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勇者(在庫あり)〜異世界に来すぎて価値が暴落した俺たちは、とりあえずギルドの事務員をやることにした〜  作者: 沼口ちるの
第一章:事務員時代

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第九話:上層部(カミ)からの不当異動命令

魔王城のオフィスフロア。 そこには、ベルフェリエが用意した最高級の魔界茶を啜りながら、管理局のデスクよりもふんぞり返る「招かれざる客」がいた。


「ふむふむ。やっぱり現場(下界)の空気感は違いますね。空気が淀んでて、事務処理が捗りそう」


見た目は可憐な少女。だが、その背後に透けるのは、全転生者を管理する『発送課』の絶対的な権威。 蓮は持っていたバインダーの角で、自分の眉間を強く圧迫した。


「……管理局・発送担当。なぜあなたが、私の『副業先』に居るんですか。不法侵入で訴えますよ」


「ひどいなぁ、九条くん。十万件目のキリ番ボーナスですよ。担当した在庫……いえ、転生者がちゃんと社畜として『摩耗』しているか、視察に来てあげたんです」


女神はケラケラと笑いながら、蓮が勇者たちに叩きつけた「追徴課税通知書」の写しを、楽しそうに検分している。


「九条さん、お知り合いですか!? この方、警備のガルムたちを『可愛いワンちゃんね』の一言で無力化して、魔王様のプライベートルームまで土足で入ろうとしたんですよ!」


ベルが毛を逆立てた猫のように、蓮の背後で女神を威嚇する。女神はその視線を優雅に受け流し、極上の笑みを浮かべた。


「へぇ、あなたが例の『現地採用スカウト』さん。九条くん、天界の公務員と魔王軍の二重生活だけじゃなく、美少女悪魔と『帳簿の付け合い』まで楽しんでるなんて。発送した甲斐がありました」


「……用件を。一分ごとに私の残業代が魔王軍から発生してるんです」


蓮が氷のような声で促すと、女神はスッと表情を消した。その瞳に、事務屋としての「無慈悲なシステム」が宿る。


「九条くん。これ、地球の『経営陣』からの直通命令。――**『転生者在庫一掃プロジェクト』**の始動よ」


女神が差し出したのは、銀色に輝く一枚の執行命令書。


「最近、転生者の質が低下しすぎて、異世界のインフラ維持費が予算を圧迫してるの。だから、一度『選別』を行うわ。役に立たない在庫は、記憶を消去して地球へ強制送還デリート。誰を残し、誰を捨てるか。その裁定、あなたの『バインダー』に任せるわ」


部屋の空気が、一瞬で凍りついた。 それは、九条蓮がこの世界の「神の代行者」として、全転生者の生存権を握る『人事異動の神』になることを意味していた。


「……報酬は、定年後の安泰な老後。お望みの世界での『完全なる隠居生活』を約束するわ」


蓮は少しだけ沈黙し、それからベルの震える手と、デスクに置かれた「魔王城の再建計画書」を交互に見た。


「……分かりました。ただし、送還の基準は私のスキルで『事務的』に決めさせてもらいます。感情の入る余地はありませんよ」

【後書き】

はい、天界の発送課……兼、今回は「監査担当」の女神です!


九条くん、ついに現場に乗り込んじゃいました。魔王城のオフィス、意外と居心地良くてびっくり。


でも、冗談はここまで。今回の「在庫一掃プロジェクト」はマジですよ。 転生させすぎちゃって、異世界のサーバーもパンパンなんです。九条くん、かつて「カスタマーサポート」で培ったあの冷徹な選別眼で、無能な勇者たちをバッサバッサとリストラしちゃってください。


あ、ベルちゃん。そんなに睨まないで。 九条くんが仕事を完遂したら、魔王軍を「天界直営の優良子会社」にしてあげてもいいわよ?


次回、『リストラ勇者、地獄の三者面談』。


九条くんのバインダーが、誰の首を撥ねるのか……お楽しみに!

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