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危機的状況

 御風呂に浸かっている所に、誰かが入ってきた。


 一瞬、覗きの可能性を考えたがまず無いだろう。

 私が女性だと知っている人は、数少ない。


 向こうもこちらに気付いたのか声を掛けてきた。



「おっ、フルミスか?」



 それはガオリスの声だった。

 何でおっさんが風呂に……。



「ボクが入っているのに何をしている!」


「折角だから親睦を深めようと思ってな、裸の付き合いって言うだろ」


「し、知らん。いいから入ってくるな!」


「何言ってんだ、裸ぐらいでガタガタ言ってんじゃねぇよ。入るぞー」


「ぴゃー!?」



 慌てて湯船の中に戻った。

 あまりのことに変な声が出てしまった……。


 ガオリスが姿を現す、筋肉質な体が目に映った。



「おぅ、湯船に浸かる前に体を流したか?」


「……当り前だ」



 私は湯船の中で胸元と秘部を手で隠す。

 これなら湯船の揺らめきと湯気が合わさって分からないはずだ。



「そうかそうか」



 隣に来たガオリスが、私の頭に手を置いた。

 両手が塞がっていて跳ねのけられない。



「……ブクブク(ムカツク)」



 私は御湯に空気を送り込む事しか出来ずにいた。


 湯船を桶で掬うガオリス。

 そして頭から御湯を被るとこっちまで湯が飛んできた。



「もっと離れてやれ」


「へいへい」



 私をあしらう様に言いながら、ガオリスが湯船に入ってくる。

 御湯が溢れて外に流れ出した。



「あぁ、いい湯だ」


「……」



 そそっと距離を取る。



「何で離れる?」



 訝し気な目でこちらを見るガオリス。



「余計な干渉だ」


「んー」



 更にジロジロとこちらを見てくる。

 何やら胸元の辺りを見ている様な……!



「お前さん、もしかして……?」



 そして何かに気付いたような事を言う。

 くっ、バレたか……!?



「胸筋の鍛え方が甘いな」


「……!?」


「これからは筋肉の鍛錬にも励めよー、がっはっはっはっ!!」



 ガオリスは笑うと空を見上げながら鼻歌を歌い始める。


 客観的に状況を考えてみる。

 これはまさか……。


 胸が小さすぎてバレなかったのか?



「……ブクブク(ムカツク)」



 それはそれで何だかイラっとする私だった。


 こうなったら背中を向けて立ち去ろう。

 そうすれば見られる事は無いはずだ。


 だが、その思惑通りには行かない。

 更衣室の方から声が響いた。



「ガオリス、居たのか……」


「おぉ、クルルスか」


「なっ……」



 今度は二人目のオッサンが御風呂に入ってきたのだった。


 クルルスはガオリスの反対側に入ってくる。

 そのせいで私は間に挟まれる形となってしまった。



「ぐぬぬぬ……」



 理不尽な目に遭っている私は、苛立ちを隠しきれずに居た。


前回の御風呂場にやってくる流れを微調整しました。

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