第二十九話:失われた鎖と、父の面影
「……カゲミツ。今、何と言いましたか?」
蓮の手から、羽ペンがパラリと落ちた。 いつも冷静沈着な彼の声が、わずかに震えている。
「いやぁ、九条様もびっくりでしょ? 僕も影を辿って驚きましたよ! シロさんの前世の相棒……あの実直で、犬のハナちゃんを誰よりも愛していた熱血刑事、九条 厳吾さん。……九条様、あなたが行方不明だと聞いていた、お父様ですよ」
「……っ!!」
シロがハッと顔を上げ、蓮の顔を食い入るように見つめた。 「おじさんの……なまえ、げんご……。……そうだ、おじさんのにおい、九条さまから、する! おじさんの、むすこさん……!?」
シロが蓮の足元に駆け寄り、その裾をギュッと握りしめる。 前世で、殉職の危機に瀕した相棒を助けられなかった後悔。それが、息子である蓮との再会によって、数千年の時を超えた「宿命」へと変わった。
「……父は、私が幼い頃に職務中の事故で他界したと聞いていました。……まさか、異世界のシロの前世と繋がっていたとは」
「九条様、これってもう『運命』じゃないですか! 泣けますねぇ、僕も影の中で涙が……おっと、如月さんの殺気が怖すぎて乾いちゃいました!」
如月は、複雑な表情でシロを見つめていた。 これまでは「可愛いライバル」だったが、九条家の愛犬(前世)であり、父の相棒だったとなれば、その絆の深さはもはや「家族」に近い。
「……九条様。シロさんの保護、および『専属補佐官』への任命を強く推奨します。これはもはや、管理局の業務を超えた、あなたの人生の『清算』の一部です」
如月の珍しく熱の入った言葉に、蓮は深く息を吐き、シロの小さな頭にそっと手を置いた。
「……シロ。父を……ハナちゃんの相棒を守れなかったことを、悔やむ必要はありません。……これからは私の隣で、父が愛した『正義』を、事務員として一緒に守ってください。いいですね?」
「……はいっ! 九条さま……いいえ、レンさま! わたし、こんどこそ、ぜったいに守ります!」
シロの瞳には、かつての「不良在庫」と呼ばれた怯えはない。 そこにあるのは、九条家の誇りを受け継ぐ、一人の「捜査官」の輝きだった。
後書き
はい、発送課の女神です!
もう、涙で画面が見えません……! まさかシロちゃんの前世の相棒が、九条くんのお父さんだったなんて。 カゲミツくん、たまには本当に良い仕事(?)をしますね。
九条くん、いつも「事務的」なんて言ってますけど、 実はお父さんのような「誰かを守る正義」にずっと憧れてたのかもしれません。 シロちゃんを撫でる手が、いつもよりずっと優しかったのを私は見逃しませんでしたよ!
さて、運命の絆で結ばれた二人が挑むのは、 獣人たちを不当に扱う「闇オークション」の壊滅! お父さんが果たせなかった「正義」を、息子と元相棒が異世界で執行します!
次回! 「九条蓮、怒りの一斉検挙! 〜事務員、父の遺志を継いでオークション会場を更地にする〜」
如月さんも桃華ちゃんも、九条くんのために本気を出します! お楽しみに!




