表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虐げられた聖女は精霊王国で溺愛される~追放されたら、剣聖と大魔導師がついてきた~  作者: 星名柚花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/55

29:エミリオを探して

 王女を救った大聖女ということで、私はラザード様から様々な特権が与えられている。

 その一つが、王宮にある各種専門施設や機関への立ち入りだ。

 塔の前には黒いローブを身に纏った魔導師たちが立っていたけれど、私は所持品検査も身体検査も何もされることなく通された。

 聞き込みの結果、エミリオ様は七階の大講義室にいると知って階段を上る。


 大勢の精霊を引き連れて歩く私を、魔導師たちが驚いた顔で見ている。

 こうした視線には慣れたものなので、私は気にすることなく七階へ向かった。


「ややっ!? 精霊の大群! その金色の《聖紋》は! あなたはもしや噂の大聖女リーリエ様では!?」

 五階に着いたとたん、眼鏡をかけた女性の魔導師に捕まった。

 栗色の髪をお下げにした彼女――イヴさんは今年官僚試験に合格したばかりの魔導師見習い。

 二つ年下の妹が聖女で、将来は《聖紋》について研究したいのだと熱を込めて語ってくれた。


「あの、そろそろ……」

 イヴさんと廊下で立ち話をし始めてから既に三十分は経ったのではないだろうか。

 そろそろ話し疲れたし、喉も乾いた。

 あれほどたくさんいた精霊たちも長話に退屈したらしく、その数は十体ほどに減っている。


「あっ、すみません! 質問攻めにしてしまいました! 貴重なお時間を頂きまして誠にありがとうございました! おかげさまでとても有意義な時間を過ごせました、もし宜しければ今度一緒にお茶でも飲みましょう!」

 握っていたペンとメモ帳を下ろし、イヴさんは深々と頭を下げた。


「はい、是非」

 私は微笑みで応じ、再び階段を上り始めた。

 七階に辿り着き、光が降り注ぐ廊下を歩く。

『大講義室』と書かれた目的の扉はすぐに見つかった。


 ――講義の邪魔をしては駄目よ。いい子だから、静かにしてね。部屋には入らないで。


 私は精霊たちに念押ししてドアノブを掴んだ。

 縦長に開いた隙間から、そっと部屋を覗く。


 広い部屋は階段状になっていた。

 整然と並べられた机には黒や赤や緑のローブを纏った魔導師たちが座り、真剣な面持ちで前方を見ている。


 イヴさんが教えてくれたのだが、黒のローブは魔導師『見習い』で、緑のローブは修練中の『魔導士』、赤のローブは熟達した『魔導師』という意味らしい。


 彼らの視線を追って、私は前方に目を向けた。

 図形と文字で半分が埋まった黒板の前にはエミリオ様が立っていた。


 ――えっ!? エミリオ様!? 

 私は驚愕に目を剥いた。


 てっきり優秀な魔導師の講義を聞いているのだとばかり思っていたのに、まさか教鞭を振るっているとは!!


「――では次に、イリスフレーナの王宮を守る結界について個人的な意見を述べます。現行の結界は四大精霊の助力と大気中の魔素を複合利用することで常時起動されています。古代より受け継がれてきた魔導式による堅牢な結界は、幾世代にもわたりこの国を守ってきたことでしょう。しかし、私が見た限りでは、いくつかの問題があるように思えます」

 エミリオ様はチョークを手に取り、黒板に新たな図形を描き始めた。


「結界は複数の防御層で構成され、それぞれの層が独立して機能する設計になっています。一見すると合理的に思えるかもしれませんが、この構造には大きな欠点があります。たとえば、ここを見てください」

 エミリオ様は図形の一部分を指さした。


「この層が破られた場合、外側の防御層は内部層への干渉を阻止する術を持たず、内部層が単独で防御せざるを得なくなる。このように各層が孤立している構造では、一点の突破が全体の崩壊につながりかねません。また、精霊の力に依存しすぎている点も問題です。何らかの要因で精霊たちが衰弱した際、大きく弱体化する恐れがあります」

 大真面目に話しながら、エミリオ様がこちらを見た。

 エミリオ様は表情を変えることなく、すぐに他の人に目を向けたので、扉から覗く私に気づいたかどうかはわからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでいただき、誠にありがとうございます。 ★やブックマーク等、評価していただけましたら大変励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ