第三十二話:完璧なる執事と、九条家の「清算」完了
「……イザベラ様。お召し替えの準備が整いました。それから、そちらの管理局の方々には、最高級のエールと軽食を用意させております」
闇オークション会場の奥。イザベラ(父)の背後に、影のように控えていた一人の青年がいた。 非の打ち所がない完璧な所作、鋭くも知的な瞳、そして女性なら誰もが見惚れるような「超絶イケメン執事」。
「おぉ、すまないなセバス。助かるよ」 美少女(父)が慣れた様子で礼を言うと、その執事はフッと優雅に微笑んだ。
「九条様……。あの執事、ただ者ではありません。私の隠密スキルを持ってしても、一切の隙が見当たらない」 如月が珍しく冷や汗を流して警戒し、シロもクンクンと必死に鼻を動かしている。
「……? このにおい……。おじさん(父)とはちがうけど、とっても、なつかしい……。おじさんの横で、いつもいいにおいさせてた、おばさんのにおいです!」
「……母さん?」 蓮のバインダーが、今度こそ床に落ちた。
「……あら。隠していたつもりはなかったのだけれど。流石は私の息子ね、蓮。……それに、ハナ(シロ)も相変わらず鼻が利くわね」
イケメン執事(母)が、その凛々しい低音ボイスのまま、慈愛に満ちた(おっさん……ではなく、お母さん的な)眼差しを蓮に向けた。 カゲミツが床を転げ回って、もはや呼吸困難になりながら爆笑する。
「ギャハハハハ! 腹が、腹が死ぬ! 九条様、お母様の中身は九条 静江さんですよ! 前世では夫の厳吾さんを影から支える完璧な主婦だったのに、こっちでは『夫が危なっかしいから、最強の執事になって守る』って願っちゃったみたいで! 夫婦で性別が入れ替わって『美少女とイケメン執事』として闇社会を支配してたなんて、どんなコントですかぁ!」
「……。………………母さん、何をやっているんですか」
「あら、蓮。父さんが『悪を根絶やしにする!』なんて息巻いて転生しちゃうから、放っておけなかったのよ。……でも、まさかあなたが管理局を立ち上げて、私たちの『在庫(闇組織)』を監査しに来るなんて……。教育の賜物かしらね?」
美少女の姿で「野球が見たい」とぼやく父。 イケメン執事の姿で、完璧に夫を管理する母。 そして、その間で脳の処理が追いつかない事務員の息子。
「……如月さん。本日の業務報告書にはこう書いておいてください。『九条家の戸籍情報は、異世界において完全にバグっている』と」
九条家の再会は、感動よりも先に、蓮の「事務的な平穏」を粉々に粉砕していった。
後書き
はい、発送課の女神です!
もう、九条家のみなさん! 個性が爆発しすぎて神様の手に負えません! お父様が美少女、お母様がイケメン執事。 それでいて中身は「熱血デカ」と「完璧な主婦」のままなんて、 異世界の神様もきっと、悪ノリが過ぎましたね。
でも、お母様(イケメン執事)が「夫を放っておけなかった」って言うあたり、 性別が変わっても九条家の夫婦愛は本物みたいです。 如月さんなんて、あまりにも完璧な「義母」を前にして、 もはや、挨拶すべきか跪くべきか混乱して魂が抜けかけてましたよ!
さて、次回! 「管理局、家族経営スタート!? 〜美少女パパとイケメンママが、九条蓮の婚活に事務的に介入する〜」
家族が揃ったことで、如月・ベル・桃華・シロの「正妻争い」に、 史上最強の姑と舅(美少女)が参戦! お楽しみに!




