いつかまた会いたいね
『何時かまた会いたいね』
17才になり、いずれは結婚したい人を見つけた。きっと、最愛の恋人だと思っていた。きっと狭い空間に二人でいた。学校は閑散としていた。とても寒く感じた。冬になり温かい風が吹いていた。ずっとそんなものかと思った。
学校は行く楽しみが、半減していた。
誰かと恋愛できるかな。そうなればいいなと考え付いた。
席を数えるのを躊躇うほど、一人の男を見ていた。その想いはきっと、狂ったように伝わる事である。そう信じたかった。
「何時かまた会いたいね」
「ああ。そのうち迎えに行くよ」
「結構楽しかった。別れは悲しいけど、学校を退学したらしょうがないね」
「まあ、それなりに楽しめたし。体力には自信があるからさ。肉体労働に向いているんだと思う」
そうして、私は校内の視聴覚室でキスをした。何故か鍵が開いているからだ。壊したのは、彼氏だけど。
ずっと、一緒にいようと言ってくれたのに。私はきっと、目頭が熱くなった。もう二度と逢えないから。だから、悲しかった。
「そう泣くなよ。大学行くんだろう?いい男が勢ぞろいしていると思うぞ」
「馬鹿。そんな軽くてやわな絆ではない」
「そうだな。短かったけど、よく付き合えたよ」
「私が、恋人が出来なかったらアンタのせいだからね」
そうして、彼氏がいない高校生活になった。早く結婚したかった。単なる結婚願望が宝石のように綺麗にあった。それはもう宝物ではなくなった。
受験勉強は順調であった。結構真面目の受験校を探している。そこで法律を学ぶ為であった。将来は弁護士になりたかった。多分無謀だけども。
青白い光の中で二人は絆を解けてしまい、私は人前で初めて泣いた。
受験後には笑っていると約束をした。確認できない約束だけど。
元彼のメールを待っていた。もし、来たら。来る筈もなかった哀しい半年間。彼氏は辞める前に想いを受け取ってくれたと思う。彼氏は今頃、どうしている?分からないから、悲しみが増す。今でも好きだった。椅子の上に座っていると、つい、眠りに落ちたくなるが、今の成績では手が届かない。だから、成績を上げようとして、休日は四六時中、勉強している。
こんな高校だと思ったが、エリートのいない高校だから、遊びの種類。授業のさぼり。友人たちとの雑談。すべてが綺麗だった。
受験はきっと受けると思えるようになった。一度や二度挫けても、いい方向へ。そう思っていた。きっと、新しい人が私を愛し、そして、いずれは弁護士。それが私の今のやりたい事である。
――冷たい春の日。私は出逢ってしまった。三人目の彼氏と。二人とも自然に話すようになった。今まで感じたこともない奇妙な感覚で。
一緒に帰るようになってから、部活を辞めた。彼氏は深夜のコンビニにバイトをしていた。私は休日だけ、バイトの時間前に彼氏が住む場所で、話をしている。いつも、嬉しくて、淋しい感じもしていた。
雨が降らなくても、最高の晴れ渡る「夜空」を見ながら帰って行った。
そして、高校二年になり、私と同じような気持ちになったらしい。
「たまには普通のデートでもするか」
バイトは早朝だけにして、遅刻をして学校に通っていた。
その時から、私の願いは結婚だった。
いつも、一緒にいる親友の亜衣か、友人の朋美たちと話しながら、学生生活は終わりになってきた。親友の亜衣が、
「私は一体どうすればいいのだ」そう悩みを打ち明けてくれたから
「別に平和に過ごせばいいんじゃない」
そう言いながら暇な時は二人で『運命の時』でコーヒーを飲んでいた。どんな種類の豆か分からないが美味しかった。
そして、プライベートも勉強に費やす事にした。メールをする時は休憩時間なんだなと思った。
私は猛烈に勉強しているから、少しコーヒーを飲む時間が減った。それが無かったとする。身体がこの生活に合って、ただ目標に向って頑張ってきた。
そして、私と夫候補の男は、きっと別れるんだなと思い始めた。家庭の事情を話してくれた。
「学校辞めたら、どうする?」
「俺は工事現場の仕事をするよ。父親がいないから」
「そっか」
それで納得した。私はずっといられる時間が少ないのを知り、涙が出そうになった。
「もう帰るね」
そう言って、原付を乗り回して、外の空気を浴びた。眼が微かに燃えていた。それは、別れの挨拶を交わしたかもしれない。多分だけど――
私はぎりぎりな所で成績が足りるはずだった。いつか、高校は単なる想い出から思い出になり、きっと好きな気持ちも風化してしまう。そんな気がしていた。
そして、センター試験でも高得点を取った。満遍なく苦手科目がない。
朋美は歯科医師になるらしい。行きつけの『運命の時』でコーヒーを飲んでいる。
「私もベンツ乗りたいから」
不純な動機だ。朋美は飄々としている。いかなる時でも、話題を作るのも得意だし、彼氏もそれなりに好きだと言っていた。性格はある意味で素直だ。
「亜紀ってさ。意外に男を替えるよね。猫被っているのかな。私たちの前では」
「まあ。それでも、他人の事なんてどうでもいいよ」
「亜紀に言ってみよう」
「奢ってあげるから、『悪かった』と言ってくれないかな」
「いいよ」
そして、モスに行く事にした。珍しく三人でいけない。他に用事があるらしい。
そして、「また何時かまた会いたいね」と言って来た。私も同じ気持ちだった。
亜紀はもうすぐ結婚するようだ。
「その時は、知らせるから、絶対来てよね」
「夫の不細工な顔を見るのも一興だし。別にいいよ」
朋美は?彼氏とデートかい?
「ベンツを買いに行ったみたいだよ」
「そんなにお金持ちなの?」
「歯科医師の経営をしているみたいなの」
「たまには飯を奢れってな。金持ちなんだから。その前に、ベンツ買う金が出来たら、私にくれ」
「無理に決まっているじゃん」
「あはは。つい願望が」
アイルランドみたいに淋しい空を見ていた。そして、ウエディングドレスを着た花嫁がやってきた。赤いバージンロードを夫と歩きながら、これからどうなるか分からない結婚生活。上手く行けばいいな。亜紀の未来が。どうせ、私には関係ないけど、大学に入ったら私も同じ道を歩みたいと願う。
そして、大学に進学して学生結婚をした。大学が卒業したらのはずが、大学の途中で結婚した。私たっての願望で。女は忘れながら恋に堕ちる。例え大切な記憶があっても。親友と友人たち。何より私を選ばなかった元彼を想った。今の関心は大学の友人たちではなくて、結婚してくれた旦那だと思っている。それが私の今の全てだから。