第二十三話:就職説明会と、招かれざる「超巨大」求職者
「……桃華さん。先ほどから『更生した』と言っていますが、あなたは最初から犯罪者ではありませんよ。ただの『公共物損壊の常習犯』だっただけです」
「あぁん!? 似たようなもんだろ! 旦那に詰められて、大人しく役所仕事手伝ってんだからよ!」
管理局の広場に特設された『第一回・異世界合同就職説明会』の会場。 桃華が警備担当として腕組みをして仁王立ちする横で、蓮は「更生」と書かれた看板を「整理」と書き換えながら溜息をついた。
今日の目玉は、人手不足に悩む商業ギルドや農業組合と、仕事を探している元転生者・現住魔族たちのマッチングだ。
「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! こちらは『元・暗殺者による高速デリバリー業』のブースですよ! どんな荷物も気配を消して、相手が気づかないうちに玄関に置きます! あ、ちなみにさっきの面接希望者、前世でストーカーだったらしくて『追跡能力には自信があります!』って言って九条様に即不採用(お祈り)食らってましたけどね!」
カゲミツが拡声魔法で余計な個人情報をバラ撒く中、会場の地面が突如として激しく揺れた。
ドォォォォン……!
「な、何事ですか!? 地震!?」 ベルフェリエが空に飛び上がって周囲を警戒する。 すると、会場の向こうにある山脈が動き出し、巨大な影が会場を覆い尽くした。
そこに現れたのは、全長百メートルを超える伝説の『古代銀竜』だった。
「……我は、山を統べる者。……近頃、山の獲物が減り、食うに困っておる。……そこで聞いたのだ。ここで『しょく』というものを紹介してくれると」
「ひぃぃっ! ドラゴンが面接に来ちゃったよ!」 「九条さん、無理です! こんな大きな求職者、受け入れられる企業なんてありません!」
パニックになる会場。しかし、九条蓮は動じなかった。 彼は巨大な竜の鼻先まで歩み寄り、バインダーを掲げて言い放った。
「……古代銀竜さん。まずは、その巨体で会場の仮設テントを三つ潰した損害についてお話ししましょうか。それから……あなたのその『冷気のブレス』、物流業界の『冷蔵倉庫』として、非常に高い適正を感じます」
「……なに? 我が、倉庫……?」
「ええ。季節を問わずマイナス三十度を維持できる能力。まさに、この世界の食糧自給率を支える『守護神』になれます。……ただし、まずは人間サイズに化ける魔法の習得が、採用の絶対条件(スキル要件)となりますが」
伝説の竜を前にして「冷蔵設備」としての適性を見出す事務員。 そのあまりの動じなさに、ドラゴンも、そして「更生」したはずの皇たちも、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
後書き
はい、発送課の女神です!
桃華ちゃん、「更生」なんて言葉を使って九条くんにツッコまれちゃいましたね! 彼女としては「暴力を振るわない=更生」くらいの感覚だったんでしょうけど、 九条くんにとっては「ただのルール順守」でしかないっていう……。 この温度差が、二人の面白いところですよね!
それにしても、ついにドラゴンまで仕事を探しに来ちゃいました。 「伝説の竜」を「冷蔵庫」扱いするなんて、九条くんの職業適性診断、 ちょっと斬新すぎやしませんか!? でも確かに、銀竜のブレスがあれば、夏場のアイスも溶けませんね!
さて、次回は「ドラゴン、初めての履歴書」。 人間サイズになった美少女(?)銀竜と、彼女を巡る新たなトラブルが勃発!? さらに、カゲミツくんがドラゴンの「意外すぎる前世」を暴いちゃうかも……?
お楽しみに!




