第1章 最終話:神への退職勧告
空を覆う「在庫のバグ」が、三人のヒロインたちの猛攻で四散していく。 爆炎の中、三人は互いに武器を向け合い、蓮の「隣」という名の内定を賭けた最終決戦を始めようとしていた。
「邪魔です。九条様の隣に座るのは、事務能力も戦闘力も完璧な私一人……!」 「愛より確かなのは経済力です! 私が九条さんを買い占めて、天界ごと養ってあげます!」 「理屈じゃねえ! 旦那を泣かせる神もろとも、俺がまとめて更地にしてやる!」
激突寸前の三人。その間に、影から這い出したカゲミツが、見たこともない「黒い封筒」を掲げて滑り込んだ。
「はいはいストップ! 皆さん、九条様を奪い合う前にこれを見てください! 女神様が隠してた、『異世界裏帳簿・完全版』ですよ!」
カゲミツが封筒を開いた瞬間、空に巨大な「粉飾決算」のリストが投影された。 女神がこれまでリストラした勇者たちの装備を横流しし、私腹を肥やしていた証拠。そして、この世界を「ゴミ捨て場」として他世界へ売却しようとしていたM&Aの全貌だ。
「……なるほど。これが『経営陣』の正体ですか」
蓮は静かに歩み出し、三人のヒロインたちの視線を背に、天界の門を見上げた。 「如月さん、ベルさん、桃華。……あなたたちの力、私に貸してください。私の『定年退職』を邪魔するこの不当な経営を、物理的に却下しに行きます」
「「「……仰せのままに(当たり前だろぉが)!!」」」
蓮はバインダーから、特大のスタンプが押された一枚の書類を取り出した。 それは、本来なら部下が上司に送るはずのない、『経営陣への退職勧告状』。
「女神様。あなたの不適切会計、及び労働基準法違反を以て、本日付で『神』の座からの解任を要求します。……異論は、監査の場(法廷)で伺いましょう」
蓮のスキル『翻訳不全』が、天界の防壁を「無価値な書類」としてシュレッダーにかけた。 立ち上がるヒロインたちのオーラと、不敵に笑う隠密。そして、世界で唯一「神」を在庫として処理しようとする事務員。
「……さあ、最後の残業を始めましょうか」
朝日が昇る中、彼らが見据えるのは、もはや地上ではない。 神が支配する「天界のバックオフィス」そのものだった。
第1章:在庫一掃編 ――完――
【後書き】
はい、天界の発送課です! ……って、もう冗談言ってる場合じゃないわね。九条くん、あなた本当に私の「裏帳簿」まで引っ張り出してきたの!?
ちょっと、如月さんの手刀で私の金庫が壊されてるんだけど! ベルちゃんの魔王軍が天界のサーバーをハッキングしてるし、桃華ちゃんが門番を全員埋めてるし……。
いいわ、九条くん。 ここまでやるなら、神としての「最終決算」を見せてあげる。 定年退職? そんなの、宇宙が滅びるまで認めないんだから!




