第三十六話:魔界温泉の査察と、湯けむりの攻防
管理局・第一回慰安旅行。行き先は、魔王ベルフェリエの領地にある「魔界・極楽地獄温泉郷」。 硫黄の香りと魔力の湯気が立ち込めるその宿に、一行は到着した。
「……九条様。こちらが本日の行程表です。15時から入浴、18時から宴会、22時に完全消灯となっております」 如月が、水色の浴衣を完璧に着こなして蓮に歩み寄る。
「……如月、旅行中くらいは消灯時間を気にしなくても良いですよ。……ですが、この温泉の『成分報告書』に、わずかな魔力汚染の疑いがありますね。まずは私が、泉質のサンプリング調査(入浴)を行わなければ」
蓮がタオルを手に立ち上がると、待機していた面々が一斉に動いた。
「サンプリングなら、私も手伝うわ! お兄ちゃん、背中の『事務疲れ』を流してあげるのが、妹の義務だもん!」 結が、いつの間にか角を隠した「妹全開」の水着姿で蓮の腕に抱きつく。
「お、おい! 旦那の背中を流すのは、用心棒(背中流し役)の俺の仕事だろ!」 「……九条様。魔界の湯は温度変化が激しいのです。……私が隣で、魔法による精密な温度調整を……」
パニック寸前の男湯の暖簾前。すると、影からカゲミツがカメラ(魔導録画機)を手に現れた。
「ヒッヒッヒ! 九条様、安心してください! 混浴エリアの隠し撮り……じゃなかった、『安全確認』は僕が——」
ドォォォォン!!
カゲミツは、如月とベルフェリエの同時攻撃により、地平線の彼方まで吹き飛んだ。
「……さて。無駄な在庫(盗撮魔)の整理は終わりました。九条様、参りましょう」
露天風呂に浸かりながら、蓮はバインダーを防水魔法で包み、湯気の向こうに見える魔界の絶景を眺めていた。 隣には、なぜか当然のように「仕切り」を破壊して合流してきた結と、それを無言で牽制する如月、そして「あつーい!」とはしゃぐシロ。
「……。………………如月。この温泉の効能に『家庭円満』とありますが、現在のこの状況は、事務的に見て『円満』と言えるのでしょうか」
「……九条様。それは、今後の『清算』次第かと存じます」
九条蓮。最強の事務員といえども、乙女たちの湯けむりの中では、その「正確な判断力」もわずかに曇らざるを得なかった。
後書き
はい、発送課の女神です!
ついに来ましたね、水着&温泉回! 九条くん、せっかくの旅行なのに「泉質のサンプリング調査」なんて言って、 仕事モードを崩さないところが彼らしいです。 でも、結ちゃんや如月さんたちの猛攻(?)には、流石の彼もタジタジのご様子。
カゲミツくんは……うん、自業自得ですね! 魔界の空に消えていく彼の姿は、ある種の花火のようでした。 シロちゃんが温泉で犬かきをして、如月さんに「泳いではいけません!」って怒られてる姿が目に浮かびます。
さて、次回! 「湯上がりの大宴会! 〜九条家・秘伝の酒で、鉄面の事務員がついに泥酔!?〜」
酔った蓮くんが、普段は言えない「本音」をぶちまける!? 管理局メンバー、全員が耳をダンボにして待機します! お楽しみに!




