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fase.0 time to death...oh, We are already dead once

 その仕事は「不可能である」という一点を除いて、彼女たちが適任だった。

 ここ最近では5度目である高層電波塔のハイジャック。電波塔の中途に設けられた展望台に入り込んだ複数の、賊。ただしただの賊ではない、スピリットと化した男たちが全部で5人。

 スピリット、つまり霊体と化した男たちは物理的に人物や物質に危害を加えることはできない。だが同時に人体にも物理的障壁にも干渉されなくなる。

 この性質を利用した画期的犯行が、時限式爆弾を設置して幽体離脱し己の肉体を隠匿。その上で大々的に犯行を喧伝し人流を抑制し、爆破までに資金を指定口座に振り込ませる手口。

 弾丸も爆風も、抵抗する人質の拳すらすり抜けるし抵抗できないスピリットの犯人たちによって、首都にある高層電波塔はすでに10数回も標的になり、2回建て直している。その際の死者は云うに及ばず、万単位だ。

 「……ま、その死者から何万人が()()()()()()分からないけどね~」

 電波塔の数百メートル上。そこでどこぞの制服に身を包んだJKが思い思いの武装に身を包んで、陸上自衛隊のCH-47UnDdに乗り込んでいた。

 型式通り、無人──というより、一度墜落して自我を得た「スペクター・タイプ」の大型ヘリは、己が思うがまま国防に準じている。よって下のほうでブンブン飛び回るハエのような幽霊どもを止めんと声亡き志願心でJKたちを乗せている。

 JK、とはいうものの。確かに彼女たちは立派に未成年だが歴戦の兵士だ。彼女たちには共通項が10個もへったくれもないが、どのJKも己の銃を手足が如く取り扱う。

 「それで?UDJKSqDは何をすればいいの?」

 この分隊のリーダーであり、エルフの軽米カルタが任務内容をHQに確認する。超絶美麗の長耳が質疑すると、人間から歩く死人までいる陸自の中から今回は生きた人間が答えてくれた。

 《貴君らの任務は、単に腐れスピリットどもの肉体を発見し、抹殺するものである》

 「おいおい、怒り心頭で国防仕草もカンカンだな。こりゃテロリスピリットどもの体、ミンチにしてフルコースディナーにでも出さないと気が済まなそうだぜ」

 くだらぬグロティック・シモを宣うのはゾンビの真島レオナ。副官にして頼れる怪力持ち。玉に瑕なのはグロティシズム耽美派なので言葉がグロに塗れていること。

 「ま、結末変わらないからいいんじゃない。テロリストとテロリズムには死を持って償うべし、てだけで。それに私はぁ~……殺せればそれで満足」

 豊満な胸の下に大きなマチェーテをつけた偉丈夫、猿鳥アスカはそう嘯く。彼女の額には大きな角、そして胸に負けぬ強靭な筋肉。彼女は獄卒……ザ・ジャパニーズ・オニ、その人だ。獄卒故、殺して蘇らせて永遠の責め苦を与えるのが趣味であって生きがい。そして彼女にはそれができる。

 「まったく、野蛮な方しかおられませんこと。もっとスマートに、実行力を持った作戦立案はできませんこと?こと?」

 ことこと五月蠅いのは琴秋ミツキ。外見的特徴は特にない──スペード型の先端を持つ赤く細い尻尾を生やしていること以外は。出自不明の悪魔故上流ぶるのが趣味だが、そもそも知識が足らないので最近はことこと言っていればブルジョワジーだと思い込んでいる。

 「……そろそろ上空です。私は飛べますが皆さんは飛べるんですか?」

 そんな破天JKZたちを胡乱気に見つめる新兵、吸血鬼の英愛カトリナ。英国と日本と、ルーマニアのクオーター。彼女の血はすべてに勝り、彼女はすべての血液によって心をかき乱される。だが戦力としては一流であり、スカウトされてこのヘリに乗り込んでいる。

 カトリナの問いかけに、全員が顔を見合わせて忍び笑い。さもおかしいことをカトリナが言ったかのように嘲笑し、代表してカルタがカトリナの無垢への侮蔑を意見表明。


 「それ、アンデッドに必要ですか?パラシュートがお入りなら壁にかかってるのを剥がしなさいな。銃を固定するフックが欲しいなら、己の指でも折り捕ってフックに活用なさい。アイウェアが欲しいですか?吸血鬼は眼球を再生できないのですか?ルーマニアの血脈はその程度なのですか?

 繰り返します、私たちはUNDEADですよ?そんなものに頼る必要あるなら、この場所に呼ばれてませんわ。すこしは頭を、死人らしく濁らせなさいな」


 カルタの侮蔑が炸裂。カトリナは頭に血が上るのを確認。直後、全てを洗い流す「降下」を示すブザーと回転灯の点滅。

 「ま、この作戦が私たちの歓迎会ですわ。ついてこられるなら、着いてきなさい」

 ゆるゆると立ち上がり所定の位置につくUDJKSqD。カトリナも意識を作戦に統一させて、全員の最後に付いた。

 そして──当然のようにパラシュートも、銃を固定するフックも、アイウェアもつけないまま。

 アンデッド・スクワッドは「二度目の生」をテロリズムに傾倒するくそ野郎どもを殺すために飛び出していった。


 この世はもう、一度の死だけじゃ死ねない。

 殺されきるまで、死ねやしない世の中だ。

 この世界で、一度死んだ訳アリJKが一度も死んでない人間を護るために銃把(グリップ)を握る。

 腐り切った世界だがそれでも、UDJKSqDアンデッド・スクワッドの面子は二度目の腐り切った生を満喫していた。

 




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