たくさん食べるあなたと
「私ね、少し前に気付いたことがあるの」
「ふーん、なに?」
「興味なさそうな返事〜……。まあいいや、聞いて。最近テレビでグルメ番組を見てて、人がな にか食べて幸せそうな姿を見るのが好きだな、って気付いたんだよね」
「……自分も食べたいなって思ったんじゃなくて、食べてるのを見るのがいいの?」
「そうなんだよね。……いや、食べたいなって気持ちもなくはないんだよ? でも、私ってそんなにたくさんは食べられないんだよね。だから、自分が食べるよりも、食べてる人を見るのがいいな、って思ったの」
「あー……シオリは確かにそんなに食べない印象あるわ。カツ丼を一杯だけでもキツそうだもんね」
「でしょ? でも、私があんまり食べられないからって、周りに遠慮されるのも嫌なわけ」
「……だから何? 私はこれからも遠慮しないで食べてねってこと?」
タカコのその言葉を聞いて、私はとても嬉しく感じた。
「そうだよ! タカコは私に遠慮しないでたくさん食べてくれるから、タカコと一緒にごはんを食べるのは楽しいの! だからたくさん食べてね」
タカコは少しなんとも言えないような顔をしたような気がする。
「まあ、シオリに言われなくても、私は遠慮なんかしないで食べたいもの食べるけど、わかったよ」
「ありがと!」
「いや、お礼を言われることはしてないと思うけど……」
「まあいいでしょ」
私はそう言って、オレンジジュースを口を含んだ。
〈了〉