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虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~  作者: 星名柚花


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53:エヴァたちの末路

 花々が咲き誇る王宮のサンルームに、紅茶の芳醇な香りが漂っていた。

 ここ最近働きづめだったフィルディス様の労をねぎらうために、ルーク様がお茶会を開いてくださったのだ。


 お茶会の参加者は主催者であるルーク様と私とフィルディス様、エミリオ様。

 ルーク様の背後には近衛と女官が控えている。

 さらに私の周りには大勢の精霊たちがいるけれど、会話の邪魔はしてこない。

 精霊たちはサンルームの花と戯れたり、精霊同士で勝手に盛り上がっていた。


「本当に君たちは素晴らしい活躍をしてくれるな。王都に巣食う犯罪組織を潰しただけではなく、モルドー商会の裏に潜む闇をも取り除いてくれたこと、どれだけ感謝しても足りないよ。おかげでモルドー商会と繋がっていた反王派の貴族たちに打撃を与えることができた。これを機に不穏分子を一掃できそうだ」

 ルーク様はティーカップをソーサーに下ろし、唇の両端を上げた。


「お役に立てて何よりですが、あれは成り行きと言いますか……リーリエに頼まれて行っただけですので」

 フィルディス様は私の斜め後ろを見た。

 私の近くにいるたくさんの精霊の中に、髪飾りを盗もうとした精霊やその仲間たちも混ざっている。

 ベンデルク家から救出された精霊たちの半分が加わったおかげで、さらに私の周りは騒がしくなった。


「なんで成り行きで悪党のアジトを壊滅させることになるんだよ。二人で楽しくお祭りデートに行ったんじゃなかったの?」

 エミリオ様は焼き菓子を片手に苦笑している。


「そのつもりだったんだけどな。リーリエに頼まれたら嫌とは言えない」

「すみません。でも、悪党相手に無双するフィルディス様、本当に格好良かったですよ。惚れ直しました」

「なら良かった。雑貨屋にはまた今度改めて行こう」

「はい。楽しみにしています」

 しばらく雑談を挟んだところで、ふとルーク様が言った。


「ところで、君たちの祖国であるルミナス神聖王国について調べさせてみたのだが。つい先日、王が急死して第二王子が後を継いだらしいぞ」

「えっ!?」

 ルーク様以外の全員が驚いた。エミリオ様は息を呑んでいる。


「リーリエを追放した直後、ルミナスは瘴気に包まれ、魔物が大量発生したらしい。農作物は枯れ果て、疫病が広がり、大勢の民が命を落とした。表向きは『病死』とされているが、国がここまで堕ちたのはリーリエを追放した王家の愚行だと、誰かが王を暗殺したのかもしれないな」

 先代国王の死の真相が隠蔽されたことを思っているのか、ルーク様は遠い目をした。


「待ってください。王太子であるレニール様ではなく、第二王子が後を継いだのですか?」

 私は戸惑いながらフォークを置いた。

 まだケーキは半分以上残っているが、あまりにも衝撃的な話を聞いて食欲が失せてしまった。


「ああ。王は亡くなる前にレニールとエヴァを《黒の森》へと追放していた。リーリエの追放により大混乱に陥った国を見て、その責任を二人に押しつけたのだろう。玉座の上から追放を命じたのは自分だというのにな」

「……は。結局、あいつらが《黒の森》送りにされたのか。因果応報だね」

 ルーク様は嘆息し、エミリオ様は唇を歪めた。


 ――レニール様とエヴァが《黒の森》に送られた……。

 動揺して、私は胸を押さえた。


「リーリエ、大丈夫か?」

 フィルディス様が心配そうな顔をしている。


「……はい。それが、大丈夫だからこそ困っているんです。義理とはいえ、エヴァは私の妹。レニール様は元・婚約者です。悲しむべきだとわかっているのに、涙の一つも出てきません。私は薄情者でしょうか」

「そんなことはない。リーリエが受けた仕打ちを思えば当然のことだ」

 フィルディス様の言葉には迷いがなかった。

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