クルルスとフルミス
傭兵団の居住地へと向かう途中。
「劣化魔術とは何だ?」
私は気になっていた事をガオリスに尋ねた。
魔法ならば聞いた事はあるが、劣化魔術という名前は聞いた事が無い。
「簡単に言えば、肉体を上手く使う魔法って所か」
「全く分からん」
「おいおいと教えてやるよ」
「今教えろ」
「長くなるって話だよ」
そう言ってガオリスは私の頭に手を置く。
「子供扱いするな」
その手を払いのけた。
「あららっ」
暫く歩くと目的地に辿り着いた。
「ここが俺らのねぐらだ」
着いた場所は、街の外れにある大きな木の根本だった。
空まで届きそうな大木に家がくっ付いている。
近くには大きめの住宅と幾つかの小屋が散見された。
「立派なもんだろう」
「興味ないな」
「さようで」
住宅に向かう途中。
「おぅ、新入りを連れて帰ってきたぞ」
小屋の近くで素振りをしている男が居た。
ガオリスが声を掛けると私を一瞥する。
「……」
男は無言のまま立ち尽くしていた。
「ったく、いいオッサンが人見知りとはなぁ」
「そういうのではない」
男は涼し気な顔でガオリスをいさめていた。
ガオリスと並ぶと背は低いが、それでも私よりは頭一つ分は大きい。
結局見上げる形になった。
その人の顔は火傷の跡が酷い。
頬の辺りまで焼け爛れていた。
「……」
「……」
視線が合う、だが私達は共に黙り込んだ。
「ほら挨拶をしろ」
ガオリスの言葉に背を押される。
「フルミスだ」
「クルルス」
それだけ言うと、男は鍛錬に戻った。
「不愛想な男だ」
「人の事は言えねぇだろ……」
「他には居ないのか?」
面倒そうなのはごめんだが。
「あと一人オッサンがいるが、仕事に出てて当分戻って来ないな」
「オッサンしか居ないのか」
「うるせぇよ。取り合えず部屋に案内する、付いてこい」
私は黙って後を付いていく。
背後で素振りの風切り音が響く。
「あの火傷……。まさかな」
小屋の間を抜けていくと、木製の階段が有り。
木に沿う様に登って行った先に、傭兵団の住まいがあった。
建物の中は広かった。
部屋の数を見ても二十以上ある。
傭兵団というだけあって当然の配慮かと思うが。
この財源はどこから来ているのだろうか?
「盗賊団か?」
「傭兵団って言ってんだろ」
どうやら違った様だ。
「クズではないようだな」
「お前さんはどの立場なんだよ……」
その中の一つの部屋に案内される。
「ここだ」
「どこでもいい」
「そう言うなって、これから何度も見ることになる部屋だ」
「感傷に用はない」
「へいへい」
馬鹿にされた様でイラっとした。
評価やブクマ有難う御座います。
調子良かったので本日二話目です。




