第二十五話:異世界派遣の闇と、鉄面の査察
「……シルバーセンター長。庫内温度マイナス二十五度、安定していますね。素晴らしい」 「はっ! 九条主任のお言葉、身に余る光栄にございます!」
中央冷凍流通センター。かつての「斉藤さん」こと銀竜の少女は、パリッとした制服に身を包み、見事な職務遂行能力を見せていた。 だが、その平穏を破るように、一人の男が部下を引き連れてセンターに乗り込んできた。
「いやあ、素晴らしい設備だ。だが九条主任、このドラゴンの雇用、うちの『ワールド・スタッフ派遣』を通してもらわないと困るなあ」
現れたのは、これまた高級そうな(だがどこか安っぽい)シルクのスーツを着た男。 カゲミツが影からひょっこり顔を出し、耳打ちする。
「九条様、ビンゴですよ! こいつ、斉藤さん(銀竜)が前世で働いてたブラック工場の社長、**悪徳 剛**です! こっちに転生してからも『人材派遣』という名の『奴隷売買』でボロ儲けしてるみたいですよ」
「……あ、悪徳社長……っ!?」 シルバーが恐怖で震え、周囲に冷気が漏れ出す。前世のトラウマが、伝説の竜を萎縮させていた。
「おい、斉藤。お前、うちを無断欠勤してこんなところで油売ってんのか? 契約解除の違約金、払ってもらおうか」
「……悪徳さん。お久しぶりです」 蓮がシルバーの前に静かに立ち塞がった。その瞳は、絶対零度のブレスよりも冷たい。
「彼女は現在、管理局の正職員です。貴社の『派遣契約書』を拝見しましたが……。なるほど、中抜き率九十パーセント、休日なし、さらに『死んでも契約は継続する』という魔法契約……。これは異世界労働基準法、第十二条『魂の不当拘束』に完全に抵触しています」
「はっ! 法律? そんなもん、この弱肉強食の世界で通用するかよ!」
「通用させるのが、私の仕事です」 蓮はバインダーから、真っ黒な表紙の書類を取り出した。
「これより、貴社に対する**『即時・強制労働監査』**を実施します。如月、全派遣スタッフの契約解除手続きを。桃華、抵抗する『営業担当(用心棒)』の鎮圧をお願いします」
「よっしゃ! 旦那の言う『更生』が必要な連中が山ほどいるな。……まとめて吹っ飛ばしてやるよッ!」
桃華が拳を鳴らし、管理局の「事務の鉄槌」が、異世界のブラック企業へと振り下ろされた。
後書き
はい、発送課の女神です!
ついに現れましたね、斉藤さんの天敵・悪徳社長! 名前からして「悪徳」って、もう隠す気ゼロじゃないですか。 前世のトラウマで震えるシルバーちゃん(斉藤さん)が可哀想でしたけど、 そこでスッと前に出る九条くん、マジでヒーローでした!
でも九条くん、法律の条文を読み上げる時の顔が、 悪徳社長よりよっぽど悪役っぽかったのは内緒にしておきますね。 「魂の不当拘束」……。異世界のブラック企業、闇が深すぎます。
さて、次回! 「強制労働監査、終了! 〜悪徳社長、ドラゴンたちの『保冷庫掃除係』に再就職する〜」
悪徳社長のその後と、解放された派遣スタッフたちの「第二の人生」。 九条くんのバインダーに、新たな「更生リスト」が刻まれます!
お楽しみに!




