持ってトラックの荷台に駆け込む。
俺とルナも全速力でそれに乗り込む。
「行くぞ!!」
ジョシュが運転席でそう言うと、トラックは東に向かって走り出した。
途中から記憶があやふやだ。
どうなったんだ…
俺の腕は?
しかし、カミラは止まることを知らない。
胴体がスクラップになったE3ドロイドの首を切り落とし、頭を手にもつと、トラックに向かってを投げつけた。
それはそのまま孤を描くと…
コロン…
「伏せろ!!」
荷台にいた全員が爆発すると思った。
しかし、実際に鳴り響いたのは爆音ではない。
声だ。
「聞こえるか。B26とボストンの獲物ども」
E3ドロイドの口だけが赤く光る。
「いいか、よく聞け。
妊婦の女を連れ去った。
名は確か、エミリー…」
ベンの顔に動揺が走った。
「この女を殺されたくなければ、
B26を引き渡せ。
猶予は………」
口の光が消えると、カミラの声も消えた。
猶予がいつまでなのか、知ることもなく…
ベンは警察官の銃を強く握った。
息が荒く、目を大きく見開いて銃口を向けたかと思うと、生のないE3の頭に向かって、全段8発を発砲した。
「ああああぁああ!!!」
その怒鳴り声がトラックに響き渡ると、迷宮に共鳴することなく、消えていった。
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