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1.戻って来た町

 久しぶりに戻って来たこの町は、昔とさほど変わっていないように見えた。

 僕がこの町に住んでいたのは十歳にもならないくらいの頃だ。その頃、父と母はあまり上手く行っておらず、互いに別居して僕の親権を争っていた。正直どちらも僕自身に興味があったわけではなく、僕がいれば相手から養育費が取れるから、というさもしい理由でしかない。

 小学生の僕にはそこまではっきり理解出来ていたわけではなかったが、両親ともにろくなものではないということだけはわかっていた。

 この町は、母方の親戚が住んでいた町だ。親権を争ってはいたが、両親はどちらも僕の面倒を見るのは嫌がった。故に、僕は親戚の間を転々としていた。ここもその一つでしかなかった。

 結局僕の親権を得たのは母だったが、しばらくして母は海外に行ってしまい、向こうで再婚した。再婚相手は顔も名前も知らないし、会ったこともない。父も母も別れ際には「絶対に迎えに来るよ」とおためごかしな約束をしていたが、それが守られることはなかった。まあ、成人するまで毎月まとまった金を送ってもらっていただけマシだろう。流石に母も後ろめたかったようだ。

 僕は親戚を転々としながらもバイトと奨学金で進学し、何とか食品会社に就職することが出来た。何の偶然か、赴任先になったのは小学生の頃に住んでいたこの町の支社だった。そうして僕はこの町に戻って来たのだった。


 昔住んでいたとはいえ、それほど懐かしい場所ではない。むしろここはあまりいい思い出はない、出来れば忘れたいような場所だった。

 少なくとも僕がいた時のこの町は、良くも悪くも日本の田舎町だった。生まれた時からここにいるクラスメイト達のつながりは非常に強固で、よそ者の僕が入る隙間はほとんどなかった。彼らの方も、いずれよそに行ってしまう僕のことを本気で仲間に入れる気はなかった。僕はひたすら異物だった。

 ただ一人、同級生で近所の八百屋の息子の田上くんだけは、僕をよく遊びに誘ってくれた。僕相手に限らず面倒見のいい彼だったが、僕がこの町から引っ越す直前に事故にあった。そのまま僕は転校してしまった為、田上くんには別れを告げることも出来ずここを去ることになった。それだけが心残りだった。


 第一印象としてあまり変わっていないように見えたこの町もよくよく見れば細かいところは変化しているようで、シャッターの降りている店も増えていたし新しく建った建売住宅やアパートの類もあちこちにあった。田上くんの八百屋があった場所はコンビニになっていた。店長は見たことのない顔で、田上くんの両親や家族がどこにいるのかもわからなかった。

 僕は昔にはなかったアパートの一つに入居し、そこから会社に通勤した。親しい友達などは(僕の育ち方もあって)いなかったが、そんなことは昔から気にしない方だ。ほぼ会社と自室を往復するだけの日々が続いた。

 そんなある日のことだった。

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