LOG.10 緑と黄金の迷宮
「えっと…右から筋肉質のデボン、
野球帽のランディ、虫嫌いのスコット
で、あってる?」
ルナがジョシュと運転を交代し、
ベンの仲間の顔と名を覚えていた。
「違う!虫嫌いのランディに、
野球帽のスコットだ!」
「OK。完璧に理解した」
なんか漫才みたいでややこしいな。
オハイオ州に入り、もう間も無く目的地に到着する。
太陽もとっくに昇っていた。
———2046年9月7日リスボン———
ようやく到着した。
見渡す限りの高さ3メートルのトウモロコシ。
どこまで続いているのだろう。
「早く行くよ」
向かった先は赤い木造の納屋だ。
ベンの掛け声で全員が集合した。
「よーし、全員集まったな。
それじゃあ作業に取り掛かる。
まずは機械を直さないとだよな」
「俺がやる」
ジョシュが手を挙げた。
そういえばこの人すごい発明してたな。
「助かるよ」
ジョシュは即座に作業を始めた。
「えーと、見張を一人配置して、
機械が直り次第、
それぞれ一人ずつ担当
1時間ごとに交代しよう。
その他は収穫だ。
目標は1ヶ月分、さあ始めよう!」
「よーし!やるぞー!」
みんな声を揃えて意気込んでいるが、
この流れ、まさか手作業で収穫するのか?
見た感じトラクターみたいのはなさそうだが…
[×ANALYSIS:該当物なし]
まじかよ。
1ヶ月分となるとトラック2台分くらいか。
こりゃ、丸1日かかりそうだな。
最初はそんなふうに思っていたが、
収穫作業も、やってみれば意外と楽しかった。
ガガガガガッ
粉砕機の轟音がひっきりなしに鳴り響く。
俺は機械の体だから休憩せずとも、
何時間も作業し続けることができた。
これは今日のMVPになれるだろう、
と思っていたのだが、
プロの登場でそういうわけにもいかなかった。
「あれはハンクだ。
ボストンでも農家をやっていた」
と、筋肉質のデボンから聞いた。
ハンクは、俺たち素人の10倍の早さで収穫していた。
正真正銘の化け物である。
そんなこんなで時間はあっという間に過ぎ去り、
16時頃、ようやくトラック一台分が埋まった。
納屋の周りは黄色い粉末が飛び交い、
視界が非常に悪い。
「作業は中断だ!
ルナ!みんなを呼んでこい」
「了解。ノア!一緒に来て」
納屋で指揮をしていたジョシュの呼びかけで、
北側にいる数人を呼びに行ったのだが…
あれ?
ルナはどこいった?
まずい、迷子になってしまった。
一旦納屋に戻るか…
バーン…
今の音、ルナか?
でもルナが持っていた銃って…
恐る恐る銃声の方へ近づいた。
あれ、この虫除けスプレー…
え?
なんで死体が…。
この人って、トラックで一緒だった…
[×SCAN:生命反応なし]
「おい、遠くから変な音がすると思ってきてみれば、人間だぞ、これ」
「まじかよ、今懸賞金いくらよ」
「一人につき100万Cr (クレジット)だってよ。
それってどのくらい?」
「そりゃお前、超高級タワマン一部屋余裕で買えるぞ」
「まじ!?」
なんだこいつら。
トウモロコシ畑には似つかわしくない、白く輝く重装甲に身を包んでいる。
[×ANALYSIS:インペリウム社・重装保安部隊]
ほんとだ。
よく見ると胸のところにインペリウムって書かれてる。
インペリウムって確か、自動車メーカーだっけか。
なんでこんなところに。
「音がしたのは向こうだよな。
まだ人間がいるかもしれない。
行こうぜ」
ズシン……ズシン……。
地面を揺らす重い足音が、俺たちの隠れている方へ近づいてくる。
まずい。あんな重装備相手じゃ、まともに撃ち合っても勝ち目はない。
ああ、もう、やるしかないな。
俺は飛び出した。
「おい、そこの二人、
ここからは軍事本部の管轄だ。
下がれ!」
こんな感じでいいのか?
頼む、どっか行ってくれ…
「なんだ?E4ドロイド風情が偉そうに。
俺たちを誰だと思ってるんだ」
やばい無理そう。
ちょうどその頃、ルナとベンもその様子を別角度から見ていた。
「くっそ、ランディがやられたか。
あのドロイド、ただの荷物持ちじゃなかったのか?
なんであんな行動をする?」
ルナは少し考えてから重い口を開いた。
「実は…」
で、どうしよう。
何か考えろ。
うーん…
「…お前たち、どの方角から来た?」
「どの方角って向こうだよ」
そう言ってオメガは東を指差した。
ならば!
「ここだけの話、
現在、E4隊が南部から人間を捜索している」
「それで?」
「奴らは北へ逃げていった。
追うなら今のうちだぞ」
これならどうだ。
「随分とおしゃべりなE4ドロイドだな。
でも、サンキューな。
よし!一稼ぎしますか!」
「幸運を祈る!」
やった。
どうにか遠ざけることに…
「おい、あれって軍の車じゃないか?」
はい?
[×WARNING:NSFの軍用車8台が接近中]
[×HOSTILE:E3ドロイド40名]
[×HOSTILE:カミラ・マクレーン]
タイミング悪すぎるだろ。
カサカサッ…
「なんだ?」
「避けてノア!!」
ルナが不意打ちでオメガドロイド2体の前にグレネードを放った。
俺の体は反射的に反応し、トウモロコシ畑の方に飛び込んだ。
「早く逃げるぞ!!」
ガトリングガンの嵐が、緑と黄金の迷宮に押し寄せた。
デントコーンの硬さのおかげで、被弾することはないもののまずい状況だ。
急いで逃げないと。
「なんだ、これ。
全然、身動きが取れない」
一台の軍用車がオメガの前に止まり、そこから一人の女が降りた。
「あなた、NSF長官の人ですよな。
そこに転がっている人間…
俺たちが殺したんですよ…」
「あっそ」
カミラはなんの躊躇もなく、そのオメガを撃ち続けた。
白い装甲から青い血液が溢れ出る。
彼女は迷宮を見ると、命令を下した。
「お前たちは人間を殺せ!
B26は、私が捕らえる…」
そう冷たい声がE3ドロイドに認証されると、奴らの目は赤く獲物を検知した。




