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小説家になろうラジオ大賞5

パスワードを捧げよ

作者: 尾手メシ

「何だ、これ?」

「どうした?」

 声に振り向くと、彼が解析していた古代の遺物が何やら光っていた。

「おっ、動いたのか、それ」

「ああ、動いた。動いたんだが……何だこれ?」

彼の目の前にある板に、見慣れない模様が浮き出ている。

「模様?いや、これ文字じゃないか?」

「古代文字?そんなの読めないよ」

「ちょっと待て。確か、言語解析班から報告が上がってきていたはずだ」

 山積みになっている書類の中から、件の報告書を引っ張り出す。パラパラと中身を確認すると、意味を推定できた古代語の一覧表が出てきた。

「えーっと、これによると……どうやら、何かを入力すればいいみたいだな」

「なるほど、入力か。で、何を入力すればいいんだ?」

「分からない」

彼が呆れた顔で私を見てくるが、一体どうしろというのか。

「”入力しろ”と指示していることは分かるが、その後の言葉がまだ解析されていないんだ」

「じゃあ、これでお手上げか……」

彼が悔しそうに板を睨みつけた。諦めるしかないのかもしれないが、ここで諦めるのはあまりに惜しい。たった一言意味が分かれば、先へ進めるのに。

 往生際悪く一覧表を眺めていると、あることに気がついた。

「おい、どうにかなるかもしれないぞ」

メモ紙に古代文字を書き写して、その中央に線を引いた。

「ここで分けると、前半と後半で解析は済んでいるようだ。あとはそれをくっつけると」

「意味が分かる」

二人して、手元のメモと報告書を覗き込んだ。

「前半部分は……おっとこれだな。”通り過ぎる”」

「後半部分は……これか。”言葉”」

彼と見合って首をひねった。

「”通り過ぎる言葉”って何だ?」

「うーん、さっぱり分からない。もしかしたら解釈が違っているのかもしれないぞ」

彼が頭を掻きむしりながらメモをじっと眺めている。

「”行き過ぎた言葉”っていうのはどうだ?」

「”行き過ぎた言葉”?まるで神への祈りみたいだな」

「祈り……祈りの言葉か……」

言いつつも、彼は納得していないようだ。私もどうもしっくりこない。

「”通り過ぎる”っていうことは、過去だよな?」

「過去?じゃあ、死者への祈りか?」

駄目だ、分からない。

「もういっそ、この謎の言葉をそのまま入力してみるか」

半ばやけっぱちになった彼が、古代語をそのまま入力する。すると、途端に模様が変化した。

「動いたな」

「ああ、動いた」

「結局、何だったんだ?」

「さあ?古代人ってのはよっぽど信心深いんだろうよ」

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