第三十四話:九条家の「帰属」と、居座る聖獣
闇オークション会場の跡地で行われた、史上稀に見る「九条家・家族会議」は、数時間に及んだ。
「……さて。積もる話はあるが、私もいつまでもここで油を売っているわけにはいかん。帝国のバカ貴族どもが、私がいない隙にまた妙な法案を通そうとしているからな」
美少女(父・厳吾)が、ドレスの裾を翻して立ち上がる。中身は熱血デカのままだが、その「闇の聖女」としてのカリスマ性は今や帝国の政治をも動かしているのだ。
「私も、父さんに付いていくわね。この人の手綱を握れるのは、私(執事)しかいないもの。……蓮、如月さん、うちの息子をお願いね。あと、あまり残業はさせないでちょうだい。母さん、怒ると怖いわよ?」
イケメン執事(母・静江)が、優雅に一礼して父の影に溶け込む。
「俺も戻るぞ! 騎士団の連中が、俺がいないとすぐにトレーニングをサボるからな! 蓮、今度帝国に来い。最強の『事務用デスク』を用意して待っている!」
長男(騎士団長・勇)が、暑苦しく拳を突き出し、地響きを立てて去っていった。 こうして、異世界のパワーバランスを揺るがした九条家の面々は、それぞれの「ポスト」へと帰属していった。
……だが、ただ一頭(一人)、全く動こうとしない者がいた。
「……結。あなたは兄さんと一緒に、帝国の聖域に帰るのでは?」 蓮が問いかけると、純白のユニコーン(妹・結)は「ブルルッ!」と激しく首を振り、蓮のスーツの袖をガッチリと口で咥えた。
「ヒヒーン!(嫌だ! 私はお兄ちゃんのそばにいるの! 聖域なんて、お兄ちゃんのいない場所はただの更地よ!)」
カゲミツが呆れたように肩をすくめる。 「ダメですよ九条様。結ちゃん、もう自分の足元を『聖域化』して、地面に根を張る勢いです。帝国騎士団も『聖獣様がそうおっしゃるなら……』って、あっさり置いていっちゃいましたよ」
「……。ですが、管理局にユニコーンの居場所はありません。うちはペットショップではないのですよ」
すると結は、一瞬で光に包まれ、ユニコーンの角を残したままの少女の姿(全裸になりかけたので如月が即座に布を被せた)へと変身した。
「お兄ちゃんのバカ! 私はペットじゃない、『専属護衛獣兼・癒やし担当』としてここに就職するの! ほら、このツノから出る光で、お兄ちゃんの眼精疲労も一瞬で治るんだから!」
「……。………………如月、経理部に確認を。『聖獣の手当て』が予算に組み込めるかどうか」
結局、九条家の末っ子は、その強引なブラコンパワーで管理局の「特別職員」として居座ることに成功したのだった。
「レンさま、ライバル……ふえたです。でも、おねえちゃんだから、なかよくするです!」 「……シロさん、あなたは甘い。……結様、お兄様のお世話は、この私(如月)が『事務的に』完遂いたします。ユニコーンは庭で草でも食んでいてください」
如月と結の間に、バチバチと火花が散る。 九条家が集結し、そして解散した後の管理局は、以前よりもずっと騒がしく、そして「賑やかな戦場」と化していた。
後書き
はい、発送課の女神です!
九条家のみなさん、さすがに自分の役割は分かってらっしゃるようで。 お父様もお母様もお兄様も、それぞれの場所で異世界を「整理」するために帰っていきましたね。 でも、結ちゃんだけは……やっぱりこうなりましたか!
「聖獣(妹)」という、最強の身内ヒロインの登場。 如月さんの目が、かつてないほど「事務的な冷徹さ」を超えて、本気の「女の戦い」モードに入ってますよ! シロちゃんだけが、のんびりと「お姉ちゃんが増えたー」って喜んでて、癒やしですねぇ。




