第二十八話:シロの前世と、小さな「誇り」
管理局の食堂。シロは、蓮から与えられた「災害救助・獣人ユニット」の制服に身を包み、おずおずとスプーンを握っていた。
「……九条様。シロさんの前世、気になります? 気になりますよねぇ!」 カゲミツが、待ってましたと言わんばかりにシロの影からヌッと現れる。
「やめて、カゲミツ。彼女のプライバシーに踏み込みすぎるのは——」 蓮が制止しようとするが、シロ自身が小刻みに尻尾を揺らしながら、「わたし、まえのこと、よくわからないから……しりたいです」と小さく呟いた。
「よし、じゃあバラしちゃいますよ! シロさんの前世は、日本の警察に所属していた**『現役バリバリの警察犬』**のハナちゃんです! 功労賞を何度も貰うほど有能だったんですけど、最後は犯人を追ってビルから転落した相棒の警官を助けようとして、一緒に——。……で、転生する時に『次は相棒(人間)と同じ言葉で喋って、もっと近くで助けたい!』って願って、この姿になったみたいですね!」
「……っ!」 シロが耳をぴんと立て、大きな瞳に涙を溜めた。 「……そうだ。わたし、おじさんのこと、助けたかった……。おじさん、いつも、頭なでてくれた……」
「なるほど。前世から『法執行機関』のプロフェッショナルだったわけですか」 蓮は満足げに頷き、一通の辞令をシロの前に置いた。
「シロさん。あなたの前世での『相棒』を思う心は立派です。……ですが、今はあなたが、あなたの意志で人を助ける番だ。……この管理局での初仕事は、闇オークションに残された他の獣人たちの『捜索と確保』。……かつての相棒に誇れるような、立派な『管理局職員』として動けますか?」
「……はい! 九条さま! わたし、がんばります! クンクンして、悪い人たち、全部見つけます!」
シロの尻尾が、プロペラのように激しく回転し始めた。 前世では言葉が届かなかった。けれど、今は自分の言葉で、自分の正義を貫ける。 それは、在庫として捨てられかけた彼女にとって、何よりの「更生」だった。
「……あ。ちなみに九条様」 カゲミツがニヤニヤしながら付け加える。 「シロさんの前世の『相棒のおじさん』、実は顔が九条様にそっくりだったらしいですよ。だから彼女、九条様に撫でられると、前世の癖で足がガクガク震えて喜んじゃうんですって!」
「……カゲミツ。……黙れと言ったはずです」 蓮の耳が、わずかに赤くなったのを、如月とベルフェリエは見逃さなかった。
「九条様……。シロさんへの『頭なでなで』、私と交代していただけませんか? 私も前世で犬を飼っていた(嘘)ので、慣れています」 「如月さん! その嘘は無理がありますよ! 私の方が魔力で快適な温度に手を温められます!」
「……業務に戻ります。シロ、出発です」
九条蓮を巡る、新たな「更生」と「懐柔」の物語が、より一層賑やかになっていく。
後書き
はい、発送課の女神です!
シロちゃん、前世はとっても立派な警察犬だったんですね! 「言葉を喋って助けたい」という願いが叶って獣人になったのに、 悪徳業者に捕まっちゃってたなんて……。 でも、九条くんという「新しい相棒(?)」に出会えて、 彼女の才能がようやく正しく開花しそうです。
それにしてもカゲミツくん! 「おじさんの顔が九条くんに似てた」なんて、余計な情報を(笑)。 おかげで如月さんたちのジェラシーが有頂天ですよ。 管理局の福利厚生に「精神的平穏の保持」を追加した方がいいかもしれませんね。
さて、次回! 「シロの初手柄! 〜闇オークション会場を鼻で特定し、九条蓮が『不当備品』を全品押収する〜」
一匹の少女の鼻が、異世界の闇を暴きます! お楽しみに!




