第10話:執行猶予(プリン)と地獄の三者面談
「オラァ! どいつもこいつもシャバ僧が! 転生者なら転生者らしく、筋通しやがれッ!」
管理局のロビーに、場違いな怒号が響き渡った。 そこにいたのは、ブカブカの特攻服を羽織った桃色の髪の少女。背中には『天上天下転生唯我独尊』という金刺繍が躍っている。
「……九条さん。また彼女です。自称・転生者自警団『極楽浄土』の総長、桃華さん」 受付のエルフが死んだ目で報告する。蓮は溜息をつき、暴れる「幼女総長」の前へ立った。
「桃華さん。庁舎内での大声は禁止です。それと、その特攻服は『公共の場における威圧的意匠』に該当しますよ」
「あぁん!? 九条の旦那じゃねえか! 聞いてくれよ、うちの新入りが『チートがねえから』って理由で、隣町のギルドにカツアゲされたんだわ! メンツ丸潰れだろぉが!」
桃華は蓮の胸ぐらを掴もうと背伸びをするが、届かずに地団駄を踏む。素手でドラゴンを解体する武力も、蓮の「正論」には届かない。
「暴力での報復は認めません。……それより桃華さん。ちょうど良かった。あなたに『三者面談』の通知が出ています」
「……さんしゃ……めんだん?」
蓮は彼女を強引に連行し、魔王軍のベルも同席する会議室へ放り込んだ。そこには、どこから持ってきたのか「進路希望調査票」を手にした女神が、ニコニコと座っていた。
「はい、それじゃあ面談を始めまーす! 担当は私と、管理局の九条くんね」
「な、なんだよこれ! 旦那、この女は誰だ!」 「私は天界の発送担当。いわば、あなたの『出荷元』よ、桃華ちゃん」
女神が書類をめくる。 「えーと、桃華ちゃん。君はこれまで、市街地の破壊32回、他ギルドへの不当な殴り込み15回……。残念だけど、今回の『在庫一掃プロジェクト』の強制送還リスト、ぶっちぎりの一位指名でーす」
「強制、送還……? 嘘だろ、俺、シャバに戻されたらただの引きこもりに逆戻りだぞ!」
桃華の顔が真っ青になる。そこへ、蓮が冷徹な追撃を加えた。 「――『翻訳不全』。投影開始」
桃華が見たのは、自分が消えた後のギルドの姿。 頼れる総長がいなくなった『極楽浄土』の子分たちが、他ギルドに奴隷同然に扱われ、道端で泥水を啜る悲惨な未来予想図。
「あ、ああ……っ! 俺が……俺がいないと、アイツらが……っ!」
「救いたいなら、条件があります」 蓮は一枚の『更生プログラム同意書』を差し出した。 「あなたの武力を、管理局の『治安維持部隊』として公認します。ただし、今後は拳ではなく法の執行(書類仕事)に従事すること。……あと、週に一度、私と一緒に算数の補習を受けてもらいます」
「九条さん、相変わらず手懐けるのがお上手で……」 ベルが呆れる中、桃華は震える手で同意書にサインした。
「……分かったよ。アイツらを見捨てられるわけねえだろ。……その代わり、旦那。終わったら、例のプリン奢れよな!」
こうして、事務員・悪魔・ヤンキーロリという、異世界最強の「在庫処理チーム」が結成された。
【後書き】
はい、天界の発送課です! ついに三者面談、やっちゃいましたね。九条くん、ヤンキー少女に「算数の補習」を条件に出すなんて、本当に彼女の弱点(頭脳)をわかってます。
でも、桃華ちゃんみたいな武闘派を味方につけたのは大きいですよ。 これから始まる「強制送還プロジェクト」……、話の通じない暴徒たちを黙らせるには、彼女の拳と九条くんのバインダー、この二つが揃えば無敵かもしれません。
それにしてもベルちゃん、桃華ちゃんが九条くんに懐き始めて、ちょっと嫉妬しちゃってませんか? 魔界のオフィスが、だんだん賑やか(修羅場)になってきましたね!
次回、『リストラ反対! 勇者連合のストライキを、差し押さえで粉砕せよ』。 お楽しみに!




