第5話 巨躯のゾンビ、現る ~ゲーム世界編~
けたたましく鳴るサイレン。
「〈安室令奈〉まさか襲撃……!?」
とっさに私は身構えた。
ここは誰もいない小さな公園――襲撃を受けるとなると動きづらいし、夜なので暗く、あまりにも分が悪い。
「〈安室令奈〉……少しでも明るい場所に行かなきゃ」
私は気配を殺し、寂れた公園から大通りのほうへと移動する。
「〈安室令奈〉……? 今、なんだか地面が揺れたような……地震かしら」
最初は地面の揺れに首をひねっていたが、大通りに近づくにつれ、その揺れの正体が分かった。
「〈安室令奈〉違うわ。これ、地震じゃない……誰かが戦っているときの地響きよ!」
大通り前まで来ると、その全貌が明らかになった。
車道で巨躯のゾンビと相対するのは、あのとき基地内にいた鼠色の作務衣を着た、大柄の坊主頭の壮年男性。
「〈巨躯のゾンビ〉オォォォン……」
「〈作務衣を着た男性〉こりゃ参った。どういうわけか、奴のバランスを崩そうにも、奴め、すぐに体勢を立て直してしまうな」
作務衣を着た男性の後ろでは、白のワンピースを着たピンク髪ボブの妙齢女性が気を失い、地面に倒れていた。
すぐに私は状況を飲み込むと、作務衣姿の男性の横に並んだ。
「〈安室令奈〉加勢するわ」
「〈作務衣を着た男性〉むっ、あんたは……そうか、恩に着る」
「〈安室令奈〉要は、動きを封じればいいのよね」
「〈作務衣を着た男性〉ああ、そうだ。そうすれば、あとはワシの雷鉄拳を奴の脳天にお見舞いできる」
「〈安室令奈〉任せて」
私はゾンビと向かい合うと、眠気を爆発に変換するべく、意識を研ぎ澄ました。
私の殺気を感じ取ったのだろう、その刹那、おぞましい怪物が素早く動き出した。
「〈巨躯のゾンビ〉ウォォォン!」
冷静に、冷酷に――私はゾンビの頭上で眠爆を起こした。
だいぶ爆発の威力は下がったけれど、眠爆はそれなりの威力があり、爆発の衝撃波によって、ゾンビの膝から下は硬いコンクリートにめり込み、怪物は地面に手をついた。
よし。
すかさず、作務衣を着た男性はゾンビに襲いかかる。
見れば、彼の右手は青白い稲妻を伴い、放電していた。
「〈作務衣を着た男性〉食らえ、雷鉄拳……!」
稲光とともに、彼の鉄拳は巨躯のゾンビの脳天を直撃し、殴り焼き殺した。
怪物がピクリとも動かなくなるのを確認すると、私と作務衣を着た男性は互いに握手を交わした。
「〈獅子舞海輝〉安室くん、助太刀感謝する。申し遅れたが、ワシの名は獅子舞海輝だ。以後、よろしく頼む」
「〈安室令奈〉こちらこそありがとう、獅子舞さん。ナイス鉄拳だったわよ。よろしくね」
そのとき、私たちの背後にいたワンピースを着た女性が、短いうめき声を上げてから、ゆっくりと起き上がった。




