LOG.11 狩人たちの獣道
俺たち3人は、緑と黄色の茂みの中を猛スピードで駆け抜けた。
「ここからどうするの?」
「ああ、もう!何か案はないか?」
「えっと、奴らは完全に視界に入らないとオートエームを放てない」
「つまりなんだ?」
「この畑の中で戦うんだ!」
視界が狭ければ、小回りがきく人間の方が有利だ。
ローリスク・ハイリターンのはず。
納屋に辿り着くとベンが大声をあげ指揮をとった。
「ドロイド軍だ!
俺たちで奴らを食い止めている間、
お前らはできるだけ多く食料を詰み込め!!」
「…了解!みんな急げ!」
数人が袋に詰められた食料を運び、その他は迷宮に潜った。
俺はどうするべきだ。
奴らの目的が俺なのだとしたら、残った方がいいのかもしれないが…
ルナが先陣を切って戦場に入っていくのが見え、俺はいても経ってもいられずその後に続いた。
ここなら、銃をどれだけ撃っても被弾しないはずだ。
肉弾戦なら俺の方が上だろう。
いや待てよ、今のエネルギーは?
[×BATTERY:17%]
昨日は100%だったのに5分も持たなかった。
17%じゃ何にもできねえ。
ガガガ…
なんだ、今の音…
[×AUDIO:向上]
この音は…
ガガガガガ…!
[×ANALYSIS:ロード中………ガトリングガン]
こいつら、道なんてお構いなしかよ。
軍用車両は緑の壁を踏み砕き、猪突猛進に突き進んだ。
納屋の方に近づかせないようにしないと…
[×WARNING:回避不可]
まずい…
迷宮の暗闇から猛獣は現れた。
ガーン…!
ルナがグレネードで車を投げ飛ばし、車体は宙を舞って俺の頭上を超えた。
「あーあ、あれが最後だったのに…」
ルナはショットガンを回しながらリロードした。
カチャ…
バン!バン!
カチャ…
バン!バン!
一瞬の間にショットガンを2回転し、敵の視界に入らないように立ち回った。
そして、そこにいた4体のE3の頭を正確に撃ち抜いた。
[×ANALYSIS:ウィンチェスターM1887]
いつの間に…
「後ろ!危ない!」
[×HOSTILE:E3ドロイド]
まずい。
だがこれくらいなら見切れる。
このままだと格好がつかないしな。
素手でもやれるってとこを見せてやる。
[×MODE:ジェノサイド]
「おおらあああ!!」
ドォーゴゴゴゴオーーン!!
拳がめり込んだ瞬間、青い電流が爆発的に拡散する。
E3の胸部装甲が紙屑のようにへし曲がり、
数十メートル後方の納屋の壁まで吹き飛んでいった。
……あれ、強すぎる。
だが、視界の端で赤い警告が点滅した。
[×BATTERY:12%]
一撃で5%消費!? 燃費が悪すぎるだろ!
「さっきの何?」
「あれは俺の必殺の…」
「そうじゃない。
あのE3ドロイド、
あなたを撃つのを躊躇っていたように見えた」
言われてみれば…
「もしかして敵の狙いって…」
草むらから音がし、振り返った。
「なんだベンか」
「さっきの雷みたいな音はなんだ?」
「あれは…」
その頃、車両が通ってできた獣道で、カミラ・マクレーンは死体遊びをしていた。
殺した人間の腕を切り落として手に取ると、それを握りつぶした。
彼女の手が、赤く染まる。
「おい!そこのお前!」
獣道に現れたのはジョシュだった。
「それ以上、死体をいじくり回すのはやめろ」
カミラは立ち上がり、赤い手を見つめた。
「人間の血は美しい。
この真っ赤な流体は、
お前たちのこれまでの罪と、
その残酷さを物語っている」
「罪か。
ならその制裁は自分たちで決める。
お前たちは、引っ込んでろ」
ジョシュが剣を抜くと、加速し、彼女の間合に入った。
が、しかし、カミラは不敵な笑みを浮かべると、一瞬にして赤い閃光を走らせる。
刃と刃が衝突し、火花が散ると、ジョシュはもう一度足を踏み込み、さらに加速。
だが、今度も受け流されるだけだ。
「もうとっくに勝負はついているというのに、
よくそこまで悪足掻きできるな。
とっとと諦めてはどうだ?」
「残念だが、
こちとら諦めが悪いことだけが取り柄なんでな」
「それは、人類と、お前個人、
どちらのことを言っている?
もし、人類というなら、
あの娘は人間なのか?」
カミラの言葉が、ジョシュの脳裏に棘のように刺さる。
(……確かに妙だ)
剣を弾きながら、ジョシュは瞬時に思考を巡らせた。
コーンベルトを目指すのは予測できたとしても、この捕捉速度は異常すぎる。
――位置がバレている?
だとすれば、人間の中に裏切り者がいる。
そして、その容疑者は……。
思考を遮るように、カミラが加速した。
複数の赤い光の斬撃が、
ジョシュへ振りかざされる。
防戦一方。
あしらうので精一杯だ。
だが、ジョシュは次に、敵が心臓を突こうとすると、それを左にいなし、勢いそのまま一回転して、袈裟斬りを放った。
その剣はカミラの胴を捕らえていた。
しかし、刃が届くよりも前に後ろ蹴りを入れた。
「ん?」
その蹴りは完璧に鳩尾に入った。
ジョシュは剣を落として倒れ込む。
武器を持たないジョシュを、カミラは見下しながら言葉を放った。
「さっきの蹴りの感触、もしや、お前…」
「黙ってさっさと殺したらどうだ?」
ジョシュは膝立ちをしながら言った。
彼女は少し戸惑った様子を見せていたが、その疑念が晴れたように再び口を開く。
「それもそうだな…」
カミラの短剣が赤く光ったその瞬間、音を立てずに現れたカルが、乾いた銃声を1発鳴らした。
彼の銃弾がカミラに命中することはない。
だが、彼女のシステムを惑わすには十分な1撃だった。
カルはジョシュの元に飛び込み、自分諸共茂みへ突き飛ばした。
「あの、クソガキめ」
カミラが二人を追おうと踏み出した、その時。
目の前の緑の壁が不自然に揺れた。
葉の隙間から突き出されたのは、冷たい鉄の銃口。
その奥で、暗いピンク色の殺意が一瞬だけ煌めいた。
そして、ルナは引き金を引いた…。




