第二十四話:ドラゴン、初めての履歴書
「……よろしい。ならば我、この『にんげん』の姿とやらで面接に挑もうぞ」
凄まじい光と共に、全長百メートルの古代銀竜が、一人の銀髪の少女へと姿を変えた。 ただし、頭には立派な角があり、背中には収まりきらない翼がパタパタと動いている。
「九条さん、見てください! めちゃくちゃ美少女じゃないですか! これは受付嬢とかに採用すれば、客寄せパンダとして——」 ベルフェリエが興奮気味に提案するが、蓮は首を振った。
「いえ。彼女の価値は、その外見ではなく『出力』にあります。……さて、銀竜さん。履歴書(仮)の記入をお願いします。特に『前世』の項目。カゲミツ、何か情報は?」
影からヌッと現れたカゲミツが、ニヤニヤしながら報告を始める。
「あー、九条様! この銀竜さん、実は『転生ドラゴン』ですよ! 前世はなんと、北海道の**『冷凍食品工場のライン工』**だった斉藤さん(35歳・独身)です! 道理で冷気の扱いがプロ級だと思いましたよ! ちなみに当時、工場の温度管理の厳しさに嫌気がさして『もっと自由に生きたい!』って願って転生したら、まさかの自分が保冷庫になっちゃったっていう皮肉な結末です!」
「……な、なぜそれを! 我の、我の社畜時代の秘め事をぉぉ!」
銀竜(斉藤さん)が顔を真っ赤にして地響きを起こす。
「なるほど。冷凍食品の品質管理(QC)の経験者ですか。……それは『即戦力』ですね」
蓮は満足げに頷き、バインダーから一通の**『特別雇用契約書(インフラ担当)』**を取り出した。
「斉藤さん……いえ、シルバーさん。あなたには、管理局直轄の『中央冷凍流通センター』の責任者(センター長)を任せます。主な業務は、ブレスによる庫内温度の一定保持、及び物流ルートの凍結防止。……福利厚生として、週に一度の『魔石サウナ』の使用許可と、前世で食べられなかった最高級のバニラアイスを支給しましょう」
「アイス……。それに、責任者……。我、前世ではずっと派遣社員だったのに、異世界で正社員……それもセンター長……っ!」
銀竜の少女は、感動のあまり冷気の涙を流し、その場で凍りついた。
「よし、更生……じゃなかった、再就職成功だな!」 桃華が凍りついたドラゴンをバシバシと叩き、如月がその温度を測りながら事務的にメモを取る。
こうして、異世界最大の脅威だった伝説の竜は、一人の事務員の手によって、世界一強力な「保冷システム」として社会復帰を果たしたのだった。
後書き
はい、発送課の女神です!
いやー、まさかドラゴンの正体が「元・冷凍食品工場の斉藤さん」だったなんて! カゲミツくんの情報網、もはやプライバシーの侵害レベルですけど、 おかげで九条くんの「適材適所」が完璧に決まりましたね。
「冷蔵庫」どころか「物流センター長」への大出世! 斉藤さんも、前世の恨みを今のスキルで晴らせて、なんだか幸せそうです。 これで異世界の生鮮食品の流通はバッチリですね!
でも、九条くん。 実はこの「就職説明会」を影で監視している、怪しい影がもう一つ……。 どうやら、斉藤さんを不当解雇(?)した前世のブラック企業の社長まで、 この世界に転生して「人材派遣業」を始めてるみたいですよ?
次回、第二部・中盤の山場! 「異世界派遣の闇 〜九条蓮、ブラック企業の元締めに事務の鉄槌を下す〜」
九条くん、元部下に続いて、今度は「転生した悪徳経営者」との対決!? お楽しみに!




