第四十話(第二章最終話):事務員、休日を清算する
異世界管理局の城下町。今日の蓮は、トレードマークの事務服ではなく、落ち着いたツイードのジャケットを羽織っていた。 「私服とは、最もリラックスできる機能的な礼装であるべきだ」という、彼なりの(歪んだ)結論である。
「お待たせしました、九条様」
現れた如月の姿に、蓮は持っていたパンフレットを落としそうになった。 いつもの制服ではない、風に揺れる純白のワンピース。 「……如月さん。その……今日のあなたの視察用装備は、極めて……算出不可能なほどに……」 「……『似合っている』。その五文字で結構です、九条様」
二人が歩き出した瞬間、街の「在庫」たちが一斉に動き出した。
「お兄ちゃん発見! 聖なる光で、あの泥棒猫(如月)からお兄ちゃんを隔離するわ!」 空からユニコーンの姿で急降下してくる妹・結。 「待て結! 独り占めはズルいぞ! 俺も長男として、弟のデートの『警備』をする!」 フルプレート甲冑で全力疾走する兄・勇。
「あらあら、賑やかねぇ。厳吾さん、シャッターチャンスよ」 「分かってる! 蓮のやつ、顔を真っ赤にしおって!」 イケメン執事(母・静江)と美少女(父・厳吾)が、屋根の上から魔導カメラを構える。
「九条主任! デート代の領収書は俺に回せよ! その代わり、後で詳しく話を聞かせろ!」 物陰から声をかけたのは、第一章で蓮に論破され、今は管理局の予算管理に怯える魔王であった。
「九条さん、がんばってー! 差し入れのソフトクリーム、持ってきましたよ!」 受付嬢のベルフェリエが、シロと一緒に笑顔で手を振っている。さらに、背後では桃華が「旦那のデートに手出しする野次馬は、俺が全員ブッ飛ばしてやる!」と拳を鳴らしていた。
「……九条様。……静かなデートは、無理なようですね」 如月が溜息をつき、隠し持っていた魔導書を展開する。 「……ええ。こうなったら、予定を変更します。如月さん、……これより、『私的休日を妨害する全在庫(親族および関係者)』の、一斉強制排除を開始します!」
「「「「望むところだぁぁぁ!!」」」」
蓮のバインダーが開き、如月の魔法が炸裂し、結の雷が落ち、父の闇が渦巻く。 静かなデートのはずが、街を揺るがす大乱闘へと発展した。
だが、爆発と怒号が飛び交う中、蓮は一瞬だけ如月の手を強く引いた。 「……如月さん。後書き(報告書)には、こう書いておいてください。……『本日の休日、予定は大幅に狂ったが、満足度は……想定を上回った』と」
「……はい、九条様。喜んで」
二人の背後で、家族や仲間たちが大騒ぎする中、異世界管理局の「最も騒がしい休日」は、最高の清算をもって幕を閉じた。
後書き
はい、発送課の女神です!
改めまして、第二章完結です! 九条くん、最後はビシッと(?)如月さんの手を引いてくれましたね。 お父様もお母様も、結局は息子の成長が嬉しくて、あんなにハチャメチャに追いかけ回していたのかもしれません。
魔王さんも、今や「経費精算」を口実にして九条くんと関わりたがる、 なんだかんだで良いコンビ(?)になっちゃいました。 ベルちゃんも受付嬢として、しっかり花を添えてくれましたね!
九条くんの異世界整理術、次はどんな「在庫」が彼を待ち受けているのでしょうか。 でも、これだけ賑やかな仲間がいれば、どんなブラックな魔王軍が現れても、 一瞬で「ホワイトな職場」に変えられちゃいそうです。
これまでのお付き合い、本当にありがとうございました!
これにて一応完結しいったん締めます!ではでは




